新宿の顧問弁護士なら弁護士法人岡本(岡本政明法律事務所)

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コラム - 201504のエントリ

 

一 執行官
 
  異色の公務員
昭和バブル経済絶頂期の朝、法廷に出るため午前一番の裁判に行くとき、東京地方裁判所の玄関前である桜田通りには黒塗りのハイヤーがずらりと列をなして停車しておりました。これだけ多くのハイヤーを誰が利用しているのか不思議に思って聞いたところ、執行官の専用車だというではありませんか。
当時は本当に儲かったようです。因みに執行官は執行官法に規定される公務員です。しかし、あまりにも儲けている執行官からの反対にあって(これは漏れ聞いた話です)、俸給性に切り替えることができず、いまだに手数料収入で生活される「異色の公務員」と言われていることは、殆どの方が知りません。
 
2 執行官の業務
我々には自力救済は禁止されておりますが、執行官は、我々に替わって実力を行使してくれます。
執行官の業務は民事執行法や執行官規則で定められておりますが、意外と多くの職務を負担しております。特殊な規定がありますので見ておきましょう。民事執行法61項です。「執行官は職務の執行に際し抵抗を受けるときは、その抵抗を排除するために、威力を用い、又は警察上の援助を求めることができる」とされております。
     国家権力を担って行う執行現場の総責任者なのですから、危険とも隣り合わせの業務です。私自身、執行官が室内犬にお尻をがぶりと咬まれた現場に立ち会いましたし、暴力をふるう債務者に毅然と対抗された執行官を幾度も目撃しております。
 
3 具体的な経験
    多くの占有移転禁止の仮処分もしましたが、その際、かつて「占有屋」と言われた方にも随分お会いしました。まるで宮部みゆきの小説の世界であります。
居住者不在の場合、執行官は、執行補助者である鍵屋を使って、室内に入ります。電気メーターやふろ場等の調査もしますが、置いてある手紙を見るため、手ではなく鉛筆を使ってひっくり返したり(ビニール手袋を使う執行官も見ました)、ゴミ箱の食物包装紙の日付を見て、居住の実態を調べる執行官もおられました。
ある執行現場で、大量のカレンダーが事務机の上に置いてあるのを見て、他の占有者の存在を明らかにしようとする職業意識の高さに感心したこともあります。この占有調査では、当該事務所を他の会社も利用していることが判明し、本案訴訟の相手方に加えました。
 
4 執行官になりたいという相談
整理回収機構(いわゆるRCC)時代、私の統括する不動産部からも、公募制を利用して執行官になりたいという話をされた方がおられました。執行官の地位や評価について熟知していた私は、それは素晴らしいと勧めた経験があります。
その方は今も執行官として活躍していらっしゃると思いますが、反面、国家権力を担って行う危険な執行現場の総責任者なのですから、大変であろうと案じております。
 
二 執行補助者
 
1 執行補助者
執行官以外にも、執行裁判所の命令により民事執行に関する職務を行う職業があります。通常「執行屋」と呼ばれる方々について紹介したいのですが、執行の際に、執行が適正に行われたどうかについて証人となる「立会人」とも異なる職業です。立会人は民事執行法7条に規定されておりますが、執行屋、即ち執行補助者は執行官法1014号に「労務者」と規定されているにすぎません。ですから、執行補助者は労務補助者と言うこともあります。
強制執行の申立をされる債権者の方は、通常、執行官にこれまで述べた関係者一切の選任を任せられます。しかし、私の事務所のように、手馴れた業者と懇意になっているような場合には、その方を指名して執行官と共同作業をこなしていただくことになります。執行官が数名臨場されるという巨大執行事件などを担当しますと、優秀な執行補助者なくして執行業務は困難だと分かります。
因みに、最初に示しましたコラム「執行費用に関し、実際の事例に即した計算書をご覧ください」という2事例は、その業者の方にお願いし、当方からよくある事例として限定をつけて見積もってもらったものを載せたにすぎません。
 
2 執行補助者は我々の味方
    執行補助者の方こそ我々の味方です。
       執行をしておりますと、PCB等産業廃棄物の処理や第三者との権利の調整も出てまいります。自動販売機や第三者の自動車等あげればきりがありません。これらの調整にも種々知恵を出してくれます。
暴力を売り物にされる職業の方にも、幾度か執行をかけておりますが、驚いたことは、その筋の方を執行補助者として要請されていたことが二度ありました。暴力を売り物にされる債務者と同様の方々が執行補助者に参加されているのですから、現場は緊張感一杯です。
若い弁護士の先生方、信頼のおける執行補助者を探し、良き関係を作って下さい。
次回は、コラムの「執行費用に関し、実際の事例に即した計算書をご覧ください」という2事例を見て執行費用を考えましょう。

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