新宿の顧問弁護士なら弁護士法人岡本(岡本政明法律事務所)

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コラム - 202007のエントリ

1  昨年11月19日、日本経済新聞に「相続財産の算定評価基準 路線価否定判決に波紋」という記事が報道されました。
 相続財産の算定評価基準となる路線価については、以前から大きな関心を持っておりました。本件訴訟の内容が、判例雑誌等に報道されるのを待って本コラムを掲載しようと思っておりました。でも、報道された相続人は控訴されたのでしょう、続報がありません。むしろ、上記新聞では、本年2月29日、「賃貸経営 節税封じ」、その副題として「税制改正 富裕層を監視」なる特集記事が全面に掲載される状況になっております。
 今回のコラムでは、相続税や贈与税の評価基準として、その基本となる「路線価」を巡る争いについてみていきましょう。
 皆さん、国税庁が発表している路線価表を見たことがありますか?皆さんが住んでおられる土地の値段に関して、ある程度知ることができるように地図として表にされているのです。当事務所では、相談に来られた方が、たまたま土地がらみの紛争であるような場合、相談に立ち会っている弁護士の一人が、すぐにその表をパソコン画面に出してくれます。紛争の程度が直ちに分かる訳ですが、本当に重宝しています。

2 早速、冒頭の日経新聞報道内容を引用します。引用するだけで衝撃的です。
 「東京地裁が路線価に基づく相続財産の評価を『不適切』としたのは、2012年6月に94歳で亡くなった男性が購入していた東京都内と川崎市内のマンション計2棟。購入から2年半〜3年半で男性が死亡し、子らの相続人は路線価などから2棟の財産を「約3億3千万円」と評価。銀行などからの借り入れもあったため、相続税額を「ゼロ」として国税側に申告した。だが男性が購入した価格は2棟で計13億8700万円で、路線価の約4倍だった。」という事案です。
 この事案では、国税側は路線価による評価は適当ではないと判断し、相続税の申告漏れとして約3億円の追徴課税の処分を行いました。
 先ず、以前から感じている第一の疑問は、路線価については相続税の評価基準として国税庁が定めるものです。国税庁の定める認定の約4倍が実勢価格という実態を国税庁は把握できていなかったのでしょうか?ここまで差が出る国の評価には何処か問題があるのではないかと疑問を感じるのです。確かに、路線価は土地取引の目安となる公示地価の8割程度とされていますが、ここでは何の問題もない程度でしかありません。しかも国の定める評価を自ら見直しできる通達制度、財産評価基本通達第6項(これが追徴課税処分できる根拠です)にも疑問を感じます。国税庁の評価が時の流れについていけないのなら、逆に、このような制度の見直しもやむを得ないと思ってしまうのは私だけでしょうか。
 もっとも、上記行政庁の認定に対しては、我々は裁判所に上記認定が適正かどうか訴訟することが可能であり、本件追徴課税について争うことができます。国税庁である行政庁の認識を改めることが可能なのですから、弁護士である我々の任務の重要性が認識できます。

3 次に紹介する判例(東京地裁平成19年8月23日付判決 判例タイムズ1264号)は、有名です。争いの内容は、親族から土地である不動産を購入した原告らに対して、時価と比較して「著しく低い価額」で買ったのであるから、時価と本件売買代金との差額は贈与と見做されるという行政庁の認定が下されたのです。「著しく低い価額」で購入した原告にはその差額分に関して贈与税が課されることになります。
 原告らは、本件売買代金額は相続税評価額である路線価方式に基づいて算定した額であり、相続税法上の時価そのものであると主張しました。本件訴訟では相続税法第7条、或は、「著しく低い価額」の判定基準等の争点もありますが、ここでは路線価が、時価と比較して著しく低額なのかどうかについて問題を提起し、訴訟をしたことについて、意味を見出してほしいのです。
 本判決は、負担付贈与通達の適用自体は否定しませんでした。しかしながら、同通達第2項(著しく低い対価で財産の譲渡を受けた場合について規定)に関し、個々の事案に対して当該基準を硬直的に適用するならば、結果として違法な課税処分をもたらすことは十分に考えられるとして、本件の課税処分を取り消したのです。
 原告代理人弁護士は、よく頑張ったと評価されるべき事案です。

4 7月23日、羽鳥慎一モーニングショーで、評判のコメンテーター玉川さんが「世界と比較して、日本でPCR検査が少ないのは、PCR検査に誤診の可能性が多少あって、行政は、それで訴訟になるのが怖いと言っている」と特ダネのように話しておりました。
 すごく良く分かる話なのですが、現在のコロナ騒動のなかで、行政が損害賠償請求訴訟をそれ程恐れる必要はないと思います。
 確かに、医療過誤訴訟もあるでしょうが、緊急事態を招いている現状では、裁判所もPCR検査で陽性だと言われ、それが誤診で損害を受けたと主張する個人を保護するとは思えません。もちろん、重大な過誤があり、受診者に莫大な損害が生じるなど、例外的な場合もあるでしょうから、ここで一刀両断することはできないでしょうが・・。
 しかしながら、我々弁護士も法の安定を祈念して業務を行っております。
 どうか、皆さまも現在の危機的状況を乗り越えるため、PCR検査の拡充をお考え下さい。

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