新宿の顧問弁護士なら弁護士法人岡本(岡本政明法律事務所)

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コラム - 201108のエントリ

 1 解雇を契機とする労使紛争

  中小企業での労使紛争は、理由は種々あっても解雇を契機にして発生することが多い。会社経営を問題にして労使紛争に発展したなどという勿体ぶった説明などできる事件は実際には少ないのです。
弁護士の目から見て、こんな形で解雇をしたら問題が発生しますよと警告したくなるような事件こそが労使紛争にまで発展する確率が高くなると言ってよいでしょう。経営者の皆様、解雇をする際にどれほど厳格に考えていらっしゃるのでしょうか?疑問をもつ事例が本当に多いと申し上げておきます。
そもそも解雇は労働者に対する「死刑判決」と言われることもありますが、文字通り慎重な判断に基づいて実行されねばなりません。解雇が有効であるとして裁判所で認められる事例は、このまま雇用を継続することは本当に会社がかわいそうだと判断できるような限定的な事例に限られると考えてくださって間違いはありません。
 
2 そもそも個人的な理由による解雇が、何故、集団的な労使紛争に発展するのか不思議に思われますか。
 
  何の不思議でもないのです。
労働組合は「労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織された団体」を言うのですから(労組法2条)、個人的な労働条件に関与することも当然のことなのです。特に日本のような企業別組合を中心にして組織され、現在のように組合の組織率の低下を目の前にすると、個人的な解雇に関しても決然として団体交渉の申し入れをして組合員の共感を得なければ組合の生き残る道はありません。
ある学園の校長先生を解雇した事案がありました。管理職の人を中心にして組合員として加入させ、労使紛争を引き受けられている組合に駆け込まれ、泥沼化した状態になって依頼を受けました。私が代理人になった時には、入学式の日にデモが行われ、入学式ができない状況にありました。当然組合員は解雇された校長先生一人ですから、経営者からは、一人のために何故こんなデモが起き、ピケをはられて新入生と親に対するビラ配りをされ、入学式を潰されてしまうのだと大変お怒りを受けました。
弁護士からは、お怒りになるより冷静に対応しましょうと説明せざるをえません。しかし、その場になってみると実際は上記経営者のような対応を示され、冷静に対応されるほうが少ないのです。
 
3 労働基準監督署の介入があるともっと怖い。
 
解雇から労使紛争が泥沼状態になり、経営者が会社を閉鎖するロックアウト(会社側による事業所閉鎖)をした事件を経験しました。経営者からは、ロックアウトしても従業員が会社に出入りしているので一緒に説得に行ってくれませんかと依頼を受けました。工場正門に着き正門に近寄ったところ、正門の近くに停まっていた車からわらわらと背広姿の男3名が走り寄ってきて経営者に手帳を示して何か質問をしてきました。私はとっさに労働基準監督官達だと判断して私が間に入って対応したという事件もありました。
この事件は従業員が残業等法律に基づいた処理が行われていないことまでも含めて訴え、逆に会社がロックアウトしていると労働基準監督署に直訴したものでした。これは大変重大な局面です。
労働基準監督官の権限を知っておられる方は殆どいないと言っていいでしょう。
 
4 労働基準監督官の権限
 
 労働基準法には「労働基準監督官は、事業場、寄宿舎その他の付属建設物に臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができる」(101条)と定め、「この法律を施行するため必要があると認めるときは、使用者又は労働者に対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる」(104条の2)とし、「この法律違反の罪について、刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行う」(102条)と定めています。
  労働基準監督官は警察官と同じ職務権限をもっているのです。
当サイトのバナー「残業代請求は会社を潰す」にあります(3)「強大な権限をもった労働基準監督署が貴方の会社を強制捜査(調査)」の欄をお読みください。そして「労基署の捜査により支払わなければならなくなる金額のシミュレーション」をご覧いただければ、その危機意識を共有されることになるでしょう。
 
5 解雇から職場占拠
 
  解雇を契機にして従業員による職場占拠に至った事例も経験しております。この事件は奇妙な形で終わった案件ですので次回述べますが、個別的な労働条件を巡って種々違った展開をたどることは常で、私達であっても予断を許さないものです。しかも近時は労働審判という新しい解決手段も多用されるようになり、立川支部でも労働審判が行われるようになって1年ほどが経過しました。
つい3か月程前にも解雇を巡って立川支部で争ってきたばかりです。審判法廷にて、開口一番、裁判官が会社側にお金の支払いを求めるというお決まりの手順をたどりました。当方有利に解決しましたが、実態は会社側が圧倒的に大変な立場にたたされるということは間違いありません。
 
 

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