新宿の顧問弁護士なら弁護士法人岡本(岡本政明法律事務所)
当事務所では、上場企業(東証プライム)からベンチャー企業まで広範囲、かつ、様々な業種の顧問業務をメインとしつつ、様々な事件に対応しております。
コラム - 202001のエントリ
一. これまでもいくつかのコラムの中でお話ししている通り、当事務所は、営業秘密の持ち出しや情報漏洩・情報流出などの不正競争行為に関して交渉、訴訟や刑事告訴などを行い、多数の成果を挙げています。また、平成31(2019)年1月23日、経済産業省が営業秘密管理指針を改定した際には、当事務所が勝訴した判決が「参考裁判例」として掲載されています。
このことは、いかに当事務所が、営業秘密の持ち出しや情報漏洩・情報流出、競業行為などの不正競争に関し、豊富な経験があり、得意としているかを表していると言えます。
当事務所は、依頼者のために手間を惜しみません。
二. 従業員や役員(取締役・監査役)の転職などが一般的になっている中、当事務所にご相談いただいている案件数も増えておりますが、裁判所がどのような事案でどのような判断を下しているのかを知り、有利になるように裁判例を使いこなすことこそが良い結論を導き出す要因の一つだと思いますので、近時の裁判例をご紹介します。
刑事事件になっている事案が少なくないことも理解して頂けると思います。
刑事事件 平成29年3月21日東京高裁判決 |
懲役2年6月 300万円 |
顧客情報等が記録されたサーバコンピュータにアクセスし、営業秘密である顧客情報をダウンロードして、パーソナルコンピュータにUSBケーブルで接続した自己所有のスマートフォンの内蔵メモリ又はマイクロSDカードに複製させる方法により、顧客情報合計約2989万件を領得し、一部を名簿業者に開示したことを理由に有罪・実刑判決を下した。 |
差し止め請求 平成28年4月27日東京地裁判決 |
電子データの使用差止め 電子データを使用した図面の廃棄 |
データ利用の際には、所定の利用登録を受ける必要があったこと、サーバに蓄積されているデータを個別又は一括してダウンロードし、記録媒体に保存する権限を与えられているのは、技術部門の一部の従業員に限られていたことなどを理由に営業秘密として認めた。また、ほぼ全ての設計データをダウンロードした行為について、退職後に設立する予定であった新会社での設計業務に用いるために行ったものと認め、不正競争防止法に基づく差止めを認めた。 |
損害請求等 平成28年4月27日知財高裁判決 |
304万9890円など |
ソースコードに関し、開発を担当するプログラマの使用するパソコンにはパスワードの設定がされ、完成したプログラムのソースコードを研究開発部のネットワーク共有フォルダに保管し、パスワード管理した上で,アクセス権者を限定するとともに、従業員に対し、上記管理体制を周知し、不正利用した場合にはフォルダへのアクセスの履歴(ログ)が残るので、どのパソコンからアクセスしたかを特定可能である旨注意喚起するなどしていたこと等を理由として、営業秘密であるソースコードを退職後も廃棄せずに保有して利用した元従業員の行為に関し、不正競争防止法に基づく損害賠償を認めた。 |
損害賠償請求等 平成28年6月23日大阪地裁判決 |
① ①788万0466円 ②434万7000円 など |
顧客別の売上情報及び顧客別の平均販売価率情報は、従業員しか閲覧することのできない社内ネットで管理されており、閲覧できる範囲についても従業員の所属部署、地位に応じて定められていて、従業員においてもそのような情報保護の規程があることを認識することができたこと、営業情報保護手順書が定められていたこと等を理由に営業秘密として認め、転職後、原告の顧客を主たる対象として営業活動をしていた行為について不正競争防止法違反を認めた。 |
刑事事件 平成28年7月19日名古屋地裁判決 |
懲役1年6月 罰金150万円 |
営業秘密である顧客情報の持ち出しを禁止する誓約書等があったにもかかわらず、住宅ローン借入申込書を複写するなどした上で、第三者に開示した行為について、有罪とし、実刑判決を下した。 |
刑事事件 平成30年12月3日最高裁決定 |
懲役1年 執行猶予3年 |
サーバーコンピュータに保存された営業秘密であるデータファイルへのアクセス権限を付与されていた従業員が、同社を退職して同業他社へ転職する直前に、同データファイルを私物のハードディスクに複製したことについて不正の利益を得る目的があったと認め、有罪とした。 |
損害賠償 平成29年1月26日東京地裁判決 |
420万円 |
不正競争防止法に基づく差し止めは認められなかったものの、プログラム開発に関する情報が営業秘密であるにもかかわらず、事務所外に持ち出したことについて不法行為に基づく損害賠償を認めた。従業員は、自宅で仕事を行うために情報を持ち帰ったと主張したものの、明示的な許可がなかったために退けられた。 |
損害賠償 平成29年1月26日東京地裁判決 |
①498万2795円 ②658万2795円 ③598万2795円 |
元代表取締役でありながら、事業の継続に不可欠な場所及び物品を失わせたこと等を理由に任務懈怠(取締役責任)を認めた。 また、事業主体や顧客との取引関係が変更されたという書簡を顧客に出した行為について、虚偽の事実に基づき競業会社の営業上の信用を害する行為であるとして、不正競争防止法(15号)に基づく損害賠償が認められた。 |
損害賠償請求事件 平成29年5月29日京都地裁判決 |
1587万2000円 |
原告との間に競業禁止約束を含む退職合意書を作成し、同合意書の規定ないし義務を遵守することを条件として極めて好条件の早期退職割増金の支給を受けたにもかかわらず(十分な代償措置であると認めた)、競業会社に採用されたことを告知しなかった行為が不作為の詐欺であると認めた。 |
損害賠償 平成29年9月13日知財高裁判決 |
600万円 |
パチスロ等に係るソフトウェアの開発業務を開発責任者又はプログラマーとして行う立場の者が、担当業務に関する何らの引継ぎもしないまま突然失踪し、以後、業務を全く行わず、何らの連絡もしなかったことについて、債務不履行に基づく損害賠償を認めた。 また、営業秘密を取り扱う立場の者であることを前提に、基本契約期間中及びその終了後12か月程度の期間につき、本件機密保持契約上の義務に加え、被控訴人が控訴人と同種の業務を行うことを禁止する旨の約定をすることは、それが被控訴人の職業選択の自由又は営業の自由を制限するものであることを考慮しても十分合理性のあるものであるとして競業避止条項の有効性を認め、損害賠償請求を認めた。 |
以 上