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当事務所では、上場企業(東証プライム)からベンチャー企業まで広範囲、かつ、様々な業種の顧問業務をメインとしつつ、様々な事件に対応しております。

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コラム - 201502のエントリ

一.    (元)従業員らに営業秘密を持ち出された(情報を漏洩された)場合の法律相談としてはいくつかバリエーションがありますが、刑事告訴を要望される経営者の方が多いことも事実です。従業員に裏切られるわけですから、当然といえば当然の反応といえるでしょう。
 もっとも、一般の方が警察署に行って不正競争防止法に基づく刑事告訴をしようとしても容易でないことも事実です。

二.     そのような中、平成27年1月28日付けで、経済産業省から営業秘密管理指針の全部改訂(以下「全部改訂版」といいます)が公表され、従前の解釈がだいぶ緩やかになりました。会社にとってみれば、喜ばしい改訂であると考えられます。
 全部改訂版によれば、「改訂に当たっては、『知的財産推進計画2014』(平成26年7月知的財産戦略本部決定)で、『一部の裁判例等において秘密管理性の認定が厳しいとの指摘や認定の予見可能性を高めるべきとの指摘があることも視野に入れつつ、営業秘密管理指針において、法的に営業秘密として認められるための管理方法について、事業者にとってより分かりやすい記載とするよう改める』と記載されたことを踏まえ」とされ、「秘密管理性要件については、企業が、ある情報について、相当高度な秘密管理を網羅的に行った場合にはじめて法的保護が与えられるべきものであると考えることは、次の理由により、適切ではない」と記載されております。
 「次の理由」の中には、「営業秘密が競争力の源泉となる企業、特に中小企業が増加しているが、これらの企業に対して、『鉄壁の』秘密管理を求めることは現実的ではない。仮にそれを求めることになれば、結局のところ、法による保護対象から外れてしまうことが想定され、イノベーションを阻害しかねないこと」という記載もなされていますから、全部改訂版は従前の営業秘密管理指針に比べてかなり踏み込んだ内容になっていると考えることが可能です。

三.     このような影響もあるのでしょうか。「営業秘密」に関する刑事事件としては、本年に入ってから、既に複数の事件がマスメディアに取り上げられています。
 例えば、本年1月14日付け各紙によれば、大阪府警は、家電量販大手エディオンの「販促スケジュール案」などのデータを不正取得したという疑いで、エディオンから転職した上新電機の元部長を不正競争防止法違反容疑で逮捕したとのことです。さらに、2月4日付け各紙によれば、同容疑者の元部下についても逮捕したとの報道もなされています(以下「エディオン事件」といいます)。
 報道によれば、エディオン事件においては、職場に共用パソコンが存在していたこと、遠隔操作ソフトのインストールが可能であったこと、退職後90日間にわたり退職者のID及びパスワードが依然として有効なままであったことなど「秘密管理性」を否定する方向に推認し得る事実がいくつか存在するようですが、大阪府警は「営業秘密」として認められるという判断をしているようです。
 また、本年2月14日付け各紙によれば、神奈川県警は、日産自動車に在職中、日産本社のサーバーにアクセスし、モーターショーでの車の配置や照明の当て方などに関するデータ8件を自分のUSBメモリーなどに複製して不正に持ち出したという疑いで、日産自動車の元社員を逮捕したとの報道もなされています。

四.     今後は、全部改訂版に従った「営業秘密」の管理をしておくことによって、従前と比較して、刑事処罰による従業員に対する抑止を行い易くなり得ると考えられます。
 そのために重要なことの第一は、各会社の実情に合わせて規則等を定めることです。また、万が一、(元)従業員にデータ等を持ち出されてしまった場合(情報漏洩されてしまった場合)には、会社の実情に応じて当該データ等が「営業秘密」に該当するかどうかを法的に検討する必要があります。
 当事務所では、営業秘密管理指針に適合する規則等を整備するばかりでなく、(元)従業員にデータ等を持ち出されてしまった場合、不正競争防止法上の規定に加え、各種刑罰法規に該当しないかどうかを様々な角度から検討し、刑事告訴等を行っております。
一度ご相談くだされば幸いです。

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一 財産開示手続の必要性
 
1 苦労の末、勝訴判決を得ても相手方が一円も払わない事例は多い。日本弁護士連合会が過去調査した報告によると、最近3年間に確定判決による債務名義を取得しながらも、債権回収できなかった事例に接した弁護士は79%にもなるとのことです。
これでは「絵に描いた餅」と言わざるを得ません。
前のコラムで自力救済について書きましたが、自力救済をしては駄目です。話し合いすら拒否する債務者に対しては、法的手続である強制執行をして債権回収するしか方法はないのです。
 
 では何に強制執行をすればいいのでしょうか?
信頼関係のない債務者は、貴方からの強制執行を恐れて、預金は別の銀行に移したり、不動産には多額の担保権を偽装するなどして財産隠しをする事例まであります。
でも、そもそも貴方が債務者と人間関係がない場合には、債務者の財産状況など全く分からないですよね。自力救済を否定し、債務者の財産を裁判手続のなかで明らかにできないとすると、強制執行制度は意味のないものになります。
 
3 言葉を変えて言いましょう。
法律で、裁判手続に則って債権を回収しなさいという法治主義を唱えるなら、判決結果を実現する手段をも法は保証しなければなりません。実効性のある執行制度を実現しないと、自力救済の蔓延、力の強い者の勝ちとなります。(自力救済のコラムが生きてきますよね)。
上記事情に配慮して、財産開示の制度が立法され、平成1641日に施行されました。評判通り、使いにくい半端な制度です。しかし、顧問業務を中心に受任しております当事務所では、法制定時より、財産開示制度を利用して依頼者の要望に応えられるよう努力してきました。もちろん費用倒れになる場合には依頼者に説明して行いません。
 
  財産開示制度とは?
 
  私のコラムは若い弁護士の方が多く読まれています。
このように考えますと、民事執行法第19711号と2号の要件の違い、限定説乃至非限定説、そして通常行う2号に基づく探索必要説乃至探索不用説、或いは二重基準論等解説したい論点は多々あります。しかし深入りしても「つまらない解説書」にしかなりません。
故に、当事務所で通常行ってきました同条2号が中心になります。実際にも、財産開示手続は年間1,000件前後にとどまり、その殆んどが同条2号による申立てであるとされています。
 
2  同条1号は「強制執行又は担保権の実行における配当等の手続」が前提とされております。預金の差押えをして、仮に少額の預金があったとしても、配当手続を受ける時間的なロス等を考えますと、当初より意識的に同条2号「知れている財産に対する強制執行を実施しても、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得られないことの疎明があったとき」として申し立てる方が実益に叶うのです。そもそも裁判官は財産の探索を厳しく要求することが多く(探索必要説)、同条2号の要件を満たすことで随分労力や費用を要します。従って、当事務所では最初から強制執行を意識して事件を進行させます。具体的には当初より預金差押のための情報収集を積極的に行うのです。預金差押の失敗事例を裁判所に示し、2号要件を満たすことに注意しております。
 
3 財産開示手続は、裁判所が財産を見つけ出してくれるというような制度になっておりません。しかも裁判官の運用も厳しく、これでは国が裁判を受ける権利を保障し、反面、自力救済を禁じる趣旨に反します。財産開示の制度が憲法的価値を有するという学者もいますが、かかる運用には憲法違反を主張する実務家はいるのでしょうか。
   当事務所では財産開示手続をうまく使って、債務者に和解を納得していただくなど、中途半端な制度を逆利用、つまり裁判所と言う舞台を上手に利用することで、その効果を期待しております。
 
三 どの様に財産開示手続を利用するのか?
 
1 財産開示手続では、事前に当方より質問事項書を提出しますが、これに基づいて裁判官が債務者に対して質問してくれます。この質問事項書の質問事項を工夫しましょう。個人と法人に分けて考察します。
 
2 個人は給料債権が中心でした。就職先、給料の振込先、退職金の有無等聞くことは多いのですが、無職と答える債務者もいます。それを真に受けてはいけません。保険関係の質問で就職していることを明らかにしたこともあります。保証人でない父の財産を聞いて、裁判官に止められ、意識的に裁判官に抵抗しました。しかし、これを契機に債務者は、父を保証人とする和解に納得してくれました。
そもそも債務者は財産目録の提出をしなければなりません。しかし郵貯銀行の預貯金が意外と漏れております。生命保険関係や最初の就職先である旧第一勧銀の給与振込銀行支店を聞くこともコツですね。
 
3 法人に聞くコツもたくさんあります。このような債務者法人は、通常、事務所は賃貸です。質問事項書には保証金、敷金と記載して裁判官或いは貴方が質問する場合に裁判官の理解を得なければなりません。従来の取引銀行は事前に差押えしておりますので、現在の給料、取引先の利用銀行も聞きましょう。この質問の際、債務者会社の対応に頭にきて、債権者は「債権者破産の申立をしたいと言っているが、それでもよいか」と質問をしたら、裁判官に止められました。後日、債権者破産の申立を検討しておりますと連絡したところ、和解になった事例があります。財産開示手続は、法律論の話しにならないのです。

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