新宿の顧問弁護士なら弁護士法人岡本(岡本政明法律事務所)
当事務所では、上場企業(東証プライム)からベンチャー企業まで広範囲、かつ、様々な業種の顧問業務をメインとしつつ、様々な事件に対応しております。
コラム - 202005のエントリ
1. 新型コロナウイルス感染症が拡大する中、テレワークを導入する企業も増えていると思います。
テレワークの際に、秘密情報や営業秘密はどのように管理すれば良いのでしょうか。
令和2年5月7日、経済産業省知的財産政策室が、「テレワーク時における秘密情報管理のポイント(Q&A解説)」を公表しておりますので、説明したいと思います。
2. まず、テレワークにおいては、秘密情報を自宅に持ち帰ることが少なくないと思います。
そのため、①社外から会社のサーバーにアクセスしたり、②外部クラウドを利用したり、③従業員の私物パソコンを利用したり、④WEB会議を利用したり、⑤チャットツールを利用したりすること等も考えられますが、それだけで不正競争防止法上の保護を受けられなくなるわけではありません。
もっとも、これまでもいくつかのコラムでご説明差し上げております通り、不正競争防止法で損害賠償請求したり、刑事告訴したりできるようにするためには、日頃から秘密としてしっかり管理している必要があります。
3. テレワークを行うにあたっては、営業秘密管理規程やセキュリティ規程等の社内規程を見直すことが必要です。
例えば、現行の社内規程を見て頂くと、「秘密情報の社外への持ち出し禁止」などと規定されていることが多いと思いますが、このように規定していたのでは、テレワークに支障が生じてしまいます。
そのため、テレワークにあたり、秘密情報とする範囲を決め、必要に応じて社外への持ち出しを認めつつ、持ち出した場合のルールを追加で定める必要があります。
また、上長への承諾を「書面」で得なければならない規定になっている場合には、「書面」だけではなく、「電子メール」等で承諾を得ても良いように規定を変更する必要があります。
さらに、私物端末機器を利用させる際には、私物端末機器マニュアルを作成する必要があります。
当該諸規程については、メールによるリマインドやe-ラーニングの実施等で従業員に周知徹底することが必要です。
4. また、次のような措置を取ることが重要です。
・持ち出しを許可する書類やデータを厳選すること
・適切なアクセス権者の設定をすること
・「㊙」(マル秘)、「社内限り」といった秘密であることの表示を付記すること
・アクセスの際のID・パスワードの設定をすること
・WEB会議においてパスワードを設定すること
・営業秘密に関連する内容を取り扱うスレッドを限定するとともに、当該スレッドに参加できる者を制限すること
・持ち出しにあたって上長等の事前許可を必要とすること
・持ち出しをした者・書類・データ・期間を一覧で管理すること
・持ち出しをした際の管理方法を徹底させる(書類を机上に放置しない、自宅外に持ち出さない等)こと
・従業員による営業秘密へのアクセスやダウンロードのログを保存すること
・データの暗号化による閲覧制限をすること
・業務上の必要がなくなった場合には返却を義務付けること
・不要となったファイルをクラウド上から消去すること
・シュレッダーで裁断するなどの秘密保持に資する安全な方法による廃棄を義務付けること
・データの複製やメールの転送を制限すること
・勤務先貸与端末機器に、承認していないソフトをインストールさせないこと
・私用・家族との共用を許可しないこと
・所定のウイルス対策ソフトのインストールを徹底する等十分なセキュリティ対策を行うこと
・クラウド上にアップロードする際に公開範囲の設定に十分注意すること
・公衆無線LANは使用しないこと
・メール送信する際に上長が常にCCに追加される設定をすること
・遠隔操作によりパソコン内のデータを消去できるツールを利用すること
・一定回数、パスワード認証に失敗すると秘密情報を消去できるツールを利用すること
・社内のパソコンにUSBやスマートフォンを接続できないようにする設定をすること
・パソコンにのぞき見防止フィルム等を貼付すること
・コピー防止用紙やコピーガード付きの記録媒体等を利用すること
・プリントアウトを制限すること
・パソコンのシンクライアント化(最低限の機能しか持たせないようにすること)をすること
5. 上記の全てを行わなければならないというわけではありませんが、会社の実務に合わせて対応して頂くことが重要です。
その他にも、秘密保持に関する規程において、「業務上知り得た一切の情報」などと、営業秘密の内容を包括的に定めているものを見かけることが多くありますが、このような定め方では、従業員にとって何が営業秘密なのか分かりませんので、不正競争防止法上認められない可能性が著しく高まります。
テレワーク時代においては、秘密情報や営業秘密の管理を見直す必要性が極めて高いです。
テレワークをすれば情報漏洩の危険性が高まるにもかかわらず、情報の重要性に変化はないからです。
営業秘密や秘密情報を持ち出されてからでは遅いのです。
当事務所では、多くの会社の営業秘密管理に携わってきていますので、是非ご相談ください。