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コラム - 202004のエントリ

 新型インフルエンザ等対策特別措置法第32条第1項の規定に基づき、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症による緊急事態宣言が出されました。
 緊急事態宣言により、「最低7割、極力8割程度の接触機会の低減を目指す」とされている以上、休業せざるを得なくなっている会社や団体も多いと思います。
 
また、実際に新型コロナウイルス感染者が出てしまった会社も少なくないと思います。このような場合、従業員の給料をどうすれば良いかという相談が多発しております。
 
厚生労働省が出している「新型コロナウイルスに関するQ&A」を参考にしながら、ご説明差し上げます。

2 前提として、労働基準法第26条で、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとされています。
 
どのような場合に「使用者の責めに帰すべき事由」といえるでしょうか。
まず、新型コロナウイルスに感染しており、都道府県知事が行う就業制限により労働者が休業する場合は、一般的には休業手当を支払う必要がないと考えられます。もっとも、概ね、3日を経過した日から、直近12カ月の平均の標準報酬日額の3分の2について、傷病手当金による補償がなされる可能性があります(業務に起因していれば、労災の対象にもなり得ます)。
 
次に、新型コロナウイルスの感染が疑われる場合、「帰国者・接触者相談センター」の相談結果を踏まえ、職務の継続が可能であるにもかかわらず休業させる場合には、休業手当を支払う必要があります。

3 緊急事態宣言や要請・指示を受けて事業を休止する場合はどうでしょうか。
 
まず、不可抗力による休業の場合は、使用者に休業手当の支払義務はありません(大ざっぱに言えば、給料を1円も支払わないということです)。
 
しかし、不可抗力による休業と言えるためには、少なくとも、会社として休業を回避するための具体的努力を最大限尽くしていると言えなければなりません。
 
テレワークが可能かどうか、配転などが可能かどうかについて検討が必要ですし、そのような検討無しで「不可抗力」であると認められることは少ないと思われます。
 
このようなことを考えますと、休業手当を支払わないという結論がやむを得ない場合もあるでしょうが、休業手当を支払った上で、雇用調整助成金を申請する方が得策であることも多いと思います。
 
雇用調整助成金においては、解雇等(雇い止めや派遣労働者の中途解約を含みます)を行わず、雇用を維持する企業に対して、正規雇用・非正規雇用にかかわらず、助成率を中小企業は90%、大企業でも75%に引き上げるといった特例措置も講じられています。

なお、1年間で100日分、1日8330円が上限です。

4 新型コロナウイルスの影響により、タクシー会社が600人を解雇するというニュースが報じられたことは、多くの会社にとって衝撃的だったと思います。
 
当該タクシー会社の具体的状況については不明であり、失業手当の方が従業員にとって有利なため選択したと報じられていますが、一般的には、整理解雇の場合、人員整理の必要性以外に、解雇を回避するための努力を尽くしていること、対象者選定が合理的であること、手続が合理的であることを満たしている必要があり、簡単に認められるものではありません。
 
仮に紛争になってしまえば、厳しい争いが待っているばかりか、解雇をしてしまえば雇用調整助成金の助成率も下がりますから、従業員の大半を解雇するような思い切った方法が正しいかどうかは慎重に検討する必要があります。

 緊急事態宣言がなされるような未曽有の状況において、非常事態に陥っている会社も多いと思います。
 
そのような中、会社にとって最良の選択をするためには、正しい法的知識に基づいた判断をすることが必要です。
 
非常に悩ましい選択だと思いますので、心配な方は当事務所にご相談いただけると幸いです。
 
なお、派遣に関する問題も非常に多く生じていますが、労働者派遣契約書の内容にもよりますので、こちらについてもご相談ください。

       以 上

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新型コロナウイルスの影響で売り上げが著しく落ちているという事業者の方もいらっしゃると思います。

そこで、本コラムでは、日本政策金融公庫で行っている「新型コロナウイルス感染症特別貸付」をご紹介します(令和2年4月6日現在)。

 概ね、以下のような内容です。
・当初3年間は、利子補給で金利負担が 実質的に無利子となります。
・最長15年の運転資金を調達できます。
・最長5年、当面元本返済が不要です。
・リスケを行っていても諦める必要はありません。
 
対象は、
新型コロナウイルス感染症の影響を受けて一時的な業況悪化を来たし、次の①または②のいずれかに該当する方です。
 ①最近1ヶ月の売上高が前年又は前々年の同期と比較して5%以上減少した方 
 ②業歴3ヶ月以上1年1ヶ月未満の場合等は、最近1ヶ月の売上高が、次のいずれかと比較して5%以上減少している方 
  a  過去3ヶ月(最近1ヶ月を含む。)の平均売上高 
  b  令和元年12月の売上高
  c  令和元年10月~12月の売上高平均額  
    
 新型コロナウイルスで、経営状況が悪化している方、事業再生に向けた相談を行いたい方、破産も含めて検討している方は、初回相談料無料ですので、気軽に当事務所にご相談ください。
(新型コロナウイルスに関するご相談であれば、給料をどうすればよいか、家賃をどうすればよいかというようなご相談も初回相談料無料です。)

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 1 新型コロナウイルス(COVID-19)の最中ではありますが、同一労働同一賃金(同一企業・団体における正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消を目指す制度)が導入されました。
 パートタイムと有期雇用については、大企業は2020年4月1日から、中小企業は2021年4月1日から適用されます。
 また、中小企業であっても、派遣については2020年4月1日から適用されますので、今すぐに対応する必要があります。

2 ここでいう「中小企業」とは、①小売業と②サービス業については資本金5000万円以下、③卸売業については資本金1億円以下、④その他の業種(製造業、建設業、運輸業など)については資本金3億円以下の会社です。
 また、①小売業については常時使用する労働者数(パート・アルバイトも含む)が50人以下、②サービス業と③卸売業については100人以下、④その他(製造業、建設業、運輸業など)については300人以下なら「中小企業」です。

3 では、具体的に「同一労働同一賃金」とはどのような制度でしょうか。
 第一に、労働者の能力又は経験に応じて支給する基本給については、 正社員(正確ではありませんが、本コラムでは分かりやすいよう、このように呼ばせてください。)と同一の能力又は経験を有する者には、同一の基本給を支給しないといけません。
のため、正社員が過去に多くの経験を有していたとしても、現在の業務に関して同じ経験を有している有期雇用者よりも高い基本給を支払うことは、問題になり得ます。
 他方で、正社員が特殊なキャリアコースを選択し、その結果として高い基本給となっている場合は、問題にならない可能性があります。
 第二に、労働者の業績又は成果に応じて支給する基本給について、正社員と同一の業績又は成果を有する短時間・有期雇用労働者には、業績又は成果に応じた部分につき、正社員と同一の基本給を支給しなければなりません。
 正社員が販売目標を達成した場合に行っている支給を、パート・アルバイトについて正社員と同一の販売目標を設定し、それを達成しない場合には支給しない、という取り扱いは問題になります。
 他方で、所定労働時間が半分なので、半分の目標数値に達すれば、正社員の半分の基本給を支給する、という取り扱いは問題にならない可能性があります。
 第三に、労働者の勤続年数に応じて支給する基本給について、正社員と同一の勤続年数である短時間・有期雇用労働者には、勤続年数に応じた部分につき、正社員と同一の基本給を支給しなければなりません。更新している場合、当初の契約開始日から勤続年数を数える必要があります。
 昇給についても、同様に考えられます。

4 定年に達した後に継続雇用された有期雇用労働者についても、短時間・有期雇用労働法の適用を受けることになります。
 もっとも、正社員と定年に達した後に継続雇用された有期雇用労働者との間の賃金の相違については、職務内容、配置の変更、その他の事情の相違がある場合は、その相違に応じた賃金の相違は許容されることになります。

5 労働者の貢献に応じて支給する賞与について、正社員と同一の貢献である短時間・有期雇用労働者には、貢献に応じた部分につき、正社員と同一の賞与を支給しなければなりません。
 同じ貢献をしているにもかかわらず、パートやアルバイトに賞与を支給しないということは問題になります。
 他方で、生産効率及び品質の目標値に対する責任を負っており、待遇上の不利益を課される可能性のある正社員との比較では、パート・アルバイトに賞与を支給しないということも考えられます。

6 役職の内容に対して支給する役職手当についても、同一の内容の役職に就く短時間・有期雇用労働者には、同一の役職手当を支給しなければなりません(所定労働時間に比例した役職手当にすることは可能です)。
 ①業務の危険度又は作業環境に応じて支給される特殊作業手当、②交替制勤務等の勤務形態に応じて支給される特殊勤務手当、③精勤手当や皆勤手当、④時間外手当、深夜手当、休日手当、⑤通勤手当、出張旅費、⑥労働時間の途中に食事のための休憩時間がある労働者に対する食費の負担補助として支給される食事手当、⑦単身赴任手当、⑧地域手当も同一の手当を支給しなければなりません。
 もっとも、考課上、欠勤の場合にマイナス査定を行わないパート・アルバイトに精勤手当や皆勤手当てを支払われないことは許される場合もあります。
 また、通勤手当についても、パート・アルバイトに対して、常に月額の定期券の金額を支給しなければならないわけではありません。
 さらに、転勤がある正社員とそれぞれの地域で採用しているパート・アルバイトとの間で地域手当の額が変わる場合も考えられます。

7 福利厚生施設(給食施設、休憩室及び更衣室)は同一の利用を認めなければなりません。
 社宅については、正社員と同一の支給要件(例えば、転勤の有無、扶養家族の有無、住宅の賃貸又は収入の額)を満たす場合には、同一の利用を認めなければなりません。
 慶弔休暇、健康診断の際の給与の保障の有無についても、同一にしなければなりません(慶弔休暇に関し、週2日のパートに対して、原則として、勤務日の振替で対応することは可能です)。
 病気休職の取得も同一にしなければなりません。
 長期勤続者を対象とするリフレッシュ休暇についても、同期間の長期勤続者であれば、パートやアルバイトであってもリフレッシュ休暇を取得させなければなりません(所定労働時間に比例した日数にすることは可能です)。
 現在の職務の遂行に必要な技能又は知識を習得するために実施する教育訓練について、正社員と職務の内容が同一であるパート・アルバイトには、正社員と同一の教育訓練を実施しなければなりません。

8 これらのことは、派遣にも当てはまりますので、派遣元事業主は、派遣労働者の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する派遣先に雇用される正社員の待遇との間において、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならないこととされています。
 例えば、派遣元事業主は、派遣先の正社員と同一の貢献である派遣労働者には、貢献に応じた部分につき、同一の賞与を支給したり、昇給したりしなければなりません。

9 以上のことから分かります通り、会社の賃金制度について、目的や趣旨をしっかり検討せずに運用してしまっていると、法令違反となってしまい、問題になったときには多額の損害賠償を取られてしまうことになりかねません。
 その場合、コンプライアンス違反のブラック企業という誹りを受けるばかりか、想定していなかった高額の人件費を支出しなければならなくなってしまいます。
 特に中小企業の方は、殆どの場合、無防備な賃金制度になっており、問題となった場合にはかなりの損害を被ることも考えられます。
 そのようなことのないよう、事前に弁護士と相談しながら賃金制度の見直し(就業規則や賃金規定の制定又は改程)をすることが必要不可欠ですので、早めに当事務所にご相談ください。

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