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コラム - 201411のエントリ

 

一 強制執行は専門的すぎる
 
1 強制執行を当コラムで取り上げることにしたきっかけを説明します。
      この二か月強、次のコラムのテーマ探しのため、時間を削って経済小説といわれるものを30冊程度読みました。
ひどい小説もありました。割合有名な小説なのに「破産の申立てを法務局にする」などと書かれると、いくら迫力のある文体であっても呆れて読めなくなります。内容が良いだけに残念です。
経済小説を読みまくって分かったことがあります。題材になりやすい強制執行に関係する部分については、実は弱いのです。執行実務をぼかしたり、ネグレクトした結果、迫力がなくなったものが多いのです。つまり執行の世界は、執行官の経験だけでは背景等根本的な事実については把握できず、逆に生半可な弁護士経験では執行の専門性、細かい事実関係が書けないのです。
その点、高任和夫の初期の作品「商社審査部25時」(講談社文庫古くてごめん、2005年発刊です)は、複雑な動産売買先取特権が実務に即して見事に描かれています。
次回に紹介し、私の経験と比較しましょう。
 
2 先月末、強制執行について書いた原稿をある出版社に出しました。
法律専門の出版社ですが、数時間も経たないうちに編集長から「玉稿を拝受しました」とのメールをいただき褒めまくられました。思わず広辞苑を引っ張り出して「玉稿」について引きました。言葉として存在するのですね。意味として「他人の草稿の尊敬語」とあるではありませんか。角川類語新辞典では「立派な原稿の意」と書かれております。編集長からは、直接お褒めの言葉もいただきました。気分が乗ったついでです。同じことは書きせんが、コラムは強制執行で決まりです。
 
  担保法改正に際して民事局に呼ばれたこと
 
 当コラムでは、既に私が整理回収機構不動産部の統括顧問であったことは紹介済みです。同機構は別名「RCC」と言われ、破綻した金融機関の整理のために政府により設立されました。破綻金融機関には処理のできない大量の不動産が滞留しておりました。その滞留不動産を正面から処理したのですから、当時言われた「占有屋」の方々からは、私たち不動産部は相当恨まれたと思います。
毎日、強制執行の連続でした。当時日本で行われる強制執行の2割は同機構において実行されていると聞かされ、「えっ、全国と言っても、そんなに執行少ないの」と逆に驚いたものです。
 
2 私は、平成15年担保法制改正に関し具体案が出そろった頃、法務省民事局から意見を求められ、法務省に出向いたことがあります。最後の諮問だと言われて質問されました。質問の内容は、担保法に関係する民法の部分ではなく、執行関係の細部についての質問でした。今にして思いますと、法改正に直接関与された出向裁判官が、執行の細部に関する実態を理解されたかったのだと思います。
 
3 今回は、法改正の部分について大まかに触れておきますが、次回からは具体的な経験談を書こうかと思っております。
   担保法改正の背景事情であった「占有屋の跋扈」等お知りになりたいのかもしれませんが、それでは経済小説を書いたほうがましです。当コラムでは遠慮させてください。現実に起きた細々とした体験をお知りになりたいだろうと、勝手に想像して書きます。
 
三 平成15年公布の法改正の内容
 
1 改正の視点としては、民法の抵当権部分の改正と、執行制度の改正の二つの場面を区別すると良いと思います。今回の調査で上記解説書が少ないことについては驚いております。つまりこの改正は、あまりにも“専門バカ的な改正”なのでしょうね。しかし強制執行を業とされる方には重要です。
ましてや経済小説を書かれる方には必読になるはずです。
 
2 民法に規定される抵当権の改正からみます。
これまで「占有屋」と言われ、「不動産担保金融業者」と言われる方々が担保権に対する脱法行為として利用した「短期賃貸借」(民法602条に定めた短期賃貸借は抵当権設定登記後に設定登記されたものであっても抵当権者に対抗できる)及び「滌除」(改正前民法378条の規定で、抵当権付不動産を取得した者が、一定の金銭を抵当権者に提供して一方的に抵当権を消滅させるもの)の制度がなくなりました。不動産バブルの崩壊からは遅すぎる改正でした。
民事局に呼ばれて質問された一つに明渡し猶予制度がありました。この制度は短期賃貸借制度の廃止と引き換えにできたもので、正常な賃借人は代金納付後6ヶ月間明渡しを猶予されるというものです。出向裁判官はこの制度の実効性を聞きたかったのだと思われます。借主の実態について種々質問されたことが印象的でした。
こうして挙げていくときりがありません。後に当コラムで触れようと思うものだけをあげておきます。
 
   執行手続関係として当コラムで書こうと思うもののうち、今回の改正点で関係すると推測されるものは、保全処分の要件の緩和、動産競売、財産開示の裁判等でしょうか。
しかしながら裁判所での細かい認定基準等については改正に触れざるを得ない場合もありますのでご容赦ください。
   次回は、早速動産売買先取特権から入ります。


 

 

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