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新宿の顧問弁護士なら弁護士法人岡本(岡本政明法律事務所)

当事務所では、上場企業(東証プライム)からベンチャー企業まで広範囲、かつ、様々な業種の顧問業務をメインとしつつ、様々な事件に対応しております。

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コラム - 最新エントリー

 

一 夫契約の生命保険が離婚した先妻のものになるのかという質問
 
1 今回も前回と同様、20年ほど前、旧知の友人から受けた相談です。
彼とは大学時代、一緒に絵描きの仲間として付き合っておりました。彼は不思議なほど女性の方から相談を受けることが多いのです。私には羨ましい存在なのですが、彼はこのコラムの愛読者でもあります。彼は具体的な内容は話さず、しかし要点を外さない相談を持ち掛けるのが常です。このような対応を含めて不思議な魅力のある友人でありますが、その相談は次のようなものでした。
今回の相談相手も女性で、次のような内容でした。「主人が亡くなり、調べていたら、主人が生命保険に入っていたことが分かったそうだ。すぐ保険会社に連絡したが、保険会社から、あなたには払えないと言われたらしい。保険金受取人がずいぶん前に離婚している元妻の名義になっているからだという話しだ。でも元妻は再婚していて、主人の生命保険を貰う理由がない。こんなことが許されるのだろうか」というものであります。
友人は、保険会社も関連企業にもつ有名企業のエリートサラリーマンですが、自分でも保険会社の説明はおかしいと思うので相談の連絡を入れたというのです。
 
2  私は、昔この判例を読んでしっくりこなかったことを思い出しました。ついでだから、この判例を精査したいと思いました。
当時、会う楽しみを優先させた恩着せがましい提案をしました。つまり、彼は何時も、自分の勤める会社の顧問弁護士達より私のほうが圧倒的に優秀だと褒める反面、相談ばかりで金になる仕事を回してきたことはありません。そんなこともあって、この相談を私の楽しみに変えようと思いました。
そこで「保険が遺産でないことは君のようなエリートが知らない訳がないよね。受取人に「妻○○」という記載がそのままで、その後離婚していても、最高裁の判決は保険会社の言う通りなんだ。しかも元妻は再婚して姓も変わっているんだものね。君が納得できないという気持ちはよく分かる。自分も、昔勉強した時、一度この判決を精査したいと考えていた。俺が無能だからという訳ではない。君は、俺ができる弁護士だと何時も言ってくれているよね。だから時間を頂戴。事務所で相談しようぜ。あとは飲もうぜ。」と「調べる楽しみ」と、「飲む楽しみ」を確保しました。
ところで、今回このコラムを読む友人に、当時の私の気持ちを知ってもらえれば、20年ぶりの話題を肴に、再度美味しい酒が飲めるというものです。
 
二 最高裁判決に疑問を持つことは健全か?
 
1  早速友人が納得できる資料収集に邁進したのですが、私の感覚は当時から冴えていますね。私の違和感は最高裁上告理由書まで読んでやっと得心できました。
 
2  調べたい最高裁判決(昭和589月8日第一小法廷判決)ですが、先ず、私の自宅の書斎を埋め尽くしている何十冊もの一冊「最高裁判例解説 民事篇 昭和58年度」(法曹会出版)を読んでみました。この解説書は有名な注釈本を百倍にした程度ではありますが、私の感性に訴えてくるものがありません。そもそも上告理由書がないのです。
     でも驚きました。元妻は自らの不貞を理由に夫と離婚しているのです。しかもこの保険は団体定期保険だというではないですか。夫は医師で○○県医師会の団体保険に加入していたというのですから、私が弁護士会の団体保険に加入しているのと全く同じです。私だって弁護士会の団体保険がどうなっているのかなど関心がありません。受取人の名義変更を放置していた状態というのはよく分かります。
 
3   早速、弁護士会の図書館に行って保管されている最高裁判例を調査しました。昭和58年の判決ですから当時は最近の判例と言っても不思議ではないのですが、なんと裁判長はあの有名な団藤重光博士でありました。あの尊敬する団藤先生が事情の勘案もされず、私にとっては一方的と言えるほどの保険会社寄りの判決をお出しでした。そもそも上告理由書を読んで自分の大学時代を思い出したと言うのが正直なところです。私の学生時代、大学の閉鎖性や古い体質改善を求めて運動した学生が7名除籍され、その当時の学友を思い出しました。この調査当時、7名の除籍者のうち3人目の自殺者がお茶の水聖橋から投身自殺しております。
 
4  上告理由書の「はじめに」だけでも読んでください(原文のママ)
 「上告人が心から希うところは、万人の納得に値する判例の樹立である。我国における資本主義体制は、永年に亘る助長政策によって、遂に発展の極度にまで達し、今や、そのための必要悪とせられておった非道義性の修正をもって、緊急の課題とする時点に至った。同時に、その間逼迫を已むなくせられていた、我民族固有の道義感は、正に、甦生の時を得たといえるのである。この際に当たってなされた、原審判決の内容たるや、旧態依然たる大量契約保護主義の残滓以外の何ものも、これを認めることができないものであって、これを、現時代における公正なる社会通念として、よく黙視することは、到底あり得ないのである。本件は、正に、時代を画すべき試金石といえるであろう。くしくも、被上告人らの第一審における答弁書の付記は、このことを暗示する感が深いのである。」
  私は上記最高裁判決を形式的なものと思わざるを得ません。名義の書換えが放置された経緯をもっと検討するべきであったと思います。

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一 葬式費用、お墓はどうなるのかという質問
 
1 旧知の友人から、突然電話がかかってきて、葬式費用やお墓の相談を受けたことは数え切れません。
私の友人達は、ちょうどご両親が亡くなられる時期を迎えておりましたから、このような緊急の相談が多かったのは当然のことでしょうね。訃報を聞いてとりあえず集まった子供たちが相談するのは葬儀の費用負担であります。葬儀屋さんをお呼びして話しをしますと、ではお墓はどうなるのだろうという疑問が生じ、再度私に相談の電話が来るというワンパターンの経緯を辿ります。
 
2 最近は、一度に全てを教えてしまうようにしております。意外とみんな驚いてくれますが、これは通常お墓も相続財産だと考え、こう考えるのが近代民法だという刷り込みがあるからなのでしょうね。
  先ず、これに関係する民法をみましょう。民法第897条です。「祭祀に関する権利の承継」という条文です。条文を読めばある程度理解できます。つまり「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先祭祀を主宰すべきものが承継する」と規定され、前条の大原則第896条「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」の例外法理として慣習を持ち出すのです。でも私の友人の多くは「その慣習が分からない」と言いますので、本当に時代は変わりました。
 
3 また第897条には「葬式費用」が書いてないじゃないかと疑問を提起する友人もおります。その際には私から「誰が香典を貰うの?」と質問することにしております。香典は「主宰者」が貰うはずです。ところで漢字に注意してください。「主催者」ではありませんよね。つまり最近は相続人が主催者にならない「お別れ会」方式のものも流行しておりますので、短時間で説明するときには、「普通の葬儀だよね」と念押ししないと危険です。もちろん“葬祭費は、その儀式の実質的主宰者が負担するべきものである”という判例も出ております。
 
4 葬祭費を相続人で分担する例も増えておりますが、お墓はどうなるのでしょうかね。慣習が分からないのでお寺さんにその地方の風習を聞くようにアドバイスすることもあります。
でも「お骨を返せ」、或は「分骨させてください」という事件依頼には「慣習」とは違う解決を模索しないとならない場合もあります。
本来、お骨の所有権の帰属も前項の条文に従い主宰者のものとなりますが、相手に内容証明を送るまでして裁判になったことはありません。前項で示しました第8972項によりますと、「慣習が明らかでないときは・・家庭裁判所が定める」としております。しかし裁判までするということには疑問をもっております。やむを得ない場合を除いて、裁判を主張される弁護士が果たして有能な弁護士なのでしょうか?お骨の主人公が生きておられればお怒りになるでしょう。
私は、お骨と一体となって生活したいという依頼者の覚悟をお話しして、分骨をお願いしてはどうかと説得しております。既に納骨されておりますと分骨はお寺さんとの関係処理も出てきますので丁寧にお願いして結論を出すようにしております。これまで、こじれた例はありませんでしたから、私の依頼者は“きちんとした方”ばかりです。
 
二 日本の相続は、いまだ「家制度」が必要なのか?
 
1 「相続事件簿その5遺言と遺留分」を読んで、ある方から日本の家族に対する認識が従来と大分変遷しているのではないかという感想が寄せられました。私のコラムに対する真摯な感想が寄せられることはうれしいのですが、“日本の民法学者は古い”或は“新たな家族理念に基づく解釈乃至立法活動が必要”という批判と分かります。
確かにエマニュエル・トッドのいうように、日本はまだ直系相続の国なのでしょうか?今の我々は民主主義が十分に根づいている、否、家族の崩壊という理由により劣等国家のような状況は最早ない、と反論する読者が出てきても不思議ではない時代になりました。
 
2 民法第897条のコンメンタール解説書を見ると確かにそうです。
「本条は、系譜、祭具及び墳墓等の祭祀財産について特別の承継ルールを定める。戦前の旧規定では祭祀財産は『家督相続人の特権に属す』とされ、家督相続人が独占的に承継した。しかし、戦後家督相続が廃止され遺産相続に一本化された後も、なお一般の相続原則の例外とした趣旨は、従来の慣行や国民感情に配慮したことと、祭祀財産は分割相続になじまないことにある。しかし、祖先崇拝と結び付いて家制度を温存するとの批判も強い」とあります。
 
3 「相続事件簿その5」のコラムでは個人成育史まで書いたことにより、皆様の関心はいただきましたが、本当に難しい問題なのです。
家制度、特に直系相続などについて興味を持たれる方には、「日本の起源」という3年ほど前に出版された歴史本を紹介しましょう。「日本の起源」は、3年前かなり売れた本ですが、新進気鋭の歴史学者である東島誠氏と與那覇潤氏の対談本です。
この対談の趣旨は、日本の歴史が卑弥呼の時代から、つまり天皇制が始まる前から分析され、「家制度」がとられざるを得ない必然性を分析し、その必然性から歴史は反復してきたという内容を解説した快著で、家制度に対する幻想も吹き飛びます。
では「家制度」は、もはや現代文化からほど遠い「慣習」とも言えない文化状況になったのでしょうか。私自身の経験からしますと、次世代に期待したいという「ずるい結論」になるのですが・・。
皆様はどうお考えでしょうか?

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一 特別受益が問題になった事例
 
1  今回は特別受益が問題になり、その解決に大変苦労した事例を紹介し
ましょう。
前回と同様、バブル景気に湧いた当時の事例です。
問題の発生はバブル景気を遡り、失われた10年と称された不景気のど真ん中、昭和50年頃のことです。当時、相談者のお父さん(以下、父といいます)が、借地上に建物を建てて相談者のご長男家族と同居されていました。昭和50年頃は不動産価格もどん底で、当時、お困りになった地主さんから底地を買い取ってくれないかとお願いされたそうです。ご高齢の父には資力がなく、同居していた長男である相談者がその底地を買い取ることで話がつきました。相談者ご夫婦は、当時より、父母の介護を続けてこられましたが、ご両親が亡くなられたバブル景気の頃には、その土地の値段は驚くほど高騰していたのです。
 
2   相談者のご兄弟は、父の遺産分割を主張されました。
相談者は、父の遺産については、預金と僅かな株式、本件で問題となる価値のない建物しかないと反論していたところ、ご兄弟に弁護士がついて「被相続人には借地権という莫大な遺産がある。それを処分なりして法律に従って分配して下さい」と言ってきたというのです。
これは大変なことです。建物に価値などありませんが、借地権は土地そのものであり、しかも都心にある一等地なのです。
路線価により借地権割合7割とすると、億単位の話しになってしまい、相談者に支払える金額ではありません。しかも相談者は父のお願いによって底地を買われたのであり、その後何年もの間、父母の介護に努めてこられました。
 
二 多岐に渡る論点
 
1 論点整理
借地権は存続しているのか?消滅しているのか?借地権が存続しているなら、父の借地料等は何故支払われなかったのか?
借地権が消滅しているのなら、父の建物の利用権はどのように評価すればいいのか?
借地権が消滅している場合、底地を購入した相談者には借地権価格を除いた底地価格で購入したのであるから、借地権価格が贈与となり、特別受益にならないのか?
特別受益とすると、特別受益とされる借地権の評価は何時の時点で考えるのか?
特別受益とすると、黙示による持戻し免除の意思表示が検討される必要があるのではないか?
 
2  今回のような事例、或いはこの変形は、実は多いのです。
通常、相談者は、相続税に関する税法上の配慮もあり、借地権は消滅したと主張されることが多いようです。法理論としては民法179条による混同の法理ですね。「同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は消滅する」と言う法理です。
上記主張をする場合には、更に底地相当の価格分に関する贈与を受けたとして、特別受益の認定がなされるでしょう。これは底地の評価額ですから莫大な金額を相続分として持戻しせねばなりません。
上記の場合には、次の理論による手当てが必要です。即ち、父が「黙示で特別受益としない」、つまり相続分として持戻ししなくてよいという「持戻し免除の意思表示」があったと主張しないとなりません。ここまで裁判所に認定されないと勝負の意味がないのです。微妙です。
では、借地権が消滅しないとする主張も考えてみましょう。
消滅しないなら、父は建物を所有しているのですから借地料等を支払わねばならないはずです。父は上記事実に頓着せず、当然に賃料等の費用に関する支出はありません。上記の状況で借地権が存在すると言っていいのでしょうか?当事者の誰も借地権が存続すると考えていなかったというのが本件の素直な解釈で、黙示の合意とも言えます。
以上のように考察し、これを使用貸借に変じたとされる学者或いは判例も当然に出てきます。親族間の建物所有に関し、土地の使用貸借は、例え借主が死亡しても当然には契約終了にならないとし、民法599(使用貸借の終了)の適用を否定する考え方です。事案に素直ですね。
本件においては、父の相続人は父の使用貸借という法的立場を相続し、相続人間で相続法理に基づいて決着するという流れになります。
しかしながら、使用貸借として評価される金額は、借地権と比較し大幅に低額です。
 
三 本件の解決
   何が解決の急所になるのか、「生もの」の事案は不思議ですが、本件は相談者ご夫婦が、長年父母の介護を続けてこられたことが解決のポイントになりました。ご兄弟も相談者ご夫婦の長年の労苦を知っておられましたので、最後まで無理を言われる対応をされませんでした。
   ご兄弟の弁護士は、最終的に土地の使用貸借相当分の評価額でよいという姿勢を示されたのです。古い非堅固建物であることからして、評価額は1割程度と認定するのが我々の常識です。
税法上の工夫も必要であり(税理士の先生との共同作業です)、総合的な評価・検討が不可欠です。当時は相談者の寄与分まで検討しました。
結論として、上記評価額及び預金等を各兄弟に分割してお支払いするという内容で和解しました。でもバブル期の高騰した相続時を基準にした評価額ですから、支払いはそれなりの金額になりました。
その後のバブル崩壊まで考慮されないのが残念ですね。

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一 相続法理と寄与分
1 前回のコラムでは、相続法理での説明が難しい遺留分の制度について紹介しましたが、今回は寄与分の制度について紹介しましょう。
寄与分の制度は、昭和55年の民法改正で設けられた制度であります。寄与分の制度を要約しますと、共同相続人間の実質的な平等を図ろうというものであります。
新たに設けられた民法第904条の2によりますと、相続人の中で、被相続人(父の場合が多い)の事業に関して労務を提供したり、財産上の給付(お金を出すのが一般的)をしたり、或は被相続人の療養看護をしたり、或はその他の方法で被相続人の財産を維持、増加させたりして特別の寄与をした者には寄与分を相続分に付加するというという制度であります。
家庭裁判所では、民法の改正前から、上記のような貢献を寄与分として認めるようになっておりました。
 
2 実例を見てみましょう。
私が弁護士になった頃、バブル景気を経験しました。土地の値上がりも凄まじく、相続される資産が爆発した時代でもありました。
寄与分に関する典型的な相談例の二つをみてみましょう。
その一つは、跡取り息子が、給与も満足に貰わないで父の事業を必死で支えてきたものの、父が死んだ今、その遺産が他の兄弟達に持っていかれてしまう。これでは事業の継続はできないというものです。もう一つは、夫の父や母を20年以上も介護してきたが、義理の父母が亡くなってみると、面倒を見なかった夫の兄弟3人が出てきて、自分たちにも相続権があるといって平等な分割を主張するため、自分の夫には4分の一しか残らない。私の死に物狂いの努力は何だったのでしょうか、というものです。
私は上記相談者に大変共感して、必死で寄与分の主張をしました。しかし、お二方のご苦労の割には、裁判所の認定は低く、自分自身失望したことをお伝えしなければなりません。しかし寄与分の算出方法等経験を積みますと、やむを得ない側面がよく認識できます。
では、次項で寄与分の制度を見ていきましょう。
 
二 寄与分の制度の内容
1 寄与行為の種類
通常、民法の条文「その他の方法」等も考慮し5種類を示します。
家事従事型 
この典型例は私が相談を受けた第一の家業継承の事例です。地方になると「事業」は農業が多いでしょう。田舎で農業に従事する長男を想像してくだされば見当がつきます。
金銭等出資型
お金を出す場合ですが、不動産の購入資金の援助や医療費や施設入所費の負担が典型例という裁判官の著作もあります。
療養看護型
私の事例二つ目で、病気療養中の療養介護です。被相続人の疾病が存在することが前提になっておりますのでご注意ください。
扶養型
扶養によって生活費等の支出を免れ、被相続人の財産が維持されたという場合です。
財産管理型
財産管理によって財産の維持形成に寄与したという場合です。
 
2 寄与と見做される要件とその寄与分とは
家事従事型 
裁判所が認定する要件は厳しい。特別の貢献、無償性、継続性、専従性等を検討します。さらにその算定方法としては、業務に従事した者が通常得られたであろう給付額から生活費を控除し、年月を加算します。賃金センサスを参考にする場合もあります。
想像以上に低くなることは明白ですが、農業従事の場合には、相続財産の形成に貢献したと判断できる比率を計算根拠とする場合もあります。
金銭等出資型
お金を出す場合なのですが、特別な貢献でなければなりません。また金銭ですから具体的な金額は明白ですが、種々の条件を検討し、裁量割合などとして金額を算出します。
療養看護型
この類型でも計算ばかりで驚かれるでしょう。認定要件としては、療養看護の必要性、特別の貢献、無償性、継続性、専従性などが検討されます。介護保険の介護報酬基準を使うなど合理的な計算根拠を求めて決められます。交通事故の損害賠償請求事件を連想してしまいます。
扶養型や?財産管理型も同じように検討できるのですが、本コラムでは長くなるので省きましょう。実際に相談にお出で下さい。
 
三 先に紹介した事例に関する補足
1 私が経験した家事従事型の事例においては、平成20年制定の中小企業経営承継円滑化法の利用をアドバイスしなければなりません。しかし、この制度を利用するには、事前に除外合意或いは固定合意をし、更に経済産業大臣の確認、家庭裁判所の許可等の手続が必要です。
 
2 同じく私の経験した夫の父を療養介護した妻の場合、相続人の夫が自己の寄与分として主張できるという判例があります。

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社会保険労務士法人酒井事務所 http://www.profit21.co.jp/sakai
と共同で
以下のセミナーを開催します。

当セミナーは、通常のセミナーのように壇上から講師が一方的に話すことは想定して
おりません。通常の打ち合わせ室でざっくばらんな質疑応答を随時行うことで交流を深めながら行っていきたいと考えております。

1.セミナー名:残業代請求に関する使用者側の対策と解決法
2.セミナー内容:
     第1部:労働基準監督署の調査実態と具体的防止策(社会保険労務士)
     第2部:残業代請求事件の具体的な解決方法(弁護士)
3.日時:?3月18日㈮ ?4月8日㈮ 
     各回共に18時〜19時30分
     第1部:18時〜18時40分
     第2部:18時50分〜19時30分
4.場所:岡本政明法律事務所(新宿御苑前徒歩1分)
5.定員:各回5名
6.費用:無料
7.参加者:弁護士:岡本直也
      特定社会保険労務士:酒井健介

ご興味がある方は「お問い合わせフォーム」からご連絡ください。

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一 相続法理と遺留分
 
1 日本国民の政治思想を分析される学者の方は、相続法理と遺留分の制度がどのような実態にあり、それがどのように定着しているのか調査をされるのも面白いのではないでしょうか。今回のテーマは、日本の将来を心配される方には変わった視点からの題材を提供します。
遺留分制度の多少面倒な法理論が、我が国の民主主義の在り方にまで影響するということは驚きだからです。でも政治的な宣伝ではございませんので、安心してお読みください。
 
2 遺言により遺産を処分することは、資産所有者が有する最後の自由であります。つまり遺言書を書いて好きなように遺産を処分することは所有者の全能の権利であるはずです。既に本コラムでもそのように書きましたが、しかしこの自由は制約を受けてきました。中学生の社会の講義のようですが、遺留分規定もまさしくこの自由権の制約なのであります。
  そもそも遺留分の制度は、戸主処分権の制限として明治民法時代から定められており、その制度を現民法も引き継ぎました。つまり遺留分制度は古い家族共同体的な制度を連想させるのです。血の繋がる者には、かなりの割合において遺留分が認められます。しかし家という封建的な側面でなく近代的な法律構成が必要になります。私が司法試験を受験した頃の法律学全集には「遺留分法は、個人主義的処分自由に対する家族主義的家産擁護の防塞である」と明記されていました。
封建的な匂いがする本制度に対しては、論述をすすめるのも面倒で、学者の方からは敬遠されていたのだと思います。
 
3 早速、家族法が民主主義を左右するという学者の先生を紹介しましょう。
ソビエト連邦の崩壊について人口統計学の手法を用いて予想を的中させた「家族人類学者」エマニュエルトッドという先生です。日本でも講演をされましたが衝撃的でした。“相続法理が民主主義の成否を握る”という学説を私なりに要約してしまいます。
彼によりますと、差別意識は、子供の頃植え込まれた差別意識により発生し、その意識は将来も免れられない先験的なものとなって存続し、その後も表出されるというものです。そして、そのような国では、他者への差別意識が民主主義に対する阻害となって表出するというのです。そして、同氏はなんと日本を平等相続の国ではなく、「直系相続の国」だと言っております。
「直系相続」は平等相続ではありません。
 
二 日本の相続法理
 
1 日本は直系相続の国なのでしょうか?
そもそも、日本は、国の行く末というような重要事項については、皆様と一緒に決定に関与できる民主主義国家です。しかも民法では兄弟姉妹の相続分を平等としております。どこに「直系相続の国」などと言われる要素があるのでしょうか。これでは二流国家のようです。
しかし、事実はそう簡単ではないのです。
 
2 私の故郷は江戸時代より続く城下町にあります。家に対する認識は日本伝来のものがありました。両親は、家を継ぐ者が家業等一切を承継すると常に言っておりました。これは遺言と同様の価値があるものです。エマニュエルトッドに言わせると、上記認識は直系相続、つまり先験的な差別意識の萌芽なのですが・・。
思い出話にもう少しお付き合いください。
大学時代の私は「家族帝国主義」と言って家族主義を批判していた割には、父母の言うことには報いたいという気持ちが強く、辛い介護等を目の当たりにして遺留分制度に納得のいく側面も見出しました。遺留分制度が家産の維持でなく、遺族の保護、即ち遺言者の保護に通じるものであるという理屈です。法制度趣旨をこのように捉えるのは難しいかな・・?私は、学生時代、法律に関する専門授業に関し憲法以外一度も出たことはありません。受験生になって驚いたことは過激な労働法教科書の記載と、その逆の遺留分制度の記述です。
エマニュエルトッドに言わせると、「先験的な差別意識の萌芽」との間で揺れていた当時の思い出話です。
 
3 個人成育史、つまり相続法理が民主主義をも左右するという学説を紹介しましたが、最近はこの民主主義についても定義をきちんとしろとか、戦後民主主義と区分けして論じろとか言われる過渡期の時代のように思われます。しかし、民主主義にバイアスをつける必要はないはずです。人は皆「平等に」という基本概念、そして民法ならば、その相続法理に従って弁護士の業務を行えばいいはずです。それ以上の価値など、どのように民主主義概念をいじろうとも上記理念に敵うはずがありません。
 
三 今回の「纏め」と中小企業経営承継円滑化法
 
  我が日本民法の自由と平等を理念とした相続法理において、遺留分の規定は異色です。支配的学説は「近親者の扶養乃至生活保障」にあるとして近代法の理念に矛盾のない解釈をしております。しかし遺言の自由と言いながら、子供には2分の1もの遺留分があるのは生活保障としては多額でしょう。しかも生活の豊かな者にもこの権利は保障されるのです。そうであるなら、遺留分としては認めないイギリスのように、その都度、生活保障分を認定する制度のほうが余程分かりやすいのですが・・。
  平成20年制定された中小企業経営承継円滑化法は、まさしく遺言と遺留分を論点とし、遺留分を制限するものとして立法されました。

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 当事務所は使用者側の労働事件を多く解決しているため、豊富な知識と経験に基づき
創業25年以上にわたって社労士業務を行っている社会保険労務士法人酒井事務所
http://www.profit21.co.jp/sakai/gyoumu.html
と提携して業務を行っております。

そこで、人事労務に関する不安を抱えているお客様(使用者側)向けに当事務所の弁護士と
社会保険労務士法人酒井事務所の社会保険労務士が2人1組で相談会を行う機会を
設けたいと考えております。具体的には以下の通りです。

1.相談内容:人事労務・法務に関わるあらゆる問題
2.相談日時:土日祝日を除く午前10時〜午後20時のうち1時間弱
       (具体的な日時については適宜調整させて頂きます。)
3.相談場所:岡本政明法律事務所(丸ノ内線・新宿御苑前駅徒歩1分)
(ご事情によってはお客様の事務所等で行うことも可能な場合があります。)
4.料金:無料

ご興味のある方がいらっしゃいましたら、お問合せフォームより気軽にお問い合わせください。どうぞ宜しくお願い致します。

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一 テレビ及び週刊誌の過熱報道
 
 1 「遺産は全て家政婦に渡す」という遺言書
(1) 朝の出勤前はテレビをつけっぱなしにしております。たまたま気づいたのですが“家政婦に遺産全額を遺贈したところ、実の娘たちと訴訟になり娘側が負けた”と報道しておりました。私の経験則では“遺言書が有効と見做されるのは通常のこと。裁判所はなかなか遺言書を無効になどできない。通常ありきたりの判決”と思い聞き流しておりました。ところが、知り合いの弁護士がコメントに出演しましたので、つい全部見てしまいました。
このコメントをしていた弁護士の舌足らずな解説に“こんなコメントだったら不要。専門家の名前が泣く。しかも、せっかく出るのなら遺留分についても説明するべきだ”などと苦情を言いたくなり、つい全部見てしまったことが不快でした。
誰しもが、この報道に疑問をもたれる内容の第一は、この娘たちは遺留分の主張をしなかったのかどうか?でしょう。この娘たちは遺留分として遺産の2分の1を主張できるのですから、それで十分ともいえるからです。
 
(2) 上記報道を聞いた後、2月4日号の週刊文春で「家政婦vs実の娘 遺産相続訴訟 高齢の母が残した遺言は有効」という記事を読み、また報道が過熱していることも知りました。
事案は単純です。
97歳で亡くなられた女性資産家が、50年以上親身に仕えてくれた家政婦に、遺言書で全財産を遺贈していたようです。親身に世話をしてくれた家政婦に比較して、娘たちは、「海外に移住するという名目で3000万円を援助させ」、無心を繰り返していた旨記載されています。
このような事件は、裁判になる場合の典型的な相続事件の一例でしかなく、どうして過熱報道になるのか、私には不思議です。
先ず、娘側の訴えは、遺言無効による遺産の返還及び家政婦が着服した約6000万円を支払えとするもので、家政婦側は、死去当日、娘が預金口座から3000万円を引出している現金等遺産全ての返還を要求しています。
判決文は見ておりませんが、上記記事の内容からすると、娘側は遺言書を無効と判断したのか遺留分の請求をしなかったようです。遺留分についてはどの報道も教えてくれません。
遺留分の請求権は、正確には減殺請求権と言い、その時効は1年という短期消滅時効にかかります。ここでは弁護士が受任した時期が問題になります。つまり問題になる1年以内に弁護士が受任しており、何らの事情もなく行使しなかったとするなら、この弁護士業務は手落ちであると批判されるでしょう。
仮に、遺言書が無効と判断されても、予備的に遺留分の請求をしておくのが常識です。内容証明郵便で証拠を残しておきましょう。
 
  今回の報道に対する疑問
 今回の報道による自筆証書遺言は、遺言能力がある限り老女の最終的な意思として当然に有効です。遺言は、所有する者の全能の権利と言っていいでしょう。今回と同じく、全ての財産を血の繋がらない者に対してした包括遺贈も「公序良俗に反しない」という古い判例(大審院当時)もあるくらいです。
従って、本件遺言書に関する争いは、この女性に遺言能力があるか否かが争点になりますが、報道された内容では、遺言書は8年も前に作成されたもののようです。
 
3 でもこの事案は、私が前回のコラム(相続事件簿3)で紹介した事件程劇的ではありません。
前回のコラムの老女は天涯孤独と称し、自らの相続人の存在すら信じておりませんでした。遺言書の無効を訴える相続人は、その姉の養子なのです。そもそも姉には遺留分もありません。遺留分の制度については次回ふれますが、遺留分がないということは「家という家族共同体に属しない」ことを意味するといえます。相続法理における調整は予定されていないのです。しかも、お世話した弁護士は、老女の自筆証書遺言に多少不安をもっていたのでしょうか、自ら公証人に関与させ秘密証書遺言にしております。
この相続紛争のほうがよほどミステリアスで展開も複雑です。
この案件の面白さにはかなわないはずなのに、やはり「家政婦は見た」的な論調に負けてしまうのでしょうね。
 
二 私の思い―次回のテーマは「遺言と遺留分」
     過熱報道に接し、民法の最も未解決と言われる遺留分について思いが及びます。「家族主義と民主主義」にも関係する私の従来からのテーマを書いてみましょう。
遺留分の制度は上記考察をするには、最も適した分野です。遺留分の制度に関し、ある 解説書では、次のように記載しております(基本法コンメンタール相続第五版213)。「(遺留分制度については)かなりの部分が今なお発展途上にある。遺留分制度論自体が今なおわが国では創成期にあるあるといってよい。」
次回は「遺言と遺留分」をテーマにし、相続法理に関係したコラムを書くことにします。

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一 京都地裁平成25411日判決の紹介
 
上記判決掲載の判例時報2192号による事件の流れ
(1) 遺言書を残された方は会社を経営する女性の方でした。
彼女は京都祇園で舞妓・芸妓さんをされていたそうですが、東京で呉服商を営んでいた男性と結婚されました。その男性が祇園で呉服商を開かれ、会社組織にされ、大阪や名古屋にも支店を出されております。ご主人の亡くなられた後も経営は順調だったようです。
判決文を追っていきますと、ご主人が亡くなられた約27年後に最初の自筆証書遺言を作成されておられます。その内容は“私の遺産はお任せしている弁護士○○に遺贈します”という平仮名まじりの内容で、その女性にはお子様がおられませんでした。ご両親やお子様がおられませんので(兄弟姉妹に遺留分はありません)、その女性の遺産は全て弁護士○○に渡ることになります。
 
(2) 遺言をされた2年後、その自筆証書遺言を秘密証書遺言にされました。もちろん遺言執行人として二人目の弁護士も登場しますが、 弁護士○○は将来の紛争を恐れて、念を入れられて秘密証書遺言にされたのでしょうね。
ところで秘密証書遺言とは、民法970条によるもので、そんなに難しく考えることはありません。当事務所でも、遺言者の入院先は当然、自宅にも公証人の先生をお連れして作成しております。
本件もそのような感じで作成されております。前項の自筆証書遺言を公証人や証人の前で、自筆証書封紙に署名押印する手続きでされたようです。
 
(3) この事例紹介では、相続財産についても詳細に触れております。
 その女性が、結婚直後に自宅不動産を自分名義で取得されているものを別にしても、預貯金だけでも3億円を越えております。本件で特に問題とされた会社の株式については、純資産方式で2億円を越える資産であったとあります。
 ところで預貯金に関し、その弁護士○○が17000万ほどの払い戻しに関与されていたようです。これも別途裁判が行われている旨の記載があります。姉の養子という方が登場し、どんどん小説のような感じで広がっていくのですね。
 
本事例の争いの骨子「認知症と遺言書作成能力」
(1) 本件遺言書に関する争いは、この女性に遺言書を書く能力、即ち遺言能力があるかどうかが最大の争点になります。この女性の姉の養子になられた方が、この女性は「認知症であって遺言能力はない」と主張され、原告として秘密証書及び自筆証書遺言の無効訴訟を提起されたのです。無効になれば原告は、女性の兄弟姉妹の養子ですから、自ら遺産相続人として登場できるのです。
もっとも「この女性の姉の養子」という身分関係自体も深刻な争いの対象になっております。上記身分関係の判旨を読んでおりますと、女性の複雑な生い立ちが直ちに分かることになります。この女性は自らを「天涯孤独の身で相続人はいない」と自称する女性ですから、当時の日本の社会状況・世相をよく表しているのです。
 
(2) ところで、この女性が自筆証書遺言を作成された当時、彼女は87歳で、その翌年にはアルツハイマー病と診断され、痴呆の状況は「?」段階とされているのです。
認知症に関する医学的所見や日常生活の状況を読んでいく限り、この女性の判断能力には疑問が生じざるを得ません。認知症で悩まれる相続人の方がいらっしゃれば、是非とも一読してください。
特に本件は株式の遺贈に論点があてられております。確かに会社経営に関して100%の株式が弁護士○○のもとに渡ってしまうのです。高度な判断能力が要求されるでしょう。姉の養子となられた女性は、祇園店の店長をされ、会社運営に尽力されていた方でした。
 
二 遺言能力に関する裁判所の判断
 裁判所の判断を抜き書きするだけで十分なほどです。
まず「遺言能力の相対性」の項目から見ましょう。判例は、近代法の原則から解きほぐしています。「私的自治といえども正常な意思活動に基づくことが前提」としております。次に纏めの部分を見ましょう。
20歳以上の者であれば誰でも有効に契約が締結できるわけではないし、15歳以上の者であれば誰でも有効に遺言ができるわけではない。・・遺言を行うのに要求される精神能力は特に「遺言能力」呼ばれる。意思表示がどの程度の精神能力がある者によってされなければならないかは、当然のことながら、画一的に決めることはできず、意思表示の種別や内容によって異ならざるをえない(意思表示の相対性)」
「しかしながら、本件遺言は文面こそ単純であるが、数億円の財産を無償で他人に移転させるというものであり、本件遺言がもたらす結果が重大であることからすれば、本件遺言のような遺言を有効に行ううためには、ある程度高度(重大な結果に見合う程度)の精神能力を要するものと解される。」
 
以上により、秘密証書遺言を無効とし、次にその2年前に作成された自筆証書遺言も同様に無効としました。
 
三 感想
お医者さんやその家族から「患者さんより、遺産全部をあなたに遺贈する遺言書を作ると言われているが」という相談は、枚挙にいとまがありません。羨ましい職業ですね(弁護士にはないです)。でも「面倒なことに巻き込まれることもありますよ」とアドバイスしております。

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一 新年にあたってのご挨拶と思い出
 
  本年も宜しくお願い致します。
 
1   新年を迎えまして、「新年の始めには遺言書を書こう」と宣伝していた10数年前のことを思い出しました。
      当時、私は、東京にある三つの弁護士会が作っていた法律相談センターを構成員とする東京法律相談連絡協議会の議長をしておりました。各々の弁護士会が、別個に組織していた法律相談センターを纏める組織としての協議会ですから(当時新しい弁護士会館ができ、三弁護士会を束ねる組織がやっと機能し始めた頃です)、この協議会の影響力は大変なものがありました。そこで種々議論をした結果、新年の始めには、「遺言書を作成すると言う習慣」を作って頂きたいという宣伝活動をすることになったのです。現在、各弁護士会には遺言センターなども組織されておりますが、当時は遺言書の作成について、組織として議論する環境はなかったのです。
 
 2   弁護士会のことなど、どうでもいいのですが、「新年の始めに、遺言書を書きましょう」と提案したことには特別な意味があると思います。これは“死後の相続争いを避けるため”という実用的な面だけではなく、人生の締めくくりや希望の意味を込めて、年の始めに自分の思いを遺言書で残すことも大切な習慣になるはずです。
      ところで遺言書の作り方はネットで氾濫しております。私のコラムではそんなつまらないことは書きたくありません。毎年作成するということに疑問をお持ちの方に説明しておきますが、民法の定めに従って作成していただく限り、最後に作成された日付けの遺言書が有効になります。従って、前の遺言書が残っていても何の問題もありません。このような私の思いのせいでしょうか、当事務所の貸金庫には遺言書が大量に保管されていたこともあります。
 
二  遺言書を巡る事件
1    遺言書に関係する事件も本当にたくさん扱ってきました。遺言書作成当時の遺言能力に疑問を感じ、医療鑑定をした経験もありますし、自ら長谷川方式で認知症テストまでしたこともあります。遺言書の筆跡鑑定程度の事件なら、たくさん扱ってきました。
今回は、一つ目として、遺言書の作成で受任した弁護士が失敗した事例を紹介しましょう。この事案なら私の依頼者と関係がありません。そして、もう一つは、一昨年「判例時報」という弁護士にとっては有名な雑誌に紹介されていた事案を紹介しましょう。この事案のような、まるで時代小説のような事件も経験しましたが、公開されている事例を紹介するのですから、遠慮なくその詳細をご紹介できます。
 
2   最初の事件ですが、弁護士が遺言書の作成で失敗したにもかかわらず、その後始末にも失敗された事案です。つまりその遺言書で自らを遺言執行人に指定されておられました。私はその弁護士(巨大事務所の有名弁護士さんです。一度事務所をお尋ねしましたが、驚くほど広かった)の遺言執行人解任の申立(民法10191項)のみ受任しました。その際、関係する相続事件等には一切関与しておりません。                                                          
        この事案は、遺言書の作成について注意するべき論点の一つです。
 
       本論ですが、有名な弁護士さんは、超資産家の顧問のような立場におられたのでしょうか?奥様の話を聞いて自筆証書の遺言書を自ら下書きされたようです。二点の曖昧な記述部分についての説明で、弁護士さんは他の相続人に対し、以上のような説明をされたそうです。
          不明点の一つは、超高級賃貸マンションの奥様の持ち分5分の3(5分の2は、元々長男所有)の遺贈に関する規定が疑問でした。この弁護士さんは「この持分五分の参のうちの五分の壱」を長男に相続させると記載されたのです。通常の常識からは「うちの五分の壱」ですから、全体で25分の3になります。しかし、この弁護士さんは奥様から直接、長男の取り分を5分の1にしてくださいと話されていたと主張されました。つまり25分の5です。長男には絶対的な持ち分ということ以外に、何十億の物件なのですから、金額としても大変な違いなのです。
          皆様、面白いでしょう。単純に5分の1になるように計算して表記すればよかったはずです。或は奥様の言う通りに書いてしまってもよかったのです。もちろん登記できない表現では、長男が遺言書に基づいて単独で登記できませんから、弁護士として失格ですが・・。
          結論として、有名な弁護士さんの言うとおりの登記申請は法務局が受理せず、遺言書に基づく登記はできませんでした。やはり失格です。
 
4   第二は、重要文化財クラス()の骨董品等の所有権の来歴を調査されないまま、奥様の申されるとおりに長男への遺贈として下書きされたようです。これは先に亡くなったご主人の遺産分割協議書等、多少調査されれば事実が違うこともすぐに分かったはずです。
        弁護士さんは、その後も遺言執行人として「奥様の話しを直接聞いた」として長男の弁護をされ続けたため、私は遺言執行人解任申立事件のみ受任しました。家庭裁判所裁判官は「みっともない」と感想をもらされ、私の知らないところで有名弁護士さんに「辞任する」ことで話をつけられ、私は依頼者の説得を頼まれ、事件は終了しました。
       上記事件の依頼者は、優秀な方で資産家ですから、その後の相続については「普通に終わりました」という報告しか受けておりません。つまり弁護士さんの介入がなければ何の問題もない事件だったのです。
予定ページになってしまいました。第二の事件紹介は次回のコラムに譲らざるを得ません。
次回は、「時代小説もどき」の紹介ですね。

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