新宿の顧問弁護士なら弁護士法人岡本(岡本政明法律事務所)
当事務所では、上場企業(東証プライム)からベンチャー企業まで広範囲、かつ、様々な業種の顧問業務をメインとしつつ、様々な事件に対応しております。
コラム - 202003のエントリ
1 新型コロナウイルスの感染対策として、テレワーク(リモートワーク)の導入が推進されています。テレワークを実施した労働者が1人以上いる場合には、①テレワーク用通信機器の導入・運用、②就業規則・労使協定等の作成・変更等に対し、上限100万円(補助率2分の1)の助成金を受けられる制度も始まっています。
2 テレワークの形態には、概ね、①在宅勤務、②サテライトオフィス勤務、③モバイル勤務があります。 まず、テレワークにも労働基準法が適用されますので、テレワークを導入する際には、雇用契約における就業場所としてテレワークを行う場所を明示しなければなりません。(モバイル勤務の場合は、就業場所についての許可基準を示した上で、「使用者が許可する場所」といった形で明示することも可能です。) テレワークの実施とあわせて、始業及び終業時刻の変更等を行うことを可能とする場合は、就業規則に記載するとともに、その旨を明示しなければなりません。
3 テレワークの場合も、使用者自ら、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を確認し、適正に記録することが原則です。例外として、労働者の自己申告制による場合であっても、自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をする等の措置を講じなければなりません。
4 テレワークで生じやすい問題点として、「中抜け時間」がありますが、 労働者が労働から離れ、自由に利用することが保障されている場合には、休憩時間や時間単位の年次有給休暇として取り扱うことが可能です。一部の勤務時間だけでテレワークを行っている場合の移動時間については、使用者の指揮命令下に置かれている時間であるか否かにより、労働時間になるか、休憩時間になるかが変わります。テレワークを行う労働者についても、労使協定により、休憩時間の一斉付与の原則の適用除外とすることが可能です。
5 ①情報通信機器を通じた使用者の指示に即応する義務がない状態で、②随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていない場合(業務の目的、目標、期限等の基本的事項を指示することは除く)には、労働基準法第38条の2で規定する事業場外労働のみなし労働時間制を適用することも可能です。
6 時間外労働については、事前申告し使用者の許可を得なければならず、かつ、その実績を事後報告しなければならないという就業規則等になっているにもかかわらず、労働者から事前申告がなかった場合又は事前申告内容が許可されなかった上に、労働者から事後報告がなかった場合で、一定の要件に該当する場合、当該労働者の時間外等の労働は、使用者のいかなる関与もなしに行われたものであると評価できるため、労働基準法上の労働時間に該当しません。もっとも、使用者が時間外等の労働を知り得なかったことや上限時間が設けられていないこと等が要件なので、注意が必要です。
7 長時間労働対策として、①時間外、休日又は深夜におけるメールを送付することの自粛を命ずること、②外部のパソコン等から深夜・休日はアクセスできないよう設定すること、③時間外・休日・深夜労働を原則禁止とすること又は使用者等による許可制とすること、④長時間労働が生じるおそれのある労働者や、休日・深夜労働が生じた労働者に対して、労働時間の記録や、労務管理システムを活用して注意喚起を行うことなどの措置を図ることが必要です。
8 テレワークに要する通信費等の費用について、労使のどちらが負担するか、また、使用者が負担する場合の限度額等については、就業規則等において定めておくことが必要です。
9 以上の通り、新型コロナウイルスの感染対策として、テレワークを導入する方法と注意点を説明いたしました。新型コロナウイルス問題がいつまで続くか分からない中、テレワークの導入は非常に重要な選択肢の一つですが、テレワークに潜む法的な問題点が多数存在することも事実です。テレワークを導入する際には、就業規則等の変更が必要になると思いますので、当事務所にご相談頂いた方が良いと思います。紛争が生じてしまった後では遅い場合も多いので、早急にご相談いただいた方が良いと思います。 以 上
1 新型コロナウイルスの影響で売り上げが大きく落ちており破産を考えているという事業者の方も多いと思います。
もっとも、まずは、どうやってこの緊急事態を乗り越えるかを検討して頂きたいと考えておりますので、現時点で国から公表されている支援策を簡単にご説明したいと思います。
2 まず、新型コロナウイルス感染症により影響を受けている中小企業者への資金繰り支援措置として、セーフティネット保証4号、5号、危機関連保証が発動されております。
この措置により、新型コロナウイルス感染症により影響を受けた中小企業者について、一般保証と別枠の保証が利用可能となりました。
例えば、セーフティネット保証4号とは、1年間以上継続して事業を行っており、売上高が前年同月比20%以上減少等の場合、中小企業・小規模事業者の資金繰り支援措置として、一般保証とは別枠で融資額の100%を保証する制度です。
また、創業1年未満の事業者等であって、新型コロナウイルス感染症の影響により、経営の安定に支障をきたしている創業者等も利用できるように、認定基準について運用の緩和がされています。
例えば、危機関連保証とは、最近1か月間の売上高等が前年同月比で15%以上減少等の場合、信用保証協会が通常の保証限度額とは別枠で借入債務の100%を保証する制度です。
セーフティネット保証5号とは、3か月間の売上高等が前年同期比で5%以上減少等の場合、信用保証協会が通常の保証限度額とは別枠で80%保証を行う制度です。
3 また、新型コロナウイルス感染症特別貸付があります。
これは、新型コロナウイルス感染症による影響を受け最近1ヶ月の売上高が前年又は前々年の同期と比較して5%以上減少等の場合、日本政策金融公庫等が、信用力や担保に依らず一律金利とし、融資後の3年間まで0.9%の金利引き下げを実施する制度です。
さらに、特別利子補給制度があります。
これは、「新型コロナウイルス感染症特別貸付」により借入を行った中小企業者のうち、
①個人事業主(フリーランス含み、小規模に限る):要件なし
②小規模事業者(法人事業者):売上高15%減少
③中小企業者(上記①②を除く事業者):売上高20%減少
に対して、利子補給(利子に相当する金額を給付すること)を行う制度です。
これらを併用することで、実質的に無利子・無担保の貸付けとなります。
4 上記でご紹介差し上げた支援策は、令和2年3月13日時点のものですが、今後も拡充する可能性がありますので、詳細は経済産業省のホームページをご覧ください。
https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf
重要なことは、コロナウイルスで売り上げが落ち込んだとしても、様々な観点から経営の立て直しを検討して頂くことだと思います。
場合によっては、破産も含めて検討しなければならなくなる可能性もありますが、当事務所は、事業再生・破産ともに得意としておりますので、早めにご相談ください。
一. これまでも複数のコラムの中でお話ししている通り、当事務所は、営業秘密や機密情報を持ち出されたり、顧客を奪われたりする等の競業行為をされた場合に交渉、訴訟や刑事告訴などを行い、多数の成果を挙げています。
また、平成31(2019)年1月23日、経済産業省が営業秘密管理指針を改定した際には、当事務所が勝訴した判決が「参考裁判例」として掲載されています。
このことは、いかに当事務所が、営業秘密の持ち出しや情報漏洩・情報流出、競業行為などの不正競争に関し、豊富な経験があり、得意としているかを表していると言えます。
当事務所は、依頼者のために手間を惜しみません。
二. 終身雇用制が限界を迎え、雇用が流動化し、従業員や役員(取締役・監査役)の転職などが一般的になりつつある中、情報漏洩や競業行為に関し、当事務所にご相談いただいている案件数も増えております。
近時の裁判例をご紹介しますので、退職した元従業員や取締役等への対応の参考にして頂き、当事務所にご相談ください。
近時、社会的に営業秘密漏洩が問題視されていることから、情報が重要であり、元従業員が秘密として管理されていることを認識していた場合には、アクセス制限が不十分であること等の事実があったとしても、損害賠償請求が認められている裁判例が少なくありません。
損害賠償請求事件 平成29年9月20日東京地裁判決 |
295万8300円 |
専務取締役として書店システム部門を統括する立場にあったこと、月額賃金100万円とする雇用契約を締結していること等を理由に競業避止義務を定める就業規則を有効とした。 元従業員が、ブログやサイトで上司によるパワハラ、退職勧奨の名目での解雇、解雇予告手当や退職金の不支給があったことを記載したことが信用毀損と判断され、架空の売り上げを計上したことが善管注意義務違反と判断された。 |
損害賠償等請求 平成29年10月19日大阪地裁判決 |
500万円 使用・開示の差止め 複製物の廃棄 |
客観的にアクセス制限の措置が講じられていたこと、誓約書を提出させていたこと、秘匿の必要が高い情報であること、消去データの復元・解析が困難となるような方法で消去していること等から、営業秘密であると認めた。 パスワードが設定されておらず、複製・保存することが自由であったとしても、元従業員が当然に秘密として管理されていることを認識していれば足りると判断した。 |
損害請求等 平成29年10月27日東京地裁判決 |
2694万1631円 |
防犯カメラシステム事業の責任者であり、元請2社から下請業務を受注すべく、元請2社との打合せや下請業務の準備を行ってきていた以上、雇用者の営業上の利益に反する競業行為を差し控えるべき競業避止義務等を負っていた。 それにもかかわらず、元請2社と交渉を行い、元請2社と被告会社との下請契約を成立させたことが不法行為であると判断され、逸失利益が損害賠償請求として認められた。 |
差止請求等 平成30年1月19日東京地裁判決 |
販売行為、販売行為を行う法人に対する事業資金提供行為、支払保証行為及び取引先の紹介行為の差止め |
営業秘密であるとは認められなかったものの、取締役として営業を中心的に担っており、取り扱う製品の商流や取引先等も熟知していたこと、本件交渉の過程においては、競合する会社の設立をしないことを申し出たこと、合意書に違反することを認識しながら競業をしたこと等を理由に、競業避止義務に関する合意書の有効性及び差止請求権を認めた。 |
損害賠償請求事件 平成30年3月5日大阪地裁判決 |
①318万6491円 ②174万円 ③46万円 ④52万円 |
本部において顧客情報を一元化してデータ管理しており、就業規則において顧客情報の開示等を禁止することに加え、退職従業員に対しても、顧客情報を漏えいしないことを誓約させるなど、規範的に管理していること、従業員らにとっても、それが秘密管理の対象とされるべきものであることは容易に理解し得ること、情報として重要であること、小規模の事業所なのでアクセス制限がなされていなかったとしても秘密でない扱いとは言えないこと等を理由に営業秘密として認め、被告の得た粗利益、違約金、弁護士費用等を損害として認めた。 |
損害賠償請求事件 平成30年 3月15日大阪地裁判決 |
①70万1250円 ②28万5050円 |
被告が元代表取締役であったこと、元代表取締役として、顧客情報が記録されたファイルにパスワードを設定する措置を自ら採っていたこと、業務受託者との契約書の中で、原告の企業秘密の漏洩を禁じていること、企業秘密の中には有用性と非公知性を有する顧客情報を含むことを想定していたと推認されること、誓約書を作成していること等から営業秘密として認めた。 |
損害賠償請求等事件 平成30年3月26日知財高裁判決 |
169万9467円 製造・販売の差止め |
就業規則で秘密保持義務を課し、情報セキュリティ教育を実施し、本件情報をいずれも秘密と指定し、社内ファイルサーバ内のフォルダにアクセスできる従業員を限定してること等から営業秘密として認めた。 アクセス権限のない従業員がアクセス可能な従業員からデータをプリントアウトしてもらうといった運用が業務上の必要に応じて行われることがあったとしても、これをもって秘密管理措置が形骸化されたとはいえないと判断した。 |
損害賠償請求 平成30年3月28日東京地裁判決 |
5471万3160円 |
プロバイダー事業等を目的とする株式会社である原告が、原告の元取締役兼営業本部長である被告において、原告の営業秘密に当たる顧客情報を不正に入手して競合他社に売却したと主張して請求した事案である。 顧客から多数の解約申出を受ける状態にあったこと、当時、被告は未だ逮捕されておらず他の競合他社に重ねて顧客情報を売却することが可能な状態にあったこと、プロバイダー事業に致命的な悪影響を与えるおそれがあったこと、総務省から漏えいした可能性がある顧客全員に対応するよう口頭で指示されたこと等から、顧客対応費用等の損害賠償を認めた。 |
以上