新宿の顧問弁護士なら弁護士法人岡本(岡本政明法律事務所)

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コラム - 201602のエントリ

社会保険労務士法人酒井事務所 http://www.profit21.co.jp/sakai
と共同で
以下のセミナーを開催します。

当セミナーは、通常のセミナーのように壇上から講師が一方的に話すことは想定して
おりません。通常の打ち合わせ室でざっくばらんな質疑応答を随時行うことで交流を深めながら行っていきたいと考えております。

1.セミナー名:残業代請求に関する使用者側の対策と解決法
2.セミナー内容:
     第1部:労働基準監督署の調査実態と具体的防止策(社会保険労務士)
     第2部:残業代請求事件の具体的な解決方法(弁護士)
3.日時:?3月18日㈮ ?4月8日㈮ 
     各回共に18時〜19時30分
     第1部:18時〜18時40分
     第2部:18時50分〜19時30分
4.場所:岡本政明法律事務所(新宿御苑前徒歩1分)
5.定員:各回5名
6.費用:無料
7.参加者:弁護士:岡本直也
      特定社会保険労務士:酒井健介

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一 相続法理と遺留分
 
1 日本国民の政治思想を分析される学者の方は、相続法理と遺留分の制度がどのような実態にあり、それがどのように定着しているのか調査をされるのも面白いのではないでしょうか。今回のテーマは、日本の将来を心配される方には変わった視点からの題材を提供します。
遺留分制度の多少面倒な法理論が、我が国の民主主義の在り方にまで影響するということは驚きだからです。でも政治的な宣伝ではございませんので、安心してお読みください。
 
2 遺言により遺産を処分することは、資産所有者が有する最後の自由であります。つまり遺言書を書いて好きなように遺産を処分することは所有者の全能の権利であるはずです。既に本コラムでもそのように書きましたが、しかしこの自由は制約を受けてきました。中学生の社会の講義のようですが、遺留分規定もまさしくこの自由権の制約なのであります。
  そもそも遺留分の制度は、戸主処分権の制限として明治民法時代から定められており、その制度を現民法も引き継ぎました。つまり遺留分制度は古い家族共同体的な制度を連想させるのです。血の繋がる者には、かなりの割合において遺留分が認められます。しかし家という封建的な側面でなく近代的な法律構成が必要になります。私が司法試験を受験した頃の法律学全集には「遺留分法は、個人主義的処分自由に対する家族主義的家産擁護の防塞である」と明記されていました。
封建的な匂いがする本制度に対しては、論述をすすめるのも面倒で、学者の方からは敬遠されていたのだと思います。
 
3 早速、家族法が民主主義を左右するという学者の先生を紹介しましょう。
ソビエト連邦の崩壊について人口統計学の手法を用いて予想を的中させた「家族人類学者」エマニュエルトッドという先生です。日本でも講演をされましたが衝撃的でした。“相続法理が民主主義の成否を握る”という学説を私なりに要約してしまいます。
彼によりますと、差別意識は、子供の頃植え込まれた差別意識により発生し、その意識は将来も免れられない先験的なものとなって存続し、その後も表出されるというものです。そして、そのような国では、他者への差別意識が民主主義に対する阻害となって表出するというのです。そして、同氏はなんと日本を平等相続の国ではなく、「直系相続の国」だと言っております。
「直系相続」は平等相続ではありません。
 
二 日本の相続法理
 
1 日本は直系相続の国なのでしょうか?
そもそも、日本は、国の行く末というような重要事項については、皆様と一緒に決定に関与できる民主主義国家です。しかも民法では兄弟姉妹の相続分を平等としております。どこに「直系相続の国」などと言われる要素があるのでしょうか。これでは二流国家のようです。
しかし、事実はそう簡単ではないのです。
 
2 私の故郷は江戸時代より続く城下町にあります。家に対する認識は日本伝来のものがありました。両親は、家を継ぐ者が家業等一切を承継すると常に言っておりました。これは遺言と同様の価値があるものです。エマニュエルトッドに言わせると、上記認識は直系相続、つまり先験的な差別意識の萌芽なのですが・・。
思い出話にもう少しお付き合いください。
大学時代の私は「家族帝国主義」と言って家族主義を批判していた割には、父母の言うことには報いたいという気持ちが強く、辛い介護等を目の当たりにして遺留分制度に納得のいく側面も見出しました。遺留分制度が家産の維持でなく、遺族の保護、即ち遺言者の保護に通じるものであるという理屈です。法制度趣旨をこのように捉えるのは難しいかな・・?私は、学生時代、法律に関する専門授業に関し憲法以外一度も出たことはありません。受験生になって驚いたことは過激な労働法教科書の記載と、その逆の遺留分制度の記述です。
エマニュエルトッドに言わせると、「先験的な差別意識の萌芽」との間で揺れていた当時の思い出話です。
 
3 個人成育史、つまり相続法理が民主主義をも左右するという学説を紹介しましたが、最近はこの民主主義についても定義をきちんとしろとか、戦後民主主義と区分けして論じろとか言われる過渡期の時代のように思われます。しかし、民主主義にバイアスをつける必要はないはずです。人は皆「平等に」という基本概念、そして民法ならば、その相続法理に従って弁護士の業務を行えばいいはずです。それ以上の価値など、どのように民主主義概念をいじろうとも上記理念に敵うはずがありません。
 
三 今回の「纏め」と中小企業経営承継円滑化法
 
  我が日本民法の自由と平等を理念とした相続法理において、遺留分の規定は異色です。支配的学説は「近親者の扶養乃至生活保障」にあるとして近代法の理念に矛盾のない解釈をしております。しかし遺言の自由と言いながら、子供には2分の1もの遺留分があるのは生活保障としては多額でしょう。しかも生活の豊かな者にもこの権利は保障されるのです。そうであるなら、遺留分としては認めないイギリスのように、その都度、生活保障分を認定する制度のほうが余程分かりやすいのですが・・。
  平成20年制定された中小企業経営承継円滑化法は、まさしく遺言と遺留分を論点とし、遺留分を制限するものとして立法されました。

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 当事務所は使用者側の労働事件を多く解決しているため、豊富な知識と経験に基づき
創業25年以上にわたって社労士業務を行っている社会保険労務士法人酒井事務所
http://www.profit21.co.jp/sakai/gyoumu.html
と提携して業務を行っております。

そこで、人事労務に関する不安を抱えているお客様(使用者側)向けに当事務所の弁護士と
社会保険労務士法人酒井事務所の社会保険労務士が2人1組で相談会を行う機会を
設けたいと考えております。具体的には以下の通りです。

1.相談内容:人事労務・法務に関わるあらゆる問題
2.相談日時:土日祝日を除く午前10時〜午後20時のうち1時間弱
       (具体的な日時については適宜調整させて頂きます。)
3.相談場所:岡本政明法律事務所(丸ノ内線・新宿御苑前駅徒歩1分)
(ご事情によってはお客様の事務所等で行うことも可能な場合があります。)
4.料金:無料

ご興味のある方がいらっしゃいましたら、お問合せフォームより気軽にお問い合わせください。どうぞ宜しくお願い致します。

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一 テレビ及び週刊誌の過熱報道
 
 1 「遺産は全て家政婦に渡す」という遺言書
(1) 朝の出勤前はテレビをつけっぱなしにしております。たまたま気づいたのですが“家政婦に遺産全額を遺贈したところ、実の娘たちと訴訟になり娘側が負けた”と報道しておりました。私の経験則では“遺言書が有効と見做されるのは通常のこと。裁判所はなかなか遺言書を無効になどできない。通常ありきたりの判決”と思い聞き流しておりました。ところが、知り合いの弁護士がコメントに出演しましたので、つい全部見てしまいました。
このコメントをしていた弁護士の舌足らずな解説に“こんなコメントだったら不要。専門家の名前が泣く。しかも、せっかく出るのなら遺留分についても説明するべきだ”などと苦情を言いたくなり、つい全部見てしまったことが不快でした。
誰しもが、この報道に疑問をもたれる内容の第一は、この娘たちは遺留分の主張をしなかったのかどうか?でしょう。この娘たちは遺留分として遺産の2分の1を主張できるのですから、それで十分ともいえるからです。
 
(2) 上記報道を聞いた後、2月4日号の週刊文春で「家政婦vs実の娘 遺産相続訴訟 高齢の母が残した遺言は有効」という記事を読み、また報道が過熱していることも知りました。
事案は単純です。
97歳で亡くなられた女性資産家が、50年以上親身に仕えてくれた家政婦に、遺言書で全財産を遺贈していたようです。親身に世話をしてくれた家政婦に比較して、娘たちは、「海外に移住するという名目で3000万円を援助させ」、無心を繰り返していた旨記載されています。
このような事件は、裁判になる場合の典型的な相続事件の一例でしかなく、どうして過熱報道になるのか、私には不思議です。
先ず、娘側の訴えは、遺言無効による遺産の返還及び家政婦が着服した約6000万円を支払えとするもので、家政婦側は、死去当日、娘が預金口座から3000万円を引出している現金等遺産全ての返還を要求しています。
判決文は見ておりませんが、上記記事の内容からすると、娘側は遺言書を無効と判断したのか遺留分の請求をしなかったようです。遺留分についてはどの報道も教えてくれません。
遺留分の請求権は、正確には減殺請求権と言い、その時効は1年という短期消滅時効にかかります。ここでは弁護士が受任した時期が問題になります。つまり問題になる1年以内に弁護士が受任しており、何らの事情もなく行使しなかったとするなら、この弁護士業務は手落ちであると批判されるでしょう。
仮に、遺言書が無効と判断されても、予備的に遺留分の請求をしておくのが常識です。内容証明郵便で証拠を残しておきましょう。
 
  今回の報道に対する疑問
 今回の報道による自筆証書遺言は、遺言能力がある限り老女の最終的な意思として当然に有効です。遺言は、所有する者の全能の権利と言っていいでしょう。今回と同じく、全ての財産を血の繋がらない者に対してした包括遺贈も「公序良俗に反しない」という古い判例(大審院当時)もあるくらいです。
従って、本件遺言書に関する争いは、この女性に遺言能力があるか否かが争点になりますが、報道された内容では、遺言書は8年も前に作成されたもののようです。
 
3 でもこの事案は、私が前回のコラム(相続事件簿3)で紹介した事件程劇的ではありません。
前回のコラムの老女は天涯孤独と称し、自らの相続人の存在すら信じておりませんでした。遺言書の無効を訴える相続人は、その姉の養子なのです。そもそも姉には遺留分もありません。遺留分の制度については次回ふれますが、遺留分がないということは「家という家族共同体に属しない」ことを意味するといえます。相続法理における調整は予定されていないのです。しかも、お世話した弁護士は、老女の自筆証書遺言に多少不安をもっていたのでしょうか、自ら公証人に関与させ秘密証書遺言にしております。
この相続紛争のほうがよほどミステリアスで展開も複雑です。
この案件の面白さにはかなわないはずなのに、やはり「家政婦は見た」的な論調に負けてしまうのでしょうね。
 
二 私の思い―次回のテーマは「遺言と遺留分」
     過熱報道に接し、民法の最も未解決と言われる遺留分について思いが及びます。「家族主義と民主主義」にも関係する私の従来からのテーマを書いてみましょう。
遺留分の制度は上記考察をするには、最も適した分野です。遺留分の制度に関し、ある 解説書では、次のように記載しております(基本法コンメンタール相続第五版213)。「(遺留分制度については)かなりの部分が今なお発展途上にある。遺留分制度論自体が今なおわが国では創成期にあるあるといってよい。」
次回は「遺言と遺留分」をテーマにし、相続法理に関係したコラムを書くことにします。

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