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コラム - 201306のエントリ

 

1 免責制度とは
 
(1)    皆さん、破産申立をしたら、破産手続で配当されなかった残金はなくなるとお考えですね。破産をするメリットはこれしかないという弁護士もおります。前回のコラムで書きました破産者に「経済生活の再生の機会」を与えるということです。
これを免責制度と言いますが、このような重大な効果を有する制度ですから、泣き笑いのエピソードは枚挙にいとまがありません。
 
(2)    免責を受けるためには裁判所より別途免責許可の決定を受けなければなりません。私が弁護士になった頃は、個人破産即ち免責を求める事例はあまり多くはありませんでした。破産申立と免責申立が別の制度として存在するような形になっていたことから「木に竹をつないだ制度」などと言われておりました。バブル経済が破綻し個人の倫理観の変遷を経て、平成に入ってから爆発的に免責事件が増加しました。平成18年からの倒産法制の見直しで改正がなされ両制度を統一的なものにしたのはごく最近のことなのです。
 私の笑えないエピソードの紹介から始めましょう。私は、20数年前、約束事により多くの事件を他の弁護士に引き継いでもらったことがあります。今回の改正では破産の申立をすると免責の申立も同時にしたものとみなされるのですが、当時は免責の申立は別途しなければなりませんでした。引き継いでもらった事件には個人破産の申立事件もあったのですが、引き継がれた先生は、破産廃止後うっかりして1カ月以内の申立期限を超過することになったのです。あわてて調べたところによりますと免責申立期限の徒過は、当時機械的に弁護士会より戒告処分に付されるとの情報も得ました(戒告処分は、弁護士にとっては大変なことなので、この近時の改正は大変ありがたい?)。依頼した先生のミスとはいえ、申し訳なくて大騒ぎをしましたが、官報公告が遅れていて助かったことを昨日のことのように思い出します。
 
2 免責されない場合としての浪費
 
(1) 免責されない場合については、免責不許可事由として破産法に列挙されております。
    その要件にあてはまると免責を受けられず借金がなくならないのもご存知ですね。浪費
    や賭博をして借金をしていると免責にならないことも有名です。
 
2) 浪費の事例はたくさんあります。浪費とは「当該破産者の職業、収入、資産状況に照ら
     して社会通念上、不相応な消費的支出をする全ての行為をいい、収入に比して支出の
     程度が過大である場合」をいいます。具体的には、飲食費、高価品の購入、海外旅行
     費、エステ、化粧品、布団、補正下着、英会話、自己啓発セミナーの受講料、株取引、
     投資目的の不動産購入、接待費等も入るのです。
以上は、これまで経験した事例をあげたのですが、これ以外にも競馬の馬主になっている事案もありました(これは浪費でなく、賭博ですかね。本人は馬を見るのが趣味と言っていましたが)。
発覚したきっかけは、破産者の郵便物が破産管財人の私の元に全て転送されてくるのですが、ある日、破産者の所有馬が入選して高額の賞金が出ることになったとの通知がきたのです。驚きましたねー。賞金はかなり高額で破産申立ではなく任意の整理も可能になる金額だったので、徹底して調査をしました。ここで知ったことは、馬も生きていくためには毎日飼い葉を食べないといけない、解約したくても馬の飼い葉料の関係で容易に解約できないこととか勉強になりました。これまでその馬が入賞することなどなかったので、どうせ分からないだろうと放置していた破産者は本当に驚いておりました。
 
(3)    そもそも破産法の改正前(ちょっと前のことです)、浪費は破産懈怠罪として5年以下の懲役になるという条文があったことを知っておられたらビビりませんか。
改正前は、法廷という威厳のある場所で免責審尋期日を入れて丁寧に裁判が行われておりました(今はこんな「丁寧」さはありません)。この免責審尋の法廷で、エステや高額化粧品の購入をばらされたこともありますし、裁判所に意見書が送付されてきたことも多々あります。一つ例を挙げますと「自分は高級クラブでよく酒を飲んでいるが、破産者もよく飲みに来る、許せない」とありました。
頭に来たのは海外旅行しているとの書面が送られてきましたので、書面について説明しないままで破産者を呼び出したら、日焼けした真っ黒な顔で「イヤー、グァムに潜りに行ってましてねー」と悪びれない態度には本当に頭にきましたね。
 
3 その他の免責不許可事由
 
    免責については書き出すときりがありません。
次回は、免責のこと以外を書きたくなる可能性があります。したがって、自宅を親族に売却(廉価売却が通常ですが・・)したことにし、自分の居住場所を確保して破産申立をする方、親族の借金を債権者名簿にあげないで、返済は破産管財人に告げないまま返済を継続するという事例が多々あることについて触れておきましょう。自宅に担保が設定されているのであれば、担保権者により追及されますからこのようなことは起こりにくいのですが、たまたま無担保の自宅の場合には意外とよく起きる事例だと思います。
私が破産申立代理人となる場合には、これらが裁判所に問題にされることを事例で説明し、むしろ逆に危険であるとお話します。これらの行為は、破産債権者を害する行為とい   ことで免責不相当となりますが、破産管財人には容易に見つけられてしまうと警告しております。

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