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コラム - 201611のエントリ

疑問に答える本書の面白さ
1 皆様と同様、私もいろんな疑問をもって生活してきました。でも「サピエンス全史」は思考の方向性を示してくれているように思います。
  これまで疑問に思っていたことで本書に関係するものとしては、次のものがあります。
第一は、何故、我々が、猛獣或いは他のサピエンスを排して現在の地球上に残れるようになったのか?その原因が「知力」にあるとするなら、何故「知力」が生まれたのか?「知力」の仕組みとは?
第二に、人間は「知力」という武器を持ったのに、何故こんなに不自由な共同体(国も家族も含む)を作り、それに属することでしか生きていけないような結末になってしまったのか?
第三に、私が学生時代、夢中になったマルクス・エンゲルスのいう共産主義的な思考はもはや宗教と同程度なのか?或いは又、経済的な側面においても採用困難な思考なのか?
2 第一および第二の疑問については何となく考えるべき方向性が分かってきたように思います。
この本では「知力」とは、我々が何も知らないという事実を知ることから始まり、不知であるが故に探求心が生まれ、科学等の学問に発展し、文明が爆発するという経緯も説得的です。
そして開花した「知力」がどのような終末を迎えるのか、あるいは幸せな将来になるのかについては、決して油断できないことも結論付けされています。前回のコラムで、我々の将来に必然はなく、期待できない結果を招来するかもしれない場合についても書きました。
3 前回触れなかった農業革命の詳細について、楽しみたいと希望される方には次の書籍を勧めます。
4年前、当時ランキング第一位と言われて売り出されたジャレド・ダイアモンド著「銃・病原菌・鉄」です。この本も有名で「サピエンス全史」と一体となる本です。この本は、地球上の併合される以前の文明を紹介しながら、消滅する必然性を銃・病原菌・鉄に理由を求めます。読んだ当時、やはり書評を書きたいと思ったほどでした。
この本の著者は「サピエンス全史」の著者と交流があります。本書末尾の謝辞でジャレド・ダイアモンドに「全体像をつかむことを教えてくれた」と感謝している程です。
「銃・病原菌・鉄」は、論点の掘り下げ型で書かれているところに特色があり、具体的な事実が展開されます。特に太平洋に浮かぶ島々の先住民の文化、例えばニューギニアやオーストラリアの先住民(マオリ族やモリオリ族など)の論評は本当に楽しめます。
ところで研磨加工をほどこし、刃先の長い石器を最初に作ったのは日本人だったということは皆さま知らないでしょう?これはヨーロッパで石器が研磨される1万5000年も前のことだそうです。
4 三番目の疑問は、私の若き日の感傷のようなものです。
「サピエンス全史」を読む直前、「マルクスの心を聴く旅 若者よ マルクスを読もう番外編」(かもがわ出版)を楽しみましたが、このような単純な宣伝文句につられちゃうのです・・。
 ところで、ある事情があって昔の蔵書を整理することになり、レーニンやロシア文化人の本が大量に出てきて嫌になりました。中国文化大革命における凄惨な家族及び自己体験記、ユン・チアン著「ワイルド・スワン」は複数あり、一つは出版直後の英語版(当時、日本で出版されていなかった)だったこともショックでした。つまり挫折して最後まで読めなかったのです。
本論に入ります。マルクス経済学に対する批判は、いまだ経済的な側面については十分になされていないと言い訳してきましたが、現状、労働者階級なる概念はもはや通用しないでしょう。労働者も一元的ではありません。会社に属していても投資等のクレジットに取り囲まれて生活しており、単純に労働価値や剰余価値などのみで分析できない時代に入っております。
体験的に考えればもっと単純です。つまり中国文化大革命が日本で起きるなら最初に抑圧されるのは単純な私でしょう。詰まらない予測は別にしても、これまでの歴史を見れば分かることです。
いやー、若き時代の熱を冷ますのは大変です。
5 怒りを一つ。
先に紹介した本、「マルクスの心を聴く旅」のなかで「過去の日本の左翼運動には身体性がなかった」という記述、そして「パートタイムの学生運動だった」という感想には腹がたちました。
“遊び半分の学生運動は東大生だけでしょう”と言いたい。マルクスを訪ねるドイツやイギリスの旅に「いいな」と思っていたところ、終わりの211頁で呆れました。こんなことを言う大学教授(名前は書きません)が“マルクスの心を聴けるのか”と文句をつけたい。そもそも東大生には選択の幅があり、恵まれた学生でした。学生運動にのめりこんでいても選択の幅がありました。それ以外の学生は、人生における強烈な分岐点に立っていたのです。
文句はこれくらいにしますが、不服なら何時でも受けます。
6 そろそろ終わりにしましょう。
  長いけど気持ちがいいので「サピエンス全史」の冒頭を紹介します。
「今からおよそ一三五億年前、いわゆる「ビッグバン」によって、物質、エネルギー、時間、空間が誕生した。私たちの宇宙の根本を成すこれらの要素の物語を「物理学」という。
物質とエネルギーは、この世に現れてから三〇万年ほど後に融合し始め、原子と呼ばれる複雑な構造体を成し、やがてその原子が結合して分子ができた。原子と分子のそれらの相互作用の物語を「化学」という。
およそ三八億年前、地球と呼ばれる惑星の上で特定の分子が結合し、格別大きく入り組んだ構造体、すなわち有機体(生物)を形作った。有機体の物語を「生物学」という。
そしておよそ七万年前、ホモ・サピエンスという種に属する生き物が、なおさら精巧な構造体、すなわち文化を形成し始めた。そうした人間文化のその後の発展を「歴史」という。
歴史の道筋は、三つの重要な革命が決めた。約七万年前に歴史を始動させた認知革命、約一万二〇〇〇年前に歴史の流れを加速させた農業革命、そして僅か五〇〇年前に始まった科学革命だ。」

凄いテンポではありませんか。

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一 近時、電通事件の影響などから益々労務リスクが高まっているように思います。本当にブラック企業なのであれば当然の報いでしょうが、ブラック企業ではないにもかかわらずインターネット上でブラック企業認定などされてしまえば取り返しのつかないことになる可能性もあります(そのような状況になれば良い人材が取りにくくなり顧客も離れていくことは直ぐに想像できる事柄です。)
 労働基準監督署も、長時間労働に対しては刑事処分も含め厳しく対処するようになっていますので、会社としても十分に準備することが必要です。

二 会社によっては、弁護士は紛争が生じたときだけに必要と考え、労務コンサルタントや社会保険労務士だけと契約して労務管理を行おうとしている方もいらっしゃると思います。
 確かに、中には優秀な方もいらっしゃいますが、社会保険労務士の労基署対応がまずかったせいで、ブラック企業からは程遠い会社が多大な損害を被った事例については、以前のコラムでもご紹介した通りです。
 本コラムでは、現在、様々な制度を導入していらっしゃる会社であっても、弁護士のチェックを通していない場合、労基署が入ったり裁判になったりした場合には通用しない可能性が高いということについてお話ししたいと思います。

三 残業代請求リスクを減らすための制度として、管理監督者や割増賃金に対応する手当(固定残業代、定額残業代など)の支給があることは一般的に良く知られていますが、これらの論点については今までも何度もご説明差し上げていますので、本コラムでは省略します。
 本コラムでは、(1)事業場外労働のみなし労働時間制、(2)専門業務型裁量労働制、(3)企画業務型裁量労働制、という少々専門的な制度の導入を例にしてみたいと思います。

四 まず、事業場外労働のみなし労働時間制とは、外回り営業社員などの場合、使用者の指揮命令が及ばず、労働時間の把握が困難となることが多いことから、所定労働時間分働いたものとみなされる制度です。
 就業規則を見ていると、営業部員はみなし労働時間制を採用すると簡潔に規定されていることもあり、比較的利用されていることがある制度の一つではないかと思います。
 しかし、裁判所は、極めて厳しい判断をする傾向にあります。
 例えば、旅行会社の主催する募集型企画旅行の添乗業務について、第1審の東京地方裁判所はみなし労働時間制を認めておりましたが、最高裁判決(平成26年1月24日)では判断が逆転し、適用が否定されています。
 平成26年1月24日の判決ですから、それより前から制度を導入している企業の大多数が、裁判になった場合には敗訴すると推測できます。

五 次に、専門業務型裁量労働制とは、厚生労働省令などによって定められた業務を対象として、予め労使間で定められた時間分働いたものとみなす制度のことを言います。
 対象業務としては、新商品若しくは新技術の研究開発、システムコンサルタント、記者、編集者、インテリアコーディネーター、コピーライター、大学の講師などが含まれます。
 この制度についても、出版社など業種によっては利用されていることがあるようですが、(1)対象業務を遂行する手段及び時間配分の決定等に関して具体的な指示をしないこと、(2)健康・福祉を確保するための措置、(3)労働者からの苦情処理のための措置を定めなければなりません。また、(4)就業規則においても、適切な定めをして労基署長に届け出るなど要件が厳しく規定されていますので、弁護士の関与なしに制度が導入されている場合、無残な結果に終わることが多いと言わざるを得ません。

六 さらに、企画業務型裁量労働制とは、企業の中枢部門で企画・立案・調査・分析の業務に従事するホワイトカラーに関するみなし労働時間制のことを言います。
 これについても、「財務・経理を担当する部署における業務のうち、財務状態等について調査及び分析を行い、財務に関する計画を策定する業務」など対象となる業務が多そうに見えることから、導入されていることがあるようです。
 もっとも、厚生労働省の指針に違反する制度は、労基法違反となります。
 要するに、厚生労働省の指針に基づいて制度を運用することが必要なわけですが、(1)労使委員会の設置や決議、(2)労基署への届け出などが必要になり、(3)運営規程などを作成しないといけませんので、弁護士の関与なしで導入することは非常に困難であり、適切な制度になっていないことが大多数であると思います。

七 以上の通り、弁護士のチェックなしに労務リスクに対応することは困難な時代になってきております。
 これから制度を構築する場合には勿論ですし、既に制度を導入している場合であっても再検証し、問題がある制度については変えていく必要があると思います。
 残業代請求を受けてしまった場合、制度の導入・見直しをしたい場合には是非当事務所にご連絡頂きたいと思っております。
 

  なお、本コラムについては、下記ページもご参考にして頂けると更にお役に立てるのではないかと思っております。

https://www.okamoto-law-office.com/modules/pico/index.php?content_id=16

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近時、電通事件等を始めとして労働基準監督署の動きがメディアを賑わせることも多くなってきました。
労基署から連絡が来るのは所謂ブラック企業だけではありません。
実際に労基署から連絡が来た場合、或いは労基署から連絡が来る前であっても、十分な対応を取ることが必要です。

当事務所はこれまでも多くの労基署が入った事件を処理しておりますので、無料相談会の機会を設けさせていただくことにしました。
ご要望があれば、当事務所が提携している社会保険労務士法人酒井事務所と2人1組で行うことも可能ですので、気軽にお申し付けください。

1.相談日時:日祝日を除く午前10時〜午後20時のうち1時間弱
       (具体的な日時については適宜調整させて頂きます。)
2.相談場所:岡本政明法律事務所(丸ノ内線・新宿御苑前駅徒歩1分)
3.料金:無料

ご興味のある方がいらっしゃいましたら、お問合せフォームより気軽にお問い合わせください。どうぞ宜しくお願い致します。

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書評を書きたくなった動機
1 「サピエンス全史」(ユヴァル・ノア・ハラリ著 河出書房新社 上・下)は凄い本です。
この本を読むと宗教も哲学も不要になったという実感です。歴史学がこのような形で講義されるようになり、種々の学問の集大成として歴史学が語られる時代になったのです。
ところで、この本は結論で“人類は果たして幸福になったのか”という疑問を提起しています。つまり最終章の紹介になってしまいますが次のよう述べています。
「今日、ホモ・サピエンスは、神になる寸前で、永遠の若さばかりか、創造と破壊の神聖な能力さえも手に入れかけている」。
そして“我々はバイオニック生命体等で生物の生命に直接関与可能となり、しかも我々は永遠の生命を手に入れるかもしれない”とまで表現しています。日本経済新聞によって「人間の寿命は125歳が限界」とする米アルバート・アインシュタイン医科大学研究グループの報道(2016.10.6)があったばかりですが、これは別の話として本書の歴史学に魅了されてしまうのです。
しかも我々が神になったとしても、実際に「どこへ向かうのかは誰にもわからない」し、「自分が何を望んでいるかもわからない、不満で無責任な神々ほど危険なものがあるだろうか?」と結んでいます。
この結論は嫌です。近時の世界情勢をみるまでもなく理解できる話だから更に困るのです。
2 この本の中核は、上巻直ぐに始まる「第一部 認知革命」の著述でしょうね。読み始めた当初は、認知心理学で出てくるような用語に拒否反応がありました。
著者によると「認知革命」とは新しい思考と意思疎通の方法とされております。そしてサピエンスという我々の先祖に起こった認知能力を革命と表現しております。
具体的には「噂話」や「陰口」のように現実には存在しないことも語ることができる能力、つまりチンパンジーや旧人類にない能力、これこそ現在我々が地球上に生き残ることができた根本的理由だとしております。すなわち「想像上の現実」は嘘とは異なり、誰もがその存在を信じているものであるなら、その存在に対して共有される「信頼」が生じ、それが存続するかぎり、その「想像上の現実」は社会の中で力を振るい続けるとしております。そして我々がゴリラやチンパンジー且つ他の25種のサピエンス(更科功著「爆発的進化論 1%の軌跡がヒトを作った」新潮新書)に打ち勝てたのは、多数の固体や家族、そして大きな集団に結び付いていくという、このような想像上の接着剤である「信頼」を基盤とするというように話が進みます。
貨幣の流通だけでなく国や会社組織というように「想像上の現実」が「信頼」に基づくとすると、益々筆者の思うつぼに嵌まっていきます。新たな制度は、将来への信頼であり、それが信用=クレジットというように発達を遂げ、貨幣だけでなく国や会社制度というような種々の仕組みに発展していくのです。読んでください。納得できるから困るのです。現在は仮想通貨の時代に突入していますから・・
3 上記論法は、私が学生時代を終わるころ、ちょうど50年程前、思想書と言われた吉本隆明著「共同幻想論」に重なります。
 古すぎて直ぐに出てこない本なので、ウイキぺディアを引用してしまいます。「当時の教条主義化したマルクス・レーニン主義に辟易し、そこからの脱却を求めていた全共闘世代に熱狂して読まれ、強い影響を与えた思想書である。」
これは当時の状況を知らない人が書いた論評ですね。私がもう一つ共鳴できなかったところ、つまり経済的側面に関する分析の欠如があったために「熱狂して読まれた」というのは言い過ぎだと思います。でも国の在り方や個人の関係が古事記等から解きほぐされ、共同幻想や対幻想で語られるこの書は、今回紹介する本の著者ハラリさんに是非とも読ませたい本です。
吉本隆明氏は、科学(化学)の進歩がまだまだであった50年前、既に共同幻想論を言っております。彼を尊敬する先輩がいたこともあり、私も吉本隆明氏にお会いしたこともありますが、歴史的分析というより多少文学的であり、私の感性には馴染みませんでした。しかし、母の法事で会った甥っ子が吉本隆明にはまっていると話したことには驚きました。
4 「サピエンス全史」だけでは理解困難な部分を詰めておきましょう。
昨年4月号の「文芸春秋」で読んだ立花隆「脳についてわかったすごいこと」です。「意識とは何か」として脳の構造が科学的に分析され紹介されていました。
「死の瞬間の脳細胞」、「夢を自由に操る化学物質」、「臨死体験」等が話題の中心をなすのですが、脳神経細胞とシナプスなどの関係、或は脳のどこかの遺伝子(最小のニューロン集団の存在)、脳科学における「ゲノム計画」などにより明らかにされる将来を思うと「我思う、ゆえに我あり」という哲学すらも超えてきたと思わざるをえません。
つまり「意識」が科学的に明らかにされようとしている現実に接すると、行動主義心理学からの批判も吹っ飛んでしまいます。
5 宗教についても同様の感想になりました。
 神は全能で、神こそ死後の世界の主宰者であり、森羅万象の全てを教えてくれる。これを前提にして宗教は成り立つものでしょう。あるいは仏教では、仏の存在を仮定しないと人類は謙虚に生きることができなかった。故に宗教が必要になると思います。しかし死の瞬間、脳に快楽物質(セロトニン)なるものが放出されるなどと聞くと興ざめしてしまいます。
死の世界が意識の側面から分析され始めてきますと、神も信じられなくなるのです。否、人間こそが神に仮定されてしまうとこの本は述べているのです。
次回も、本書の論評です。

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