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コラム - 201810のエントリ
書評「ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来」著者ユヴァル・ノア・ハラリ(河出書房新社)/書評「テクノロジーの世紀」(朝日新聞GLOVE10月7日号)/書評「オリジン」著者ダン・ブラウン(角川書店
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- 書評
- 毎日、AI(人工知能)に関する報道が絶えません。自動運転などを目指す次世代の車に関し、トヨタ自動車とソフトバンクが新会社を創設し、豊田社長と孫さんの握手する写真が新聞の一面を飾ったのは、つい5日前(30年10月5日)のことでした。
AI(人工知能)の将来については、話がどんどん広がっております。更に、加速度がついてきていると思いませんか。
今回、紹介する上記の3出版物(朝日新聞GLOVEは新聞です。)は、AI(人工知能)の進展に伴い、近い将来でも食べられない職業が増え始め、更にその先は、AI(人工知能)が人間の仕事を肩代わりすることによって、人間不要の社会になってしまうというような、近時の話題となるものの総括的な紹介の意味も含んでいるとお考えください。
- 最初に紹介する「ホモ・デウス」は、副題にある通り、AI(人工知能)によるテクノロジーと人類の将来を正面から論じる本です。2年程前、本書を出版した著者の前作品「サピエンス全史 上・下」を、本コラムにて書評として書きましたところ、驚くほど多くの人が読んでくださいました(閲覧履歴で分かるのです。これもAIの初歩的な段階ですね)。その続き物である「ホモ・デウス」のコラムも書かねばならないという義務感のようなものを持っておりました。
でも、現在の人類の築いた人間社会が喪失してしまうという最終段階まで発展する本書は、衝撃的ですが、愉快ではありません。著者は、人間至上主義がデータ至上主義に移行する結果、そのような結論になると述べております。AI(人工知能)の進展によって、人間が不要のものになるということですからね。しかも生き残ることができるのは、一部の大金持ちだけのようです。医療の大躍進により、保険がきかない医療によって、永続する生命を獲得する人類が出るというのです。現在の保険制度では受診できない治療があることに疑問のお持ちの方は、納得されるのでしょうか?もちろん、人類の複雑な脳の構造やデータ至上主義におけるAI(人工知能)の検証も十分になされている訳ではありません。AI(人工知能)を含めた科学と医療の進歩も将来のことですから、このような極端な結論は急ぎすぎのようにも思います。
また、仕事をなくした人類についても、ベーシックインカム論の立場から異なる結論を引き出す可能性も残ります。最近、政治家でも主張する方が出てきましたが、ベーシックインカムとは、「政府が、全ての人に必要最低限の生活を保障する収入を無条件に支給する」というものです。私がお付き合いさせていただいている富豪の方が、ベーシックインカムしかないでしょうねと話されたのには驚きました。だって、その方の税金は、爆発的に増えるからです(最近読んだ本ですが、「AI時代の新・ベーシックインカム論」(井上智洋著)が分かり易いです)。
本書にはこのような具体的な話はでてきません。知識なく読むと、嫌になるだけですから、それが本書を強く推薦しない理由です。
- 5年程前、「10年後に食える仕事、食えない仕事」(渡邉正祐著)を読んだ頃はそれ程感じなかったのですが、弁護士業界がAI(人工知能)に影響されるという事実は、当事務所でも既定の路線です。フォレンジックによる証拠検証についても、先々週、当事務所の田中先生とそれを話題にしました。でも近時の報道は、それどころではないですね。
弁護士業は無くなるそうです。「あと20年でなくなる50の仕事」(水野燥著)という本によると、弁護士業もその一つに入るそうです。この種類の本は現在どんどん出てきております(読みたくありません)。
過熱する報道の一つに、農業分野におけるAI(人工知能)の話もあります(英語のアグリカルチャーにかけて「アグリテック」と言われています)。知的労働がAI(人工知能)にとって代わられてしまうというのは分かります。農業も労働人口に著しい影響がでると聞かされると「そうだろうね」と一応納得しておりました。しかし、古来から連綿と続いてきた農業ですら、AIによるロボットによって人力が省力化されてしまうというのは信じられません。弁護士の将来など議論不要です。
- 朝日新聞GLOVEの「テクノロジーの世紀」は、これまで述べてきたことの総纏めとして、或いはデータ至上主義に至る前段階、即ち現在の社会状況(「民主主義」や「自由か格差か」)との関係についても論じてあります。次の8つのテーマが1頁毎に記載されているので、今までの議論の状況を急いで知るには最適と言えるでしょう。
項目をあげておきます。
① フエイスブックは民主主義を壊すのか
② 新時代のフリーランスがもたらすのは自由か格差か
③ 人はロボットを愛せるか
④ 中国はデータで世界を征するのか
⑤ 「GAFA」の支配は続くのか
⑥ 不老不死は実現するか
⑦ 人工知能は人類を滅ぼすのか
⑧ まとめ インタビュー「人間がデータ化される時代に」
何と、もう頁がありません。詳細は何時か書くこともあるでしょう。
- 最後の「オリジン」と言う本の紹介が十分にできません。
でもこの本は、小説として楽しんでいただければ十分です。前項の③「人はロボットを愛せるか」の裏返しとして「ロボットは人を愛せるか」をテーマとして、お読みください。斬新ですよ。