新宿の顧問弁護士なら弁護士法人岡本(岡本政明法律事務所)
当事務所では、上場企業(東証プライム)からベンチャー企業まで広範囲、かつ、様々な業種の顧問業務をメインとしつつ、様々な事件に対応しております。
コラム - 201307のエントリ
会社支配権と破産手続(その1)
- カテゴリ :
- 破産事件
1 会社支配権を巡る破産手続の利用
(1) 小説のような題材が必要
今回から、多少アカデミックに、且つ多少センセーショナルに“会社支配権を巡る企業紛争、それも破産手続を利用する場合”に関し、4回に渡って書いてみます。
何故こんな題材にしたくなったかは、当事務所に就職を希望する司法修習生や弁護士採用面接での質問にあります。当事務所の企業法務の内容に関心を寄せる質問が多いのには驚きます。
でも「企業法務ではどのような事をされていますか」と質問をされてもどのように答えたらいいのか迷うのですね。
「何でもありますよ。時には刑事事件もね」と本当のことを言いますと、その顔つきから「何だ、アカデミックでないな」という反応が分かるからです。もう少しましな返答をしようと思って「やはり労働法に関係した相談は多いですよ」と再度本当のことを言うと殆ど無視ですね。労働法の人気のなさが分かりますし、「そんな泥臭いことは期待していないのだ、やはりアカデミック(?)でないとね」という気持ちがありありと分かるという具合です。私のやるせない気持ちを分かってほしいものです・・。
(2) 当事務所の企業法務度のチェック
私の監査役に関する質問も多くの方から寄せられました。しかし監査役は、少なくとも当事務所の企業法務とは関係ありません。
監査役は、その会社に紛争があっても代理人はなれないですし、私は会社の役員ですから当事務所の若い先生に任せる業務など本来ないからです。会社法を勉強されていれば直ちに予想できることなのに、何故そんなことに関心をもたれるのかと疑問に思います。当事務所の企業法務の程度を確かめておられるのでしょうが、そもそも私はある顧問会社を監査役に振り替えたことについては大変後悔しております。顧問業務は監査役と異なり、会社に対しては外部から第三者的な立場において関与できます。故に、事務所全体で取り組む課題も多く、その違いは大きいのです。
以上のような雑感のなかで、それなら思い切り小説風の題材にして満足していただくのも一興だと思いました。「会社支配権を巡る破産手続の利用」として書きましょう。
(3) 東京地裁破産部のアカデミックな運用
この題材は、東京地方裁判所破産部の事業譲渡に関するアカデミックな運用をも説明することができるのです。
すなわち営業財産に関して事業譲渡が必要な場合、通常は事業譲渡を目的として民事再生の申立をし、事業譲渡をした後に民事再生申立会社については破産決定をして破産手続にのせるという面倒な手続が必要です。保全管理人の制度を使うなら当初より破産決定前の保全管理人として任意売却による財産保全を行い、民事再生手続を省略できるのです。二重の手続を破産のみで済ますことができるのですから、さすが破産部の裁判官は実践的だと当時感心させられました。
2 会社の支配権と破産手続のパターン
(1)通常の顧問業務
通常の顧問業務ではこれから書きます題材は多くはありません。
当事務所では、この事態に至るまでに何らかの結論を出しております。確かに親子紛争だとか兄弟紛争、或いは専務派との争いとかもあります。しかし当事務所では「それどころではないでしょう。もっと前向きに議論しましょう」と言って、仲介に立つのが通常です。当事務所の顧問先が中小企業だからと言われればそのとおりかもしれません。でも、そんな紛争に巻き込まれる前に何らかの工夫をするのが私の職務だと思っております。
確かに末期的状況を迎えて経営方針を巡って争いになり、その相談に来られる案件もあることはありますが、それはそんなに劇的でもありません。
従って、前回からの流れを尊重し、破産関係のコラムの続きとして紹介するのが適当でしょう。紹介する案件は、当時週刊誌に面白おかしく報道されたものと、破産関係情報として流布されたものです。それでも固有名詞の使用を避けるなどして、紹介しましょう。このような心構えこそ氾濫するネット情報社会に対する姿勢とすべきではないかと痛感しております。このように考えます理由は、近時扱った事件の教訓であり、必然として神経質にならざるをえない心境にあるのです。
(2) 会社の支配権と破産手続のパターン
私が東京地方裁判所破産部から調査委員、保全管理人或いは破産管財人として選任された経験の中から企業支配に関係する事案のパターンを三つ程度あげてみましょう。
? 会社の大株主でもある関係会社が現経営陣を追い落とすため巨額の貸付を理由に債権者破産の申立をしたが、現経営陣は当然に争った案件
? 社長追い落とし派が社長を解任して代表者となったため、元社長派が債権者破産の申立をしたものの、現社長派が破産手続中止の申立、後に民事再生の申立をして争った案件
? 会社の支配権を巡り現経営陣が破産申立をしたが、元社長グループは事業譲渡を内容とする民事再生の申立をして争った案件
次回は、破産手続をお考えになる意図から考察しましょう。