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新宿の顧問弁護士なら弁護士法人岡本(岡本政明法律事務所)

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コラム - 最新エントリー

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始めに(当事務所が企業側労働法務を行う基本姿勢)

  今回掲載するコラムは元々3回に区分して記載したのですが、3回に分けるほうが読みにくいことが分かりました。我が事務所の労働事件に対する関わり方・姿勢についても示しております。
 3回に区分した題だけでも以下に示し、何を書きたかったかを先ずお知らせしようと思います。当事務所の若い先生方の指針ともなる重要な内容を持つものですから、私のコラムに関心をお持ちの方は本編を是非ともお読みいただきたいと思っております。
 
 第1 日本の労使問題は社会主義化しているのか?
 
 第2 労働法制の歴史
 
 第3 労働事件に関する当事務所のあり方・関わり方
 
 
第1 日本の労使問題は社会主義化しているのか?
 
1 有名弁護士の言葉
 企業による人気投票で超有名な弁護士が、日本の解雇問題にふれ、「中国よりも日本のほうが実質的には社会主義ですね」と指摘し、直ぐ続いて、中国での冗談として「日本人と付き合うと、おまえ、社会主義者になっちゃうよ」と書かれている本を読みました。その本では面白おかしくインタビューに応じている様子が記載されていました。
 皮肉をこめて批評するなら、彼の分析はきちんと事実認識はしているが、しかし歪んだ分析力であると言わざるを得ません(有名弁護士は「冗談です」と言われるかもしれませんが、それでは出版物の内容から判断しても演出過剰でしょう)。
これまで当コラムで記載しましたように、解雇の有効性を裁判所に認めさせることが本当に難しいという事実を述べているだけなら、それは一面では正しい経験に基づいた分析力ではあります。しかし我が国の労働法制は「社会主義」だと直ちに認定されるべきものなのでしょうか。かかる認定は基本的な姿勢に問題があるのです。
 本コラムでも、そろそろ我が国の労働法制がどのように考えられて立法され、今日、労働実態の激変と国民の認識によってどのように変化してきたのか。或いは、立法当時の基本的な認識と根本的に異なった別途の考え方で労働法制に対峙する時期にきているのか。そして変遷があったとする提言があるなら、それはどのような理由に基づいているのか。
これらを考察する時期に来ております。
端的にいうなら、これらは、今、検討途上にあると言えるでしょう。しかし、ここでは学者の世界に入って、その論拠を検証しようという訳ではありません。コラムなのですから、その難しさだけでも感じていただければよいと思っております。これから書きます当コラムは多少理屈っぽくなりますが、労働法の立脚点を知るには重要です。興味のある方はどうか最後までお付き合いください。
 
2 労働法の基本的な考え方
 私が司法試験を志した当時の労働法教科書には社会主義運動の「アジびら」のような内容が記載されております。これを読まれるなら皆さん驚かれると思います。
長いですが象徴的ですのでその一部を紹介しましょう。
 「ところが現実についてみると、労働者は被搾取階級であり、被支配階級である。生産手段をもたない労働者は総体としての資本から自由には生活できない。労働者は商品の生産を資本のもとでしかおこなうことはできない。しかも生産物は労働しない資本所有者の生産物(商品)となる。だから労働力の生産性は資本の生産性として現象する。このような労働者の資本制生産社会における地位は資本に従属的なものというほかはない。そして、かかる階級的な従属は個別的な労使関係における交渉力の不平等としてあらわれるし、また生産過程においては生産手段の所有者の指揮・命令と労働者の服従として形をとる。工場が有機的構成を高めるほど、労働者は工場という組織体に従属するようにもみえる。本質的には資本への従属である。」(労働法要説改訂版沼田稲次郎著5頁)。
 上記労働法の骨子は「従属労働概念」という言葉で要約できると思います。
 
3 私の初心
大学卒業後、相当経ってからこの教科書に出会いました。こんな本当のことを司法試験で書いてよいのかと疑心暗疑になったことを記憶しております。本当のことを堂々と主張できるのなら本気で労働法を勉強することも悪くないと考えるようになりました。28歳ころまでアルバイト中心の生活で、組合活動を支援したり、不動産会社に勤めたこともありました。精神的には、「モラトリアム」気分で勉強を口実に気ままな生活をしておりました。言葉だけでなく、強く司法試験受験の決意ができたのはこの教科書のおかげだと思っております。青春といわれる時期の終末、30歳で結婚し、その女房には私の我が儘を理解してもらい、本当に世話になりました。
 
4 司法試験での経験
急激な社会の変化や国民意識の変化に伴い、今、司法試験で「従属労働概念」をストレートに使って論文を提出したら合格できないでしょうね。少なくとも、現在の複雑な労働問題に直面していない回答だと誤解されるでしょう。
でも本当は私が受験した当時でも、こんな言葉が出てきたら不合格だったと今は考えております。多分論文に合格した年度の出題はこのような概念と無関係に回答できたのでしょうね。申し訳ないが、私は、モラトリアム時代から、司法試験出題者も、採点する先生方も、良くも悪くもこの程度でしかないと判断しておりました。
 
5 現在は労働法の曲がり角か?
結論から述べますが、急激な社会変化に伴い、労働法制を考えるに際しても、従属労働概念に手当ては当然に必要になってきております。社会の多様性や複雑性に伴い、集団的・一律的な労働者としての把握を、「個人主義的な労働者像」として把握するべきであるという労働概念を提起される学者もいます。この考え方からすると集団的労使関係即ち組合活動の解釈は相当変化せざるを得ないでしょうね。
しかし私は、社会の基本構造までは変わっていないと判断しております。確かに労働者派遣法や近時制定された労働契約法等の分析なくして労働紛争を解決することは困難な時代になってきました。労働組合の使用者に対する対決概念だけでは現在の労使関係を考察することは困難な側面も出てきました。個別的な労働形態の発生や、現象面としての組合の組織率の低迷だけからでも直ぐ理解できることです。
では新しい労使哲学が生まれているのでしょうか? 否です。
 結論から言いますが、日本の労使問題即ち労働法制が社会主義化しているかとの問いかけは誤りです。
 
 
第2 労働法制の歴史
 
1 労働法制は破綻したか?
 我が国の労働法制度は決して破綻などしておりません。
確かに現代社会の変遷は、我々の予期の範囲を超えるものです。私は、社会激変の今日でも、労働者は法律的に使用者と契約当事者対等概念を適用する程には成熟しておらず、労働法の基本概念を廃棄する程までの社会変化には達していないと考えております。確かに従属労働などと「アジびら」のような概念を使わなくても消費者保護や高齢者保護と同じ感覚で再度労働者の不平等を手当てすればよいとも言えましょう。しかし果たして、それで労使関係の「根っこ」を捕まえられるのでしょうか?
非正規労働者が労働者の占める割合39パーセントに達したという厚生労働省の2010年度調査の発表をみるだけでも労働法の根本理念に変化があったなどと主張することはできないと思います。
 
2 社会主義とは?
私は、労働法を考えるに際しても、諸外国の政治制度の変遷、特に社会主義制度の国々の幻滅的なまでの失敗或いは我が国の政治理念を振り返るべきであると思っております。そして大多数を占める国民の認識にたつなら、憲法の理念にいささかの揺るぎも発見できないと確信しております。憲法の規定については既に当コラムで触れているところです。
 私は、社会主義制度の国々に憧れ組合活動にも参加したことは前に述べました。学生時代には資本論を読むべく努力し、座右の書はその総纏めだと言われる「ドイツ・イデオロギー」でした。40年以上前ですが、繰り返しマルクス・エンゲルス共著のこの本を読んだ記憶があります。
私のモラトリアム時代、カンボジアの大量殺戮に呆れ、国民を蔑ろにする中国の共産主義に怒りを感じ、ソ連崩壊等を経ていつの間にか人間の欲は社会主義の理想よりすさまじいものがある、共産主義は夢であり、その到達過程には人間の欲が待っていると思い知るようになりました。
私の思想的な変遷は複雑ですが、根は「一般庶民・人間を大切にしろよ」というものでした。「社会主義でも理想は実現できないというより、現実の社会主義は資本主義よりもっとひどい」ということだったと思います。
 
3 我が国の国家制度
 社会主義或いは共産圏国家に絶望しても、現在の国家制度のあり方についてはよく分からなかった時代が長かった。ケインズの「修正資本主義」或いはフリードマンの「新自由主義」もこの頃知ったのだと思います。
政府の市場への介入を主張したケインズの世界恐慌克服論或いはフリードマンの自由市場主義論に淡い期待を抱きながら、資本主義体制の修正或いは手当をどのようにするのかという経済論に関心を寄せたこともありました。
でもフリードマン信奉者である小泉さんには、自らの弁護士業務に関係するだけに、直ちに滅茶苦茶に幻滅しましたね。フリードマンの主張する「政府は小さいほうが良い」との主張には新鮮さを感じていましたが、「医師の免許制は悪しき制度であり、国民の自由を制限するもの」と主張していると知った時から懐疑的になりました。そして「弁護士資格も自動車の運転免許と同じにしよう」という新自由主義信奉学者が法制審議会に参加していることを知り、現在の改革されつつある司法制度に絶望しました。この新自由主義の論拠には、ケインズですら言う「我々が生活している経済社会の際立った欠陥は、完全雇用を与えられないこと、富と所得の分配が恣意的で不公平であること」という人間の欲への基本認識がないことに根本的欠落があると考えております。私が司法の一翼を担う弁護士であるが故に、フリードマンの限界は肌で触れるように直ちに理解できました。
これからの司法制度のあり方が本当に心配です。
 
4 労働法制のあり方
当初述べました企業による人気投票で超有名な弁護士の話が、日本の文化或いは労働法制あり方から論じていれば私は納得したでしょうが、「中国よりも日本のほうが実質的には社会主義です」と何を根拠に言っているのか「あほらしくなる」と言うのが私の真意です。
労働法制の理念は憲法に規定されたとおりであり、法制度は、我が国の文化のあり方、即ち労働社会の複雑さに対応して手当を繰り返してきました。生きる庶民の労働力という商品、労務提供契約に規制があるのは人間の限りない欲に対する規制なのです。修正資本主義という用語を使用してよければ、手直しを加える労働法制に何の問題があるのでしょうか?
かつて総理大臣であった管首相の「最小不幸社会」は理念としては絶対に正しいと思っております。残念なのはケインズ理論で確立された「乗数効果」すらも知らなかった「勉強不足」に、首相としての資質を問うべきでしょうね。
 
5 世界的な労働法制
そもそも世界的にみても日本の労働法制が社会主義化しているなどと誰も言いません。
アメリカにおける雇用の自由市場を前提にした労働法制もあれば(解雇が比較的に容易に認められる)、或いはフランスのように日本と同じように厳しい法規制を課している国もあります。労働市場のあり方等に影響されて労働法制はその国によって様々なのです。
失業率に喘ぐオバマ大統領をみるなら、アメリカの労働法制が成功しているなどとは誰も言わないでしょう。それに引き換えフランスの厳しい労働規制を社会主義化したなどとは誰も言いません。中国での「人治国家」より先進国の「法治国家」が最小不幸社会の防止に寄与していることは真面目に労働法制を勉強する者なら直ちに理解しうることです。
超有名弁護士の言など「世迷いごと」のたぐいなのです。
 
 
第3 労働事件に関する当事務所のあり方・関わり方
 
1 企業側労働法務
揺れ動く社会の変遷のなかで、私はこれまで触れ合う方々との人間関係を大切にして弁護士業務を行ってきました。数え切れない方々とお付き合いさせていただきました。その中から顧問を依頼され、今では立派に上場される企業まで出てきております。こんな幸福な弁護士稼業があるでしょうか。
人間的な深まりのなかで、必然的に労働事件も依頼されるようになりました。たまたま企業の方々との付き合いが中心でしたので企業側の労働法務に精通するようになりました。企業側の労働法務が中心になっていることに所長である私は、自分の生き様と何の矛盾も感じておりません。
 
2 当事務所の課題
労働法は管さんのいう「最小不幸社会を目指して」労働者のための規制を設けております。我々弁護士はこのような労働法に従って双方の立場に立って自己実現に向けて頑張るだけなのです。我々は、法適用場面における紛争解決のために要求される職人でしかありません。正義は双方にあります(「正義」というより、「理由のある自己主張」といったほうが私には馴染む)。企業側であっても、その労働法制の規制の中で、全力を尽くすことで我々の業務は貫徹されたことになります。
国民が司法に要求するものは、立場が違えどもその立場において当該立場の依頼者のために全力を尽くす弁護士こそ求めておられるのではないでしょうか。
法制度はこのように運用されるべきなのですから、当事務所は企業側であることに何の躊躇いもありません。それこそが司法という制度において一方の立場にたつ弁護士に課された責務だからです。
 
3 最後に
 考えて見ますと、今回のコラムは当事務所所属弁護士に向けてのプレゼンテーションのようにも思えます。
私は、当事務所所属弁護士に向けて次のように宣言します。
 
 
『当事務所全員は、司法の一翼を担うという名誉ある立場を誇りにし、依頼者のために全力を挙げて頑張ります。』
 
 以 上

 

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1 奥さま付添いの法律相談

  労使紛争の相談で奥さま付添いはおかしいと考えるべきでした。

しかし、一般に法律相談の際、誰かが同伴されることはよくあることですし、社員10人程度の会社なら奥さまが経理を担当されるなどして一緒に相談されたいというのも全く疑問を差し挟む余地はないものです。

でも本件は奥さまが既に会社に関与されなくなって久しく、社長であるご主人が心配で同道されたということでした。

 

2 本件の発端

相談の内容は、会社の経営が傾いたのは社長のやり方が悪いとして、部長が職場を占拠し、他の社員に社長交代の呼び掛けをしており、社長である相談者は会社に出られない状況になっているというものでした。

ちょうど金曜日、顧問先からの紹介による緊急の相談でした。種々相談をした結果、緊急を要するということで直ぐに現場である会社に行くことにしました。会社は部長等の社員が職場占拠をしているため、当事務所の男性職員をも途中から同席させ、職場占拠を解除させる手段等種々相談をして、翌日の土曜日には現場に入ることにしました。

 

3 事件の急展開

翌日土曜日、地方都市に所在する会社に行きました。しかし土曜日が休みのせいか部長を始め従業員の誰もおらず、従って誰にも邪魔にされずに帳簿類等の持ち出しができました。その後、地方都市のターミナル駅喫茶店で奥さまと一緒に相談をしました。

  奥さまは「もういいじゃない」とご主人に話され、「部長に任せるか、破産の申立をしたらいい」とも提案されました。社長は悩んでおられましたが、帳簿類の検討からしても破産という選択も可能だと判断される事案ではありました。とにかく月曜日に結論を出すことになりました。我々は、月曜日約束の時間に事務所で待っておりましたが、来所されず、また電話もありません。午後になってやっと奥さまから電話がありました。その電話内容は「社長が亡くなった」というものであり、相談は後日ということになりました。

本件の結論は、事業については部長たちに任せるということで一件落着となった事案でありました。

 

4 ショックは男性事務員の告白です。

男性事務員は、当職事務所に来る前、有名学校の元有名教師であり、当時有名学校との労使紛争を抱えている立場にあったことからも、土曜日の相談の際、喫茶店で、社長に対して「仕事を続けたいなら、もっと頑張れ」と具体的にアドバイスをしておりました。社長の肩を落とした姿が印象的でありました。

ところで男性事務員には彼を慕う学生や仲間がたくさんいましたが、その仲間の一人が社長第一発見者であったことです。仲間からショックを受けたという連絡があり、会ってショックの内容を問い質したところ、相談を受けていた懸案の社長のことだと分かり、男性事務員は大変なショックを受けました。

彼は「不思議な縁」を語っておりました。

 

5 「職人に心を」

私にも重大反省を迫る事件でありました。どうしてもっと親身になって相談しなかったのか。社長の事業継続の夢と、奥さまアドバイスの断腸の思いに寄り添えなかったのかという反省です。

事件を見事に片付けるということではなく、弁護士という法律問題解決の職人が、あらゆる可能性に目を配るという基本姿勢の不十分さを思い知った事件でありました。職場占拠をどのように処理するのか、或いは部長にどのように事業承継させるのか、それができないならどのようにして会社を破産させるのかという問題解決の流れ以上に、配慮するべき不可欠のものがあったのです。

 

6 労使紛争は「悩みのるつぼ」

  労使紛争は、労使のどちらに正義があるかなどとは、容易に語ることのできない案件であります。角度を替えて経営者サイドからみるなら、企業人は、苦渋の決断を日々迫られ、悩んでも通常は決断できず、或いはやっと決断しても、ルーティンワークの業務と殆ど変りのない業務を実行していることが殆どであります。

  当事務所は、経営者サイドにて、今日まで弁護士業務を続けさせていただきました。当事務所は、弁護士というより職人を自負して業務に邁進してきましたが、労使紛争の主役は経営者であり従業員であります。経営者には企業存続の義務が、社員には家族を養い生き残る権利があります。

労使紛争には人間という生き様がそのまま反映していると考えて間違いはありません。

  

  次回は、話を替えまして「日本の労使問題は社会主義化していないか?」と題して、私の考えるところを述べてみたいと思います。

 

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 1 解雇を契機とする労使紛争

  中小企業での労使紛争は、理由は種々あっても解雇を契機にして発生することが多い。会社経営を問題にして労使紛争に発展したなどという勿体ぶった説明などできる事件は実際には少ないのです。
弁護士の目から見て、こんな形で解雇をしたら問題が発生しますよと警告したくなるような事件こそが労使紛争にまで発展する確率が高くなると言ってよいでしょう。経営者の皆様、解雇をする際にどれほど厳格に考えていらっしゃるのでしょうか?疑問をもつ事例が本当に多いと申し上げておきます。
そもそも解雇は労働者に対する「死刑判決」と言われることもありますが、文字通り慎重な判断に基づいて実行されねばなりません。解雇が有効であるとして裁判所で認められる事例は、このまま雇用を継続することは本当に会社がかわいそうだと判断できるような限定的な事例に限られると考えてくださって間違いはありません。
 
2 そもそも個人的な理由による解雇が、何故、集団的な労使紛争に発展するのか不思議に思われますか。
 
  何の不思議でもないのです。
労働組合は「労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織された団体」を言うのですから(労組法2条)、個人的な労働条件に関与することも当然のことなのです。特に日本のような企業別組合を中心にして組織され、現在のように組合の組織率の低下を目の前にすると、個人的な解雇に関しても決然として団体交渉の申し入れをして組合員の共感を得なければ組合の生き残る道はありません。
ある学園の校長先生を解雇した事案がありました。管理職の人を中心にして組合員として加入させ、労使紛争を引き受けられている組合に駆け込まれ、泥沼化した状態になって依頼を受けました。私が代理人になった時には、入学式の日にデモが行われ、入学式ができない状況にありました。当然組合員は解雇された校長先生一人ですから、経営者からは、一人のために何故こんなデモが起き、ピケをはられて新入生と親に対するビラ配りをされ、入学式を潰されてしまうのだと大変お怒りを受けました。
弁護士からは、お怒りになるより冷静に対応しましょうと説明せざるをえません。しかし、その場になってみると実際は上記経営者のような対応を示され、冷静に対応されるほうが少ないのです。
 
3 労働基準監督署の介入があるともっと怖い。
 
解雇から労使紛争が泥沼状態になり、経営者が会社を閉鎖するロックアウト(会社側による事業所閉鎖)をした事件を経験しました。経営者からは、ロックアウトしても従業員が会社に出入りしているので一緒に説得に行ってくれませんかと依頼を受けました。工場正門に着き正門に近寄ったところ、正門の近くに停まっていた車からわらわらと背広姿の男3名が走り寄ってきて経営者に手帳を示して何か質問をしてきました。私はとっさに労働基準監督官達だと判断して私が間に入って対応したという事件もありました。
この事件は従業員が残業等法律に基づいた処理が行われていないことまでも含めて訴え、逆に会社がロックアウトしていると労働基準監督署に直訴したものでした。これは大変重大な局面です。
労働基準監督官の権限を知っておられる方は殆どいないと言っていいでしょう。
 
4 労働基準監督官の権限
 
 労働基準法には「労働基準監督官は、事業場、寄宿舎その他の付属建設物に臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができる」(101条)と定め、「この法律を施行するため必要があると認めるときは、使用者又は労働者に対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる」(104条の2)とし、「この法律違反の罪について、刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行う」(102条)と定めています。
  労働基準監督官は警察官と同じ職務権限をもっているのです。
当サイトのバナー「残業代請求は会社を潰す」にあります(3)「強大な権限をもった労働基準監督署が貴方の会社を強制捜査(調査)」の欄をお読みください。そして「労基署の捜査により支払わなければならなくなる金額のシミュレーション」をご覧いただければ、その危機意識を共有されることになるでしょう。
 
5 解雇から職場占拠
 
  解雇を契機にして従業員による職場占拠に至った事例も経験しております。この事件は奇妙な形で終わった案件ですので次回述べますが、個別的な労働条件を巡って種々違った展開をたどることは常で、私達であっても予断を許さないものです。しかも近時は労働審判という新しい解決手段も多用されるようになり、立川支部でも労働審判が行われるようになって1年ほどが経過しました。
つい3か月程前にも解雇を巡って立川支部で争ってきたばかりです。審判法廷にて、開口一番、裁判官が会社側にお金の支払いを求めるというお決まりの手順をたどりました。当方有利に解決しましたが、実態は会社側が圧倒的に大変な立場にたたされるということは間違いありません。
 
 

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1 労働紛争は会社経営にとって予想されるべきもの 

  事務所所長である私は、大学を卒業した当時、組合側として労働紛争に関与した経歴もあり、これまで労働組合との交渉等相当数の事件を依頼されてきました。
  労働組合との紛争は、通常民事事件のみを扱っている弁護士には到底無理なお願いです。訴訟になれば通常の弁護士でもある程度対応できるでしょうが、組合側も高い報酬を払って弁護士に委任していたのでは経済的にあいません。労働基準監督署、労働委員会或いは訴訟申立以前の交渉から始まる初期の対応こそが、最も大切な時期であることは経営者の皆様であれば当然理解されることでしょう。
初期の適切な対応によってこそ会社にとって不利にならない方策が検討でき訴訟等に備えられる、即ち逆説的に訴訟等になることも防止できるという理屈は、会社経営に対する見通しと全く同じなのです。
 
2 労働紛争は特殊
 
  労働紛争の何が特殊なのでしょうか?
  ここでの契約の対象は何でしょうか。つまり契約の目的物が生身の人間の労働力なのですから当然なのです。土地や物であればある程度代替性もあり、形式的に処理することも仕方がないことでしょう。
このような特殊性に配慮し、憲法28条では労働者の地位を確実なものにするため、団結権及び団体交渉権を定めました。労働組合法12項では、労働組合の正当な団体交渉を刑法にいう正当行為とする旨の定めをおき、さらに民事免責の規定までおいています。つまり法の理念に従い、労働者も経営者も互いに地位を認めあって会社を盛り上げていくことが前提なのです。互いが対等の立場にたって労働力に関する契約を交わし、労働力を提供するということは理屈を言えるほどやさしい訳がありません。
経営者であるあなたは、会社に労働組合がないのだから、ややこしい労使関係は生じないと考えていませんか?そうではありません。あなたの会社の社員(解雇された人も可)の一人でも所謂合同労組に加入するなら、あなたの会社は団体交渉の求めに応じる必要があるのです。拒否すれば不当労働行為として刑事罰に発展することもあります。
 
3 初期対応における当事務所の姿勢
 
労働訴訟は、通常の事件のように「白黒」容易に予想できるものではありません。「訴えられたら負け」という会社側労働法専門弁護士もいるほどです。しかし、今回お話ししておきたいのはその前段階である団体交渉等の初期対応です。
会社が労働組合と団体交渉をして、これでは相手側の要求されるままに終わってしまうと判断されて始めて、当事務所にお出でになる経営者が多い。既に会社の事務室等で(従って長時間交渉になるのは常識です)、且つ労働時間中に(交渉しているだけで給与がもらえる)団体交渉をして「まいった。もう、こんな交渉は嫌だ」という相談者には実は殆んど有効な手など打てません。しかしここまで困窮された経営者は「お金はお支払いします」と積極的に当方に受任依頼されることになり、弁護士が経営者側補助者として同席するのが通常です。
ここで当事務所の姿勢を強調しておきますが、私は補助者であったとしても安直に団体交渉に同席することには実は反対なのです。労使双方対等に、且つ真摯に話し合いをするということが紛争解決の基本であり、つまり解決した後の労使関係をも配慮に入れることが大切です。弁護士の登場により逆に経営者に対して不信を招かないようにしたいからです。もちろん当事務所で諸論点を検討し、見込みに従ってその対策を立てることは必要不可欠です。弁護士が何時団体交渉等の補助者或いは代理人として登場するかも重要な検討課題です。
幾度か経験してきたことですが、団体交渉の相手方が合同労組のベテランの場合などだと、経営者は小馬鹿にされて終わったという印象をもたれる方が本当に多い。私が経営者補助者として同席しただけで、ベテラン書記長に「武器(注;弁護士です)は対等であるべきだ」と主張され、当職の同席に異議を唱えられ、むしろ当職の存在意義を再認識していただいたという大変にありがたい経験もあります。
 
4 今回のまとめ
 
極限状態にある場合には確かに団体交渉から受任してきましたが、団体交渉に補助者として同席するだけで、着手金をいただくことになります。さらに継続的に労働組合と交渉することもありますので、当事務所と顧問契約をされることが万全です。会社の実態を長期的に見させていただき、経営方針についてもある程度理解し、相手方と話せる状況を作る必要があるからであり、労働組合もそうでないと納得しがたいでしょう。
当事務所は、お客様との信頼関係を構築することを念願して業務を行ってまいりましたが、それは会社で働かれる労働者の方にとっても同様です。会社総体として当事務所に対するある程度の信頼を得ないと、今後における労使関係の「円満な解決」にはならないと判断しております。
今回は労使紛争と弁護士の関係について、当事務所の姿勢を説明してみました。
次回は、これまで経験した労働紛争を中心にして話してみましょう。

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 『経営者のための

弁護士による労働問題(残業代請求等)相談解決手段について』
 
弁護士が
    労働トラブルに取り組む企業体制を、経営者の立場で構築します。
 
当事務所からのご提案
 
将来のリスクを見誤らないためにも、また下記の観点からも各種労働トラブル発生への迅速かつ適切な対処を専門家に相談されることをお勧めいたします。
 
1.労働トラブル増加
最近では、「未払い残業代・賃金請求」「名ばかり管理職」「解雇・雇い止め」「セクハラ・パワハラ」「精神疾患になってしまった従業員への対応」「協調性のない社員への対応」など労務管理にまつわる労働トラブルが増加しております。こうしたトラブル発生に関する対処は、迅速な取り組みと多角度から見極めが求められます。
2.人的・時間的・金銭的損失防止
初期対応を見誤ってしまうと労働審判や訴訟を提起されたり、労働基準監督署からの是正勧告・指導がなされるなどの深刻な事態に陥ってしまうこともあります。損失を被ってからでは遅いのです。損失拡大の防止に向けた専門家の見極めが必要です。
3.事前の予防・事後対策に向けた迅速な対応措置
前回、経営者が取組む「残業代請求対策」知恵袋(その1)に掲載いたしましたが、「事前・事後対応予防策」をもって早期かつ適切に対処なさることが望まれます。
労働トラブルに係る状況判断を迅速に行うためには、労働法規及び判例に関する精通者が必要となります。
4.外部専門家への積極的な委託
経営者の皆様からは、業務企画・業績管理・資金繰り等日々の経営問題に精一杯で労働トラブルの防止策立案・検討に時間を割けないというお話をききます。
そのような場合には、外部の専門家に任せたほうが、早期解決への近道となります。
5.企業経営の健全化とコンプライアンス強化
労働問題の解決と防止策の立案整備をしましょう。労務管理体制の基盤強化と企業経営の健全化のみならず、コンプライアンスの強化にも繋がります。
 
 
当事務所では、経営者の方々が抱える各種の労務トラブルに関する悩みをお聞きした上
で、今後の事後防止策を含めてご提案をいたします。お気軽にご相談下さい。
 
 

 

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  パート1 〜 事前予防

           「労働契約書」「就業規則」「従業員指導書」等の書面化及び整備備付
                 将来の裁判での証拠作り
                    将来のトラブルを想定したマニュアルを策定。
                  誰でもアクセスできるようにしておくことで、従業員への意識付けとなる。
  チェック1
 
「名ばかり管理職」になっていませんか。
法律上の意味での「管理職」(「管理監督者」といいます)とはいえない場合、残業代を支払わなければならないと判断される可能性があります。
    
           「名ばかり管理職」と判断されうる事情の一例
                            ・従業員の採用権限がない。
                            ・賃金額が他の従業員と同程度しかない。
                            ・労働時間が管理されている。(遅刻・早退をすると賃
                             金減給の制裁が加えられる、人事考課での不利益な取扱いが
                             される等)
  チェック2
 
「年俸制の場合、残業代が発生しない」と考えていませんか。
    ⇒ 残業代を支払わないと、労働基準法違反になってしまう可能性があります。
     残業代を支払わなくても良いのは、「管理監督者」など一定の場合に限られます。
                 
                                  <就業規則における年俸の規定>
                年俸制を導入するために、就業規則を変更する必要のある場合があります。
              さらに重要なことは、就業規則を変更する際には、工夫が必要だということです。
 
  パート2 〜 事後の適切な対処
            発生した労働トラブルについて、すぐに専門家に相談する。

         ⇒ 裁判で争うべきか

           和解で収めるべきか

           労働働基準監督署からの是正勧告や指導を受けた場合にどう対処するか

           労働審判を起こされされたらどう対処するか

         ⇒ 人手・時間・費用等のロス

           風評被害の恐れ等のリスク

           類似トラブル・損失拡大防止対策等

           さまざまな見地からの検討が必要です

 

詳しくは「残業代請求されないための法的手段」をご覧ください。

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