新宿の顧問弁護士なら弁護士法人岡本(岡本政明法律事務所)
当事務所では、上場企業(東証プライム)からベンチャー企業まで広範囲、かつ、様々な業種の顧問業務をメインとしつつ、様々な事件に対応しております。
コラム - 最新エントリー
一. これまでもいくつかのコラムの中でお話ししている通り、当事務所は、退職者の不法行為や不正競争行為に関して訴訟や刑事告訴などを行い、東京地方裁判所や知的財産高等裁判所で勝訴判決を得るなど多数の成果を挙げています。
二. 当事務所にご相談いただいている案件数も非常に増えておりますが、元役員(取締役)に関するご相談も多くなっています。
そこで、近時、元役員(取締役)との関係で行われた裁判例をご紹介させて頂きます。
裁判所がどのような事案でどのような判断を下しているのかを知り、有利になるように裁判例を使いこなすことこそが良い結論を導き出す要因の一つだと思います。
損害賠償請求 平成22年7月7日東京地裁判決 |
5486万8288円 |
取締役の地位にありながら、重大な影響を与える移籍について、他の取締役に対して隠密理に計画を進行させ、その最終段階で不意打ちのような形でこれを明かしたものであって、会社に対して著しく誠実さを欠く背信的なものであるといわざるを得ないこと等を理由として不法行為を認めた。 |
損害賠償請求 平成22年3月4日東京地裁判決 |
2954万7720円 |
在籍中であったにもかかわらず、その立場を利用して派遣エンジニアを不安にさせ、その不安に乗じて勧誘を行った行為態様が悪質であること、会社に引き抜き防止の措置をとる機会を与えないよう秘密裏に一斉の引き抜き行為を行ったこと、引き抜き人数も20人と少なくないことに関し、社会的相当性を欠く違法な行為であると判断した上で、元代表取締役にも連帯して賠償する責任を負わせた。 |
差止請求及び損害賠償請求等 平成28年4月18日東京地裁判決 |
401万9542円など |
元代表取締役が、株主総会の承認を受けることなく、自分に対してA店の事業譲渡を行ったことが利益相反行為に該当すること、原告の取締役でありながら個人としてA店の営業(競業取引)を行った行為が原告に対する競業避止義務違反に該当すること等を理由として損害賠償を認めた。 |
損害賠償請求 平成29年9月20日東京地裁判決 |
295万8300円 |
ブログやサイトにおいて、自らの精神障害の原因について、周囲の無理解や会社在職中の上司の罵倒、パワハラであったこと、会社から勧奨退職の名目で自らが解雇され、他にもそのような従業員がいたこと、会社において損益の改善のために人員削減がされ、離職率が高いことなどを記事として掲載したこと等に関し、損害賠償を認めた。 |
損害賠償請求 平成26年7月17日大阪地裁判決 |
原告Aに対して200万円 原告Bに対して110万円 |
会社の教材利用行為一切が著作権侵害であることを、取引先、監査法人、証券取引所等に吹聴して回ることにより、原告A及び原告Bの教育事業に進出して自らと競合することを妨害しようとしたものと解さざるを得ず、その態様は、会社らに対する敵意、害意を伴う執拗かつ悪質なものであると判断して不正競争防止法違反を認めた。 |
損害賠償請求 平成27年9月17日東京地裁判決 |
100万円 |
著作権侵害が無いにもかかわらず、「添付警告書を発送しました。同警告書の記載のとおり、著作権侵害の可能性があります。」などと記載した通知を行ったことに関し、不正競争防止法違反行為であると認めた。 |
損害賠償 平成23年4月28日大阪地裁判決 |
13万円 |
元取締役が、会社が「粉飾決算」をしていると発言した事実が不正競争防止法違反として認められた。 |
お電話でのお問い合わせ:03-3341-1591
以 上
立退料の相場はいくらなのか
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- 借地借家
一. 当事務所が数多くの立退案件を取り扱っていることは、これまで様々なコラムでお話しした通りです。
二. そして、立退料に相場が無いということもお伝えしている通りです。
このことは、当事務所において、不動産業者などの賃貸人から依頼された際には立退き料0円で解決していることもありますし、賃借人から依頼された際には立退き料として月額賃料の200ヶ月分で解決したこともあること等からご理解頂けると思います。
三. 不動産業者などの賃貸人の立場に立って解決する場合であっても、賃借人の立場に立って解決する場合であっても、具体的に近時の裁判例がどのように解決しているのかを知ることが最も重要です。
裁判所がどのような事案でどのような結論を取っているのかを知り、依頼者にとって有利になるように裁判例を使いこなすことこそが、良い結論を導き出す要因の一つだと言えるからです。
そこで、本年も、近時の裁判例をご紹介することに致します。
立退き料 平成28年5月12日東京地裁判決 |
1億3313万円 |
本件ビルは老朽化しており、耐震強度も低いから、補強工事或いは建替えの対象と考えられ、耐震工事に2億円程度の費用と7か月程度の工期を要する。 しかしながら、本件ビルの建替えを等価交換方式で行い、敷地はディベロッパーに売却することを予定していることを考えると、上記の事由のみで正当事由があるとはいえない。 内装費2010万1000円、家賃増額分の補填分4276万8000円、営業補償1557万2496円、借家権価格5290万円とした上で、そのうち約9割を賃貸人が負担して立退き料を支払う必要があると判断した。 |
立退き料 平成28年3月18日東京地裁判決 |
3000万円 |
大地震時に崩壊する可能性が高く、非常に危険であること、補強工事を施しても、一時的な安全が保持されるに留まり、耐震性の問題が解決されないにもかかわらず、2億4000万円以上の費用を要すること等から、営業休止補償、工作物補償などを立退き料とした。 |
立退き料 平成28年5月23日東京地裁判決 |
2500万円 |
本件建物は地震の震動等に対して倒壊する危険性が高いところ、本件建物について耐震補強工事を実施することは経済的合理性を欠くと判断した。 工作物補償1562万円のほか、“移転後の店の売上げが現在の水準に回復するまでの間に発生する減収分に相当する金額”の営業補償を認めるべきであり、その金額は、店の1年間の営業利益の25%をもって相当とする等と判断した。 |
立退き料 平成28年1月12日東京地裁判決 |
1000万円 |
消防法違反行為が債務不履行解除に該当しないと判断した。 本件ビルは、平成25年の時点で建築後48年余りが経過し、鉄筋コンクリート造の建物であることを考慮しても残存する耐用年数はわずかであると認められると判断した。 不動産鑑定士が本件建物の老朽化に伴う立退料について、鑑定評価額を705万円としたこと、賃借人が本件建物以外の場所において本件店舗と同様の営業をする場合、相当額の営業上の損失及び移転費用を要することが見込まれること等の諸般の事情を考慮して、立退き料を1000万円とした。 |
立退き料 平成27年10月15日東京地裁判決 |
840万円 |
立ち退くにあたって必要となる費用のうち、帰責性の割合として7割に相当する部分について、賃貸人が立退料として提供することが必要であると判断した。引越に伴って生じる実費として950万円、移転に伴って生じる人件費として250万円と判断した。 |
立退き料 平成27年12月16日東京地裁判決 |
530万円 |
耐震上の危険性の高い建物であること等から、借家権価格を立退料として補償する必要があるとまではいえないと判断した。移転費用を276万4300円、移転に伴い就業できなくなると見込まれる日数は5日程度と認めるのが相当であるとした上で、就業不可に伴う損失補償33万9000円、収益減補償は36万円等を認めた。 |
立退き料 平成28年3月15日東京地裁判決 |
60万円 |
最も高い月額4万5000円の物件を基準とし、本件部屋の賃料月額3万3000円との差額の月額1万2000円を2年程度補填するものとし、新契約に要する敷金礼金を各1か月程度として積算した上、これに転居費用等を合わせ、立退料を60万円と判断した。 |
立退き料 平成27年11月4日東京地裁判決 |
正当事由なし |
賃貸人は立退き料600万円を提示していたものの、賃貸人の孫の転居は、賃借人の退去が確定してから計画を具体化するものであり、喫緊の必要性があるとまでは認められないのに対し、賃借人は、3世代5人の家族とともに、現に本件土地を生活の本拠とし、他に不動産を所有していないこと等から、立退きを認めなかった(地代:月1万3988円)。 |
立退き料 平成28年1月28日東京地裁判決 |
正当事由なし |
賃貸人は、立退き料8億円を提示したものの、耐震性の問題については、補強工事によって対応できること、再入居の提案がなされなかったこと、賃借人にとって、知名度を上げ、会社全体の営業規模を将来にわたって拡大する上で無くてはならない店舗であり、他では代替し難いものであること等を理由として、立退きを認めなかった。 |
請求棄却 平成27年9月25日東京地裁判決 |
正当事由なし |
賃貸人が本件建物を使用する必要性(賃貸人自身が生まれ育った本件建物に戻り、離婚して生活の苦しい親族と同居するという事情)は、一応は認められるものの、それが緊急性を有する程度までに至っているとはいえない反面、賃借人が本件建物を使用する必要性は、賃借人における投下資本の内容(1300万円)や本件建物からの収益(月50万円)、本件建物の代替建物確保の不確実性等の事情に照らしても、強く保護されるべきであること等から、立退きを認めなかった。 |
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以 上
書評「この1年間に出された濱嘉之さんの本」その2
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1. 月初めから、濱さんの出版物のなかでも、どうしても紹介したいと考えておりました「爆裂通貨」(文春文庫)を読み直しておりました。ところが、なんと、今月10日、青山望シリーズの最終巻と銘打って「最恐組織」と言う本が出版されたのです。次々と出版されるエネルギーとその最新情報には驚きです。
この本がシリーズの最終巻ですから、青山望以下4名のカルテットが、それぞれ次の人生に、どのように踏み出すのかも描いております。長い間、青山望シリーズを読んできた私には、彼ら主役4名が、次にどのような人生を選択するのかという展開に、大いなる興味をそそられました。読後感として感慨深いものがありました。
もちろん「最恐組織」でも次々と起こる社会事象に対し、その視点の持ち方を示してくれております。特に、北朝鮮という国の在り方や、中国が関与するサイバーテロに対する見方については大変勉強になりました。驚きは、近時、中国関与のサイバーテロが公然と話題になってきたことです。今日この頃、この事件が毎日のように新聞で報道されるようになったのです。濱さんの最新情報には何時も驚きです。
これで港湾埋め立て地や造船等に関係する利権を巡る犯罪でも起きれば(これも「最恐組織」のテーマです)、濱さんを「預言師」とお呼びしないといけません。
2. 本年4月10日発刊、同シリーズの「爆裂通貨」に入りましょう。
前回の書評で、日本人でありながら、戸籍のない人が一万人近く存在するという事実について、衝撃的だと申し上げました。
私は、高校時代から社会の矛盾を追っかける変な癖がありました。半世紀以上前になりますが、「爆裂通貨」で紹介されていると同じような人たちが生活される区域を見に行ったことがあります。私が見た地域は本当にひどかった。同じ頃、河川敷で生活される方々の地域も訪問しております。こちらで生活される建物の壁は、段ボールが中心で、本当に寝起きするだけの空間でした。濱さんも、「爆裂通貨」の第4章で紹介されている地区を、今回、ご覧になったでしょう。当該地域で生活されている方々への配慮が伝わってくる押さえた描写に、濱さんの思いが感じられます。
現在の状況は「爆裂通貨」で知るしかありませんが、でも、まだそんな地域があること自体が驚きです。
3. 本論の無戸籍者に戻りましょう。
自分のことで恐縮ですが、私は弁護士になると同時に人権擁護委員会に入り、すぐに人権救済部会の部会長となって、無戸籍者の方の事件も経験しました。でも、この殆どの方は、お母さんが、子供の出生届をしないというようなものが中心でした。その中でも、民法第772条の嫡出推定規定に反発され、前夫の子供と認定されたくないからという、意識的な事案もありました。嫡出推定に関する本規定は、再婚禁止規定(民法第733条)との期間が異なるなど、その問題点も指摘され、改正の議論もなされております(今回は触れる余裕がありません)。
しかし成人になられ、通常の生活をされている方で、無戸籍者であることが中心の論点になる私の関与事件は、「○○の国」の国籍取得が最大の事件でした。この事案を多少述べても許されると思いますが、敢えて詳細は省きます。概略だけですが、人権救済部会の先生方と一緒に、訴えの相手方を日本国として、その方の「○○の国」の国籍を認めよという裁判を起こしました。裁判所も検事の方も本当に協力していただきました。無事、「○○の国」の国籍を認めるという判決をいただいたのですが、「○○の国」の裁判所は、日本の裁判は関係ないとして、これを認めてくれませんでした。○○領事館の方とも相談して行ったことでしたが、○○の日本に対する国際感情を肌で知る事件でした。国際感覚がなかったのですから、濱さんに笑われますね。
4. 当時は、日本で生活される外国籍の方の相談や事件は、刑事事件も含めて多数ありました。韓国の方々も戦後の特殊性から、人権救済関係の相談も種々ありました。日本で生活される韓国の方々の、生活保護や年金など、その多くが議論され、結局裁判になった事例もありました。確かに国民の税金で処理される案件ですから、その是非を論じるべき過渡期は当然にあるものだと判断されます。
私は、弁護士になって数年で、日弁連の人権擁護委員会の委員になっております。東京弁護士会の先生から数年でなるなんて生意気だと非難をされたこともあります。でもこのような活動を通じて、先ず相談をできる場の拡充が必要だと思うようになりました。あらゆる法律問題を相談できる場を設け、そこで吸い上げる必要があるという将来像を言うようになって、人権擁護委員会からの派遣と言う形で、第一東京弁護士会法律相談運営委員会委員になりました。その数年後には委員長になり、東京三弁護士会法律相談協議会の議長にもなりました。このような私事を述べさせていただくのは、人権擁護委員会も法律相談運営委員会も、その在り方が少しずつ変わってきたという現状と、その存続の厳しさを述べたかったのです。つまり、人権救済部会の案件は、刑務所等の拘禁施設における人権侵害事件が中心になり、昔のように種々の事件は少なくなりました。法律相談運営委員会も、無料相談やネット相談の増大で、相談センターの運営費も出ない状況のなかで揺れ動いております。昔のように、皆様の役に立っていると自慢できるのか少々不安です。しかし、これも時間の流れの中では仕方のないことなのでしょうね。次の展開を考えねばならない時期に来ているということだと思います。
濱さんから勉強して、次を予測しましょう。
書評「この1年間に出された濱嘉之さんの本」その1
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- 書評
濱さんとの付き合いは、濱さんが警視庁を辞められて、危機管理の会社を立ち上げられた当時からのお付き合いです。このコラムでも何回も登場していただきました。1年ちょっと前のコラムでも、私が、200万部出版記念会の最初の挨拶をした話を書いております。そんな仲なのに、濱さん出版の本に対する書評がないことに突然気づきました。
濱さんの小説は独特で、読ませていただく都度、随分勉強させていただいております。濱さんの本の紹介をしていないなんて、許されるはずがありません。
2 ところで、ネットや出版物では、濱さんの作家デビューは2007年「警視庁情報官」とされています。でも私は、2006年8月16日発刊の講談社出版「警視庁少年課事件ファイル」が最初の出版物だと考えております。だって、最初の処女作を書かれた時、私の事務所にある少年事件関係の資料や参考書を大分お貸ししました。この処女作出版記念会の司会は私が仰せつかっております。参加者には警察関係の方が多く、多分公安関係の方も多数参加されていたのか、雰囲気がちょっと違って大変面白い経験をさせていただきました。
著者名は駒田史朗になっているため、デビュー作品とされていないのでしょうが、実に勿体ないと思います。
この本では、少年事件の洗いざらいが書いてあります。少年事件の実情が手に取るように分かります。また、当時のネットの発達状況に、ついていけない刑事さんが登場したりして、今読み返しますと、思わず笑ってしまうのです。著者名等の関係で、訳がおありなのかもしれませんが、敢えて紹介させていただきました。
3 濱さんの出版物紹介に際して、最初にお話ししたい内容は、先ず、びっくりするような最新情報が書かれているということです。
ここ1年間でも、毎回勉強させていただいております。
先ず、紹介する1年間の出版物をあげておきましょう。
①昨年2017年12月発刊、警視庁公安部青山望シリーズの「一網打尽」(文春文庫の出版)
この作品は、随分利用させていただきました。
本書では、地面師の詐欺事件について紹介し、このような手口を「背乗り(はいのり)」と言うそうです。拉致事件でも使われた手法らしく、北朝鮮スパイが良く使う手法と紹介されています。
②本年4月10日発刊、同シリーズの「爆裂通貨」(文春文庫の出版)
北朝鮮のサイバーテロ、仮想通貨が題材ですが、衝撃は日本人でありながら、戸籍のない人が一万人近く存在するという事実です。弁護士として衝撃的でした。私は韓国の方の類似の事件を扱ったことがありましたので、本当に新鮮でした。
③本年7月19日発刊、院内刑事シリーズの「ブラック・メディスン」(講談社α文庫の出版)
この作品は、病院での危機管理が中心です。目新しいトピック作品で、「弁護士の活動領域も広がるのではないか」と新鮮な印象を受けました。
4 では「一網打尽」です。
今年年頭、ある一部上場企業の新年会に呼ばれ、1000名程度が集まっている会場で新年会の祝辞を述べる役を仰せつかりました。私は、今後のビジネスで注意するべきことの一つとして、「成りすまし」事件について、この小説に書かれている内容を紹介しました。この時、「一網打尽」を掲げて実際に紹介しております。
ところが驚きました。その直後、「成りすまし」による不動産詐欺事件が爆発したのです。そうです。積水ハウスが、東京五反田にある老舗旅館「海喜館」の土地売買に際して、おかみさんの「成りすまし」による詐欺にあったのです。その損害が63億円というのですから驚きです。近時、毎日のように主犯格逮捕というように報道されております。真相解明は、まだ先ですね。
そもそも「一網打尽」が書かれた時期には、全くそのような話題はありませんでした。しかし、私は、「判例時報」という判例情報誌を愛読しております。同誌にて(「一網打尽」が出される直前です)、弁護士が「成りすまし」を見抜けず多額の損害を出したことに関する東京地方裁判所の判決が掲載されました。弁護士は、本人確認義務を怠ったとして損害賠償請求をされ、「1億6044万4218円を支払え」との判決が出されたのです。私はこの判決にショックを受けました。弁護士に損害賠償が認められるのは初めての事例で、これまでは司法書士等の先生方の判例ばかりでした。それらを読んで、「やっぱり弁護士でないとね」と当然のように思っていたことが裏切られたのです。
5 弁護士が、本人確認義務を懈怠した東京地方裁判所の判例について紹介したかったのですが、ページが無くなりました。でも当該弁護士の仕事ぶりには、同業者として腹立たしいものがあります。裁判所も、誠実に事件に向きあっているなら、本件の成りすましも見破れたと認定したのでしょう。
書評「ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来」著者ユヴァル・ノア・ハラリ(河出書房新社)/書評「テクノロジーの世紀」(朝日新聞GLOVE10月7日号)/書評「オリジン」著者ダン・ブラウン(角川書店
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- 毎日、AI(人工知能)に関する報道が絶えません。自動運転などを目指す次世代の車に関し、トヨタ自動車とソフトバンクが新会社を創設し、豊田社長と孫さんの握手する写真が新聞の一面を飾ったのは、つい5日前(30年10月5日)のことでした。
AI(人工知能)の将来については、話がどんどん広がっております。更に、加速度がついてきていると思いませんか。
今回、紹介する上記の3出版物(朝日新聞GLOVEは新聞です。)は、AI(人工知能)の進展に伴い、近い将来でも食べられない職業が増え始め、更にその先は、AI(人工知能)が人間の仕事を肩代わりすることによって、人間不要の社会になってしまうというような、近時の話題となるものの総括的な紹介の意味も含んでいるとお考えください。
- 最初に紹介する「ホモ・デウス」は、副題にある通り、AI(人工知能)によるテクノロジーと人類の将来を正面から論じる本です。2年程前、本書を出版した著者の前作品「サピエンス全史 上・下」を、本コラムにて書評として書きましたところ、驚くほど多くの人が読んでくださいました(閲覧履歴で分かるのです。これもAIの初歩的な段階ですね)。その続き物である「ホモ・デウス」のコラムも書かねばならないという義務感のようなものを持っておりました。
でも、現在の人類の築いた人間社会が喪失してしまうという最終段階まで発展する本書は、衝撃的ですが、愉快ではありません。著者は、人間至上主義がデータ至上主義に移行する結果、そのような結論になると述べております。AI(人工知能)の進展によって、人間が不要のものになるということですからね。しかも生き残ることができるのは、一部の大金持ちだけのようです。医療の大躍進により、保険がきかない医療によって、永続する生命を獲得する人類が出るというのです。現在の保険制度では受診できない治療があることに疑問のお持ちの方は、納得されるのでしょうか?もちろん、人類の複雑な脳の構造やデータ至上主義におけるAI(人工知能)の検証も十分になされている訳ではありません。AI(人工知能)を含めた科学と医療の進歩も将来のことですから、このような極端な結論は急ぎすぎのようにも思います。
また、仕事をなくした人類についても、ベーシックインカム論の立場から異なる結論を引き出す可能性も残ります。最近、政治家でも主張する方が出てきましたが、ベーシックインカムとは、「政府が、全ての人に必要最低限の生活を保障する収入を無条件に支給する」というものです。私がお付き合いさせていただいている富豪の方が、ベーシックインカムしかないでしょうねと話されたのには驚きました。だって、その方の税金は、爆発的に増えるからです(最近読んだ本ですが、「AI時代の新・ベーシックインカム論」(井上智洋著)が分かり易いです)。
本書にはこのような具体的な話はでてきません。知識なく読むと、嫌になるだけですから、それが本書を強く推薦しない理由です。
- 5年程前、「10年後に食える仕事、食えない仕事」(渡邉正祐著)を読んだ頃はそれ程感じなかったのですが、弁護士業界がAI(人工知能)に影響されるという事実は、当事務所でも既定の路線です。フォレンジックによる証拠検証についても、先々週、当事務所の田中先生とそれを話題にしました。でも近時の報道は、それどころではないですね。
弁護士業は無くなるそうです。「あと20年でなくなる50の仕事」(水野燥著)という本によると、弁護士業もその一つに入るそうです。この種類の本は現在どんどん出てきております(読みたくありません)。
過熱する報道の一つに、農業分野におけるAI(人工知能)の話もあります(英語のアグリカルチャーにかけて「アグリテック」と言われています)。知的労働がAI(人工知能)にとって代わられてしまうというのは分かります。農業も労働人口に著しい影響がでると聞かされると「そうだろうね」と一応納得しておりました。しかし、古来から連綿と続いてきた農業ですら、AIによるロボットによって人力が省力化されてしまうというのは信じられません。弁護士の将来など議論不要です。
- 朝日新聞GLOVEの「テクノロジーの世紀」は、これまで述べてきたことの総纏めとして、或いはデータ至上主義に至る前段階、即ち現在の社会状況(「民主主義」や「自由か格差か」)との関係についても論じてあります。次の8つのテーマが1頁毎に記載されているので、今までの議論の状況を急いで知るには最適と言えるでしょう。
項目をあげておきます。
① フエイスブックは民主主義を壊すのか
② 新時代のフリーランスがもたらすのは自由か格差か
③ 人はロボットを愛せるか
④ 中国はデータで世界を征するのか
⑤ 「GAFA」の支配は続くのか
⑥ 不老不死は実現するか
⑦ 人工知能は人類を滅ぼすのか
⑧ まとめ インタビュー「人間がデータ化される時代に」
何と、もう頁がありません。詳細は何時か書くこともあるでしょう。
- 最後の「オリジン」と言う本の紹介が十分にできません。
でもこの本は、小説として楽しんでいただければ十分です。前項の③「人はロボットを愛せるか」の裏返しとして「ロボットは人を愛せるか」をテーマとして、お読みください。斬新ですよ。
一. 今年ほどパワハラに関する報道が多い年もないのではないでしょうか。史上初のオリンピック4連覇を果たした伊調馨選手に対するパワハラにはじまり、ボクシング協会や体操協会においてもパワハラの問題が大きく報道されています。企業にとっても無視できるような社会情勢ではなく、パワハラを行っていたという報道がなされた企業が「炎上」してしまうこともしばしばです。
「炎上」してしまえば、会社としての信用力を大きく失墜させ、良い人材が集まらなくなり、企業としての競争力も低下させてしまいます。
法的にも、会社には職場環境に配慮する義務があり、損害賠償義務を負う可能性がありますが、それ以上にパワハラを甘く見ていると大変な目に遭う時代になってしまいました。
二. ところで、そもそもパワハラとは何でしょうか。
これほど大きく報道されている割に正確に理解している人は極めて少ないように感じます。
平成24年1月に厚生労働省のワーキンググループは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為である」と定義しました。
ここで重要なことは、キャリアや技能に差があり、実質的な影響力があれば、同僚の間や、部下から上司に対してであっても、パワハラが成立し得るということです。また、「職場」といっても、打ち合わせをする飲食店や宴会においてもパワハラが成立します。
三. 他方で、業務上必要な指導の場合、相当性を欠かない範囲であれば、相手がどのように感じたとしてもパワハラには当たらないということも非常に重要です。会社がパワハラ問題に対応しようとするときに、一番難しい問題がこの点です。
仮に業務上必要な指導までパワハラであると言ってしまった場合、上司は何も指導ができないことになってしまいます。一生懸命指導してもパワハラだといわれるのであれば、リスクを避けるために指導をしたくない、なるべく見て見ないふりをするという上司が出てくるのは当然のことです。これではまともな人材は育たず、まともな会社になりません。
要するに、会社とすれば、単に「パワハラはいけません」と言うだけではなく、具体的にどのような問題がパワハラとして問題になるのかを適切に把握し、どのような指導をするべきかをしっかりと認識していかなければならないわけです。
四. 厚生労働省は、パワハラを以下の6つの類型に分けています。
① 身体的な攻撃(暴行・傷害)
② 精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)
③ 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
④ 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
⑤ 個の侵害(私的なことに過度に立入ること)
⑥ 過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
の6つです。
何となく問題がありそうな内容が並んでいますが、通常、これだけ聞いても具体的にどのような場合にパワハラになり、具体的にどのように指導していけば良いのかはわかりません。
五. 会社がパワハラに対処しなかった場合のリスクが非常に高まっている以上、具体的にどのような場合にパワハラになるのか、どのような指導をしていけばよいのか、ということは顧問弁護士にしっかりと確認していく必要があります。
また、会社にはパワハラを防止するために策を講じる義務がありますから、弁護士にハラスメント研修の講師をしてもらい、管理職に正確な認識を持ってもらうということも重要です。
残念なことに既にパワハラの被害申告を受けてしまった場合には、当該行為が本当にパワハラなのかをしっかり調査した上で、適切な対応を行う必要があります。
冒頭でも述べましたが、パワハラを甘く見ると、会社が損害賠償義務を負うだけでなく、信用力も失墜し、とんでもない目に遭ってしまいます。
六. 当事務所は、顧問会社の実態に合わせ、顧問会社に出向いてハラスメント研修の講師を行ったり、パワハラの被害申告を受けた場合にも本当にパワハラなのかをしっかり調査確認した上で様々な対応を行なったりしております。
会社においてパワハラに関するリスクが非常に高まっていることを理解して頂き、一度当事務所に御相談頂けると幸いです。
「徳田氏と、氏に伴走して旧態依然たる医療をあらため、無人の荒野に病院の砦を築いてきた人たちにとって、徳洲会とは・・・、かなり長めの「青春」そのものだった。」
前回のコラムで、オウム事件を巡る朝日新聞の対応に疑問を呈しましたが、この本は、法律に抵触することなど厭わず、社会的な運動に身をかけた人たちについて「かなり長めの青春そのものだった」と言える著者の姿勢に驚いたからです。オウム事件との区別も、その線引きも必要ではないかと感じます。
2 先ず、この本を通じて知った徳田虎雄さんを紹介しましょう(まだご存命なので徳田さんと言います)。
徳田さんは、選挙では公職選挙法違反になることなど全く意に介さず、周囲を巻き込んで、違法な「どぶ板選挙」に邁進し、マネー戦争でも、多分税法や特別背任罪などの法的考慮も一切されなかったのでしょう、徳洲会のため必要な金を獲得することだけを目的にして、あらゆる手段を行使されたのですね。
でも金で買う一票は(一票などと言うレベルではないが・・)、民主主義の根幹に反します。私は許せません。また金儲けだけを考えて行われるマネーゲームも、読むに値するものでしょうか。
そもそも私は弁護士ですから、法に抵触する方々ともお付き合いをすることが前提です。また弁護士と言う以前に、自分の若かりし頃を思い出し、どこまでの違法が「青春」と言う美名?の上で許容されるのか、常々考え続けてきました。
つまり、どこまでの確信犯が、小説として読むに耐え、共感に値する範囲と言えるのでしょうか。
3 昔、私は、カンボジアの共産主義革命に絶望しました。でも常に関心を持っておりました。当時、カンボジアを描いた面白い本はなかったのですが、昨年夏、発刊された「ゲームの王国」上・下(著者小川哲 早川書房)というSF小説は、当時のカンボジアを題材としているため、直ぐに購入して読みました。
やはり衝撃的でした。この本も紹介したくなります。でも下巻は、脳波でコントロールするゲームの開発と言うように、近未来のSF小説になってしまうのです(私は上巻だけで充分です)。故に、カンボジアの歴史としてその要約を紹介します。
カンボジアの指導者となったポルポトは、毛沢東に憧れていることもあったのでしょうか、原始共産主義を目指したクメールルージュを組織しました。彼は、階級や格差のない原始共産時代の状態に戻すというスローガンの下に、邪魔になる富裕層や知識人を対象として100万人以上を殺害したとされています。共産主義であっても私有財産制度は廃止されないのですが、農本政治を行う限り、全ての私有財産が消滅してしまうのだということも、この本で十分に理解できます。マルクスの言う経済学はやはり理想論であって、特に農業を主産業とする発展途上国では学問的な理念など通用しないのですね。
しかし、何を理想にしようと、革命のためだと言って、人を殺害することなど許される訳がありません。オウムも、坂本弁護士一家虐殺は、オウムの唱える理想国家創造のためだというでしょう。こんな単純で明らかな事実・犯罪を「オウム事件の闇」などと呼ばないでほしいのです。オウム事件が「みんなの責任」だとする朝日新聞の論調がおかしいと思う私の認識もこれに尽きます。如何なる説明をしようとも、人を殺めることが理想実現の手段として許される訳がありません。「みんなの責任」などである訳がない。
朝日新聞の論調は、逆にオウム関係者を甘やかすことになりませんか?と言うのが私の結論なのです。
4 「神になりたかった男」は、聞取り風のルポルタージュになっておりますが、読み飽きません。そもそも医療は、私たちの生命に直結しています。徳田さんは「命は平等」を唱え、先ず休日・夜間の救急患者の受け入れから始めます。そして医療空白地域に病院の進出を図ります。当初は、病院建設費用等の金策、そして進出地域を管轄する旧態依然たる医師会との闘い、その後は、医療行政の是正など、拍手喝采を送りたくなります。病院通いが絶えない私自身の関心事なのですから、「命は平等」なるスローガンには泣けますね。
この本を読んで、医療に対して違った側面から見られるようになったと思います。近時の新聞報道でも、不足する医師・看護師の実態、医療機関の休廃止・破綻の増加、或いは医薬分業制度や医療保険制度等枚挙にいとまがない程です。
結論ですが、徳田さんやその周りにいる人たちにとって、徳田さんの戦いは、やはり「かなり長めの青春」なのでしょう。
公職選挙法違反位で目くじらはたてられないか?
皆さん、読んでご判断ください。