新宿の顧問弁護士なら弁護士法人岡本(岡本政明法律事務所)
当事務所では、上場企業(東証プライム)からベンチャー企業まで広範囲、かつ、様々な業種の顧問業務をメインとしつつ、様々な事件に対応しております。
コラム - 202002のエントリ
1 息子の配偶者は、息子の老父母の相続人ではありません。このような立場の配偶者が、老父母を長年介護してきた事例は、本当に多いのです。でも、かかる配偶者に、財産的メリットはないに等しかったのです。良く紹介される先例として、平成22年9月13日付東京高裁決定がありますが、それによりますと、上記配偶者の貢献を相続人である息子の寄与分、つまり息子の手足として構成し、評価したものはありました。つまり、相続人でない者の寄与に対する財産的な評価を、正面から認めたものではありませんでした。
今回の民法改正では、上記のような場合に、介護をしてきた配偶者に対し、特別寄与分として「相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭の支払いを請求することができる」として認め、改正を行ったのです。なんと民法最後の条文である「第十章 第1050条」に規定をおいたのです。従来の寄与分規定は、民法第904条の2で規定しておりましたが、本条文は、相続人にのみ適用される条項でした。
でも私は、今回の改正に満足しておりません。私が扱ってきた事例を紹介しつつ、相続事件が如何に難しい案件であるのか、再度見直してみましょう。
2 寄与行為の類型についても、上記のような療養看護型以外に、家事従事型、金銭等出資型、扶養型、財産管理型など多様な類型を列挙する解説書もあります。
平成の初め頃、特別寄与分の事件に関しては、多くの弁護士が避けていたように思います。家族の事件であることは明白であり、相続に直結しているのですが、相続事件に付随して発生する感情論争が強すぎ、嫌がられていたのでしょう。また法律構成も難しく、裁判所を納得させる法理論も“生煮え状態”であったため、嫌がられる先生もいらっしゃったのでしょう。
実は、私は、新しい弁護士会館ができた頃、弁護士会が運営する法律相談業務の責任者の立場にありました。その関係で、この種類の事件に多く関与することができました。当時、他の弁護士会と相談しながら、現在の弁護士会における法律相談業務を構築しておりました。多くの弁護士が嫌がられる事件管理もしておりました。
でもこの種類の事件に関与すると、逆に燃えるのです。依頼者の怒りが伝わってきて、何とかならないかと思うようになってくるのです。
そのような頃、弁護士会の運営で、新宿三丁目に家庭法律相談を主とする相談業務を始めました。当時、法律相談運営委員会委員長であった私は、「追分団子の店」の上にあるこのビルを下見して、法律相談所に決めました。しかし、時代の流れの中で、お客様が減少し、費用を節約するため、今年の2月、新宿の歌舞伎町に引っ越ししました。「危ない場所」と噂される歌舞伎町に、相談者が安心して来ていただけるのか、心配です。
3 特別寄与分が問題になる事件の典型例ですが、相続人と結婚した配偶者による、20年にも近い間の、長年の老父母の介護事件がありました。老父母の死に涙にくれる相続人夫婦に対して、逆に、徹底して面倒を看ることを避けてきた兄弟から自宅の相続権を主張されました。現金・預金は介護で使い果たし、めぼしい相続財産は広めの自宅だけでした。昭和の時代ですから、介護施設も今ほどなく、自宅で死を迎える時代でした。近時、寿命が延びたとよく言われますが、同時に、介護期間も増大したのでしょう。介護の苦労を聞かされれば、皆さま、何とか報いてあげたいと思われて当然です。でも家庭裁判所の遺産分割調停は冷たかった。
平成の時代になって、配偶者である相続人が生存している限り(先に息子が死んだらだめです)相続人の寄与と一体のものと構成するとか、相続人の履行補助者の行為として法律構成する裁判例がみられるようになりました。これは既に紹介しておりますが、実は、論理のすり替えです。しかも、その際に認められた金額を知ると絶望的になります。家庭裁判所は、業者の介護報酬基準を前提として計算式を作っているのです。つまり、介護や看護をする専門業者の金額に日数をかけて計算するのですが、裁量割合としてその業者の0.5から0.8の割合しか認められません。争いになっている相続事件と比較すると嫌になってくるような金額です。
今回の改正でも、この基準で認定されますから、冒頭で、私は不満を申し上げました。
4 介護だけが寄与分でなく、種々の事例があることも触れましたね。
山林をたくさん有しておられる被相続人で、相続人である娘さんのご主人の寄与分に関する相続事件も経験しました。娘さんのご主人が、無報酬に近い形で、最初はお父さんと一緒に、お父さんの体が弱ってからは10年以上、一人で毎日山に入って樹木の管理をされ、山林を維持されました。私は、それまで山の管理がどれだけ大変であるのか知りませんでした。昭和の時代の事件ですが、妻の夫の貢献によって山林の価値が維持され、莫大な相続財産が事件の対象になりました。しかし、今回の改正で、莫大な相続財産の維持がなされたことに関して、どの程度寄与分として評価できるのでしょうか?今回の法改正でも、介護の寄与分が驚くほど低いのですから、相続財産の維持にここまで貢献したとしても、残念な結果が予想されてしまうのです。
質問です。上記対策は何でしょうか?(私のコラムを愛読されている方には簡単な質問かもしれません。)
私は、遺言書の作成ではないかと考えております。
今回の民法改正では、上記のような場合に、介護をしてきた配偶者に対し、特別寄与分として「相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭の支払いを請求することができる」として認め、改正を行ったのです。なんと民法最後の条文である「第十章 第1050条」に規定をおいたのです。従来の寄与分規定は、民法第904条の2で規定しておりましたが、本条文は、相続人にのみ適用される条項でした。
でも私は、今回の改正に満足しておりません。私が扱ってきた事例を紹介しつつ、相続事件が如何に難しい案件であるのか、再度見直してみましょう。
2 寄与行為の類型についても、上記のような療養看護型以外に、家事従事型、金銭等出資型、扶養型、財産管理型など多様な類型を列挙する解説書もあります。
平成の初め頃、特別寄与分の事件に関しては、多くの弁護士が避けていたように思います。家族の事件であることは明白であり、相続に直結しているのですが、相続事件に付随して発生する感情論争が強すぎ、嫌がられていたのでしょう。また法律構成も難しく、裁判所を納得させる法理論も“生煮え状態”であったため、嫌がられる先生もいらっしゃったのでしょう。
実は、私は、新しい弁護士会館ができた頃、弁護士会が運営する法律相談業務の責任者の立場にありました。その関係で、この種類の事件に多く関与することができました。当時、他の弁護士会と相談しながら、現在の弁護士会における法律相談業務を構築しておりました。多くの弁護士が嫌がられる事件管理もしておりました。
でもこの種類の事件に関与すると、逆に燃えるのです。依頼者の怒りが伝わってきて、何とかならないかと思うようになってくるのです。
そのような頃、弁護士会の運営で、新宿三丁目に家庭法律相談を主とする相談業務を始めました。当時、法律相談運営委員会委員長であった私は、「追分団子の店」の上にあるこのビルを下見して、法律相談所に決めました。しかし、時代の流れの中で、お客様が減少し、費用を節約するため、今年の2月、新宿の歌舞伎町に引っ越ししました。「危ない場所」と噂される歌舞伎町に、相談者が安心して来ていただけるのか、心配です。
3 特別寄与分が問題になる事件の典型例ですが、相続人と結婚した配偶者による、20年にも近い間の、長年の老父母の介護事件がありました。老父母の死に涙にくれる相続人夫婦に対して、逆に、徹底して面倒を看ることを避けてきた兄弟から自宅の相続権を主張されました。現金・預金は介護で使い果たし、めぼしい相続財産は広めの自宅だけでした。昭和の時代ですから、介護施設も今ほどなく、自宅で死を迎える時代でした。近時、寿命が延びたとよく言われますが、同時に、介護期間も増大したのでしょう。介護の苦労を聞かされれば、皆さま、何とか報いてあげたいと思われて当然です。でも家庭裁判所の遺産分割調停は冷たかった。
平成の時代になって、配偶者である相続人が生存している限り(先に息子が死んだらだめです)相続人の寄与と一体のものと構成するとか、相続人の履行補助者の行為として法律構成する裁判例がみられるようになりました。これは既に紹介しておりますが、実は、論理のすり替えです。しかも、その際に認められた金額を知ると絶望的になります。家庭裁判所は、業者の介護報酬基準を前提として計算式を作っているのです。つまり、介護や看護をする専門業者の金額に日数をかけて計算するのですが、裁量割合としてその業者の0.5から0.8の割合しか認められません。争いになっている相続事件と比較すると嫌になってくるような金額です。
今回の改正でも、この基準で認定されますから、冒頭で、私は不満を申し上げました。
4 介護だけが寄与分でなく、種々の事例があることも触れましたね。
山林をたくさん有しておられる被相続人で、相続人である娘さんのご主人の寄与分に関する相続事件も経験しました。娘さんのご主人が、無報酬に近い形で、最初はお父さんと一緒に、お父さんの体が弱ってからは10年以上、一人で毎日山に入って樹木の管理をされ、山林を維持されました。私は、それまで山の管理がどれだけ大変であるのか知りませんでした。昭和の時代の事件ですが、妻の夫の貢献によって山林の価値が維持され、莫大な相続財産が事件の対象になりました。しかし、今回の改正で、莫大な相続財産の維持がなされたことに関して、どの程度寄与分として評価できるのでしょうか?今回の法改正でも、介護の寄与分が驚くほど低いのですから、相続財産の維持にここまで貢献したとしても、残念な結果が予想されてしまうのです。
質問です。上記対策は何でしょうか?(私のコラムを愛読されている方には簡単な質問かもしれません。)
私は、遺言書の作成ではないかと考えております。