新宿の顧問弁護士なら弁護士法人岡本(岡本政明法律事務所)
当事務所では、上場企業(東証プライム)からベンチャー企業まで広範囲、かつ、様々な業種の顧問業務をメインとしつつ、様々な事件に対応しております。
コラム - 残業代請求カテゴリのエントリ
一 近時、電通事件の影響などから益々労務リスクが高まっているように思います。本当にブラック企業なのであれば当然の報いでしょうが、ブラック企業ではないにもかかわらずインターネット上でブラック企業認定などされてしまえば取り返しのつかないことになる可能性もあります(そのような状況になれば良い人材が取りにくくなり顧客も離れていくことは直ぐに想像できる事柄です。)
労働基準監督署も、長時間労働に対しては刑事処分も含め厳しく対処するようになっていますので、会社としても十分に準備することが必要です。
二 会社によっては、弁護士は紛争が生じたときだけに必要と考え、労務コンサルタントや社会保険労務士だけと契約して労務管理を行おうとしている方もいらっしゃると思います。
確かに、中には優秀な方もいらっしゃいますが、社会保険労務士の労基署対応がまずかったせいで、ブラック企業からは程遠い会社が多大な損害を被った事例については、以前のコラムでもご紹介した通りです。
本コラムでは、現在、様々な制度を導入していらっしゃる会社であっても、弁護士のチェックを通していない場合、労基署が入ったり裁判になったりした場合には通用しない可能性が高いということについてお話ししたいと思います。
三 残業代請求リスクを減らすための制度として、管理監督者や割増賃金に対応する手当(固定残業代、定額残業代など)の支給があることは一般的に良く知られていますが、これらの論点については今までも何度もご説明差し上げていますので、本コラムでは省略します。
本コラムでは、(1)事業場外労働のみなし労働時間制、(2)専門業務型裁量労働制、(3)企画業務型裁量労働制、という少々専門的な制度の導入を例にしてみたいと思います。
四 まず、事業場外労働のみなし労働時間制とは、外回り営業社員などの場合、使用者の指揮命令が及ばず、労働時間の把握が困難となることが多いことから、所定労働時間分働いたものとみなされる制度です。
就業規則を見ていると、営業部員はみなし労働時間制を採用すると簡潔に規定されていることもあり、比較的利用されていることがある制度の一つではないかと思います。
しかし、裁判所は、極めて厳しい判断をする傾向にあります。
例えば、旅行会社の主催する募集型企画旅行の添乗業務について、第1審の東京地方裁判所はみなし労働時間制を認めておりましたが、最高裁判決(平成26年1月24日)では判断が逆転し、適用が否定されています。
平成26年1月24日の判決ですから、それより前から制度を導入している企業の大多数が、裁判になった場合には敗訴すると推測できます。
五 次に、専門業務型裁量労働制とは、厚生労働省令などによって定められた業務を対象として、予め労使間で定められた時間分働いたものとみなす制度のことを言います。
対象業務としては、新商品若しくは新技術の研究開発、システムコンサルタント、記者、編集者、インテリアコーディネーター、コピーライター、大学の講師などが含まれます。
この制度についても、出版社など業種によっては利用されていることがあるようですが、(1)対象業務を遂行する手段及び時間配分の決定等に関して具体的な指示をしないこと、(2)健康・福祉を確保するための措置、(3)労働者からの苦情処理のための措置を定めなければなりません。また、(4)就業規則においても、適切な定めをして労基署長に届け出るなど要件が厳しく規定されていますので、弁護士の関与なしに制度が導入されている場合、無残な結果に終わることが多いと言わざるを得ません。
六 さらに、企画業務型裁量労働制とは、企業の中枢部門で企画・立案・調査・分析の業務に従事するホワイトカラーに関するみなし労働時間制のことを言います。
これについても、「財務・経理を担当する部署における業務のうち、財務状態等について調査及び分析を行い、財務に関する計画を策定する業務」など対象となる業務が多そうに見えることから、導入されていることがあるようです。
もっとも、厚生労働省の指針に違反する制度は、労基法違反となります。
要するに、厚生労働省の指針に基づいて制度を運用することが必要なわけですが、(1)労使委員会の設置や決議、(2)労基署への届け出などが必要になり、(3)運営規程などを作成しないといけませんので、弁護士の関与なしで導入することは非常に困難であり、適切な制度になっていないことが大多数であると思います。
七 以上の通り、弁護士のチェックなしに労務リスクに対応することは困難な時代になってきております。
これから制度を構築する場合には勿論ですし、既に制度を導入している場合であっても再検証し、問題がある制度については変えていく必要があると思います。
残業代請求を受けてしまった場合、制度の導入・見直しをしたい場合には是非当事務所にご連絡頂きたいと思っております。
なお、本コラムについては、下記ページもご参考にして頂けると更にお役に立てるのではないかと思っております。
https://www.okamoto-law-office.com/modules/pico/index.php?content_id=16
一. はじめに
1. 毎月配送される判例時報を纏めて見ておりますが、最高裁判所は、昨年3月6日付にて「(第一審で付加金の支払いを命ずる判決が出されたにも拘わらず)控訴審の口頭弁論終結前に未払割増賃金等の全額を支払って(使用者における)義務違反の状況が消滅したときには、裁判所は付加金の支払いを命ずることができなくなる」旨の判決を出しております。
上記判例は、従来の最高裁判決で疑問になっていた部分に関し、明白にしたものです。つまり、控訴審という第二審であっても口頭弁論終結前であれば、未払い割増賃金等を支払って義務違反の事実をなくしてしまえば、制裁である倍返しのルールが適用されないということを明らかにしたものです。
2. そもそも付加金という倍返しのルール、即ち労働基準法114条「付加金支払」条項については、若かりし時代より特別な思いで対応してまいりました。私の過去などお話ししたくもありませんが、弁護士になって数年で一弁人権擁護委員会副委員長或はその後すぐに日弁連人権擁護委員会委員となった私にとって、倍返しのルールには敏感でありました。テレビドラマ「半沢直樹」シリーズで有名なせりふ「倍返し」ではありませんが、左翼を称される弁護士の世界?では、付加金命令を取ったことがあるかどうかは自慢の種になったものです。その「自慢大会」?に知らぬまに参加したこともあるくらいです。
3. 付加金とは、解雇手当、休業手当、割増賃金、有給休暇の際の平均賃金を支払わない使用者に対して、裁判所は、それらの未払い金のほか、更にそれと同一額の金額を労働者に支払うように命じることができるというもの(法律学辞典引用)で、法律を守らない使用者に対する制裁として裁判所が付加する裁判であります。付加金が訴えの対象となる訴訟物として計算に入れるのか議論したことが思い出されますし、裁判所の命令なので労働審判事件では審判の対象にならないのですが、でも通常裁判に移行する場合も考えて、付加金の申立ても同時にされる弁護士もおられます。
二. 付加金と固定残業代
1. 付加金に関係する残業代といえば、労働基準法に規定のない「固定残業代」をテーマにするのが自然でしょう。必然的に、今回も優秀な社会保険労務士の先生とタイアップして対応しなければならないという結論になってしまいます。
そもそも固定残業代とは、一定の時間外割増賃金(残業代)を毎月の賃金などに加算して固定的に支給する制度です。固定残業代とすることについては判例も認めておりますが、しかし判例が指摘してきた要件をみたす必要があるのです。
通常、残業代を基本給の一部に含まれるものとして支払われている場合、経営者の方は“当社は固定残業代として法律通りに定めています”と説明されます。しかし、実際のところ、判例の基準から外れていることが多いというのが実状です。社会保険労務士の先生など専門家に聞いた上で作っていると仰っている会社でも、判例の基準から外れた規定になっていることが、あまりにも多いので驚きます。
2. 仮に、判例の基準から外れた規定をしていた場合、経営者の方からすれば既に支払っていたつもりの残業代をプラスし(それも残業代を含む高い支給基準の基本金額を計算基礎とする)、更に付加金として二重に支払わなければならないことになります。場合によっては1000万円以上支払う金額になることもあり、労働基準法上の刑事罰すらありうるのです。
平成24年3月8日付最高裁判決、櫻井裁判官の補足意見の要旨「固定残業代の定めがなされている場合、雇用契約上もそれが明確にされている必要がある。支給時、支給対象の時間外労働の時間数と残業手当の額が労働者に明示され、且つ時間を超えて残業が行われた場合には、その所定の支給日に別途上乗せして支給する旨もあらかじめ明らかにされている必要がある」からも分かりますが、固定残業代には今後も厳しい判断が続くものと思われます。
三. 訴訟にしない準備と訴訟になった場合の対応策
1. 残業代請求事件は、いつでもどのような企業でも起こりうる事件です。
従業員に愛を傾けておられる経営者の方に申し上げます。紛争が起きる前に、優秀な社会保険労務士・弁護士等の専門家を入れて事前の検討を行い、「ブラック企業」などと呼ばれない準備が必要です。
2. 仮に、不幸にも訴訟になってしまった場合、労働者側の主張が正しいのかどうかを徹底的に検証して、不当なのであればしっかりと反論していくことが重要です。残業代請求事件は労働者側が有利という前提のため、会社側の大雑把な反論を見受けることも少なくありません。しかし、残業代請求事件における基本的な主張・立証責任は労働者側にあります。会社側で十分に証拠を収集して反論することで、労働者側の主張を弾劾できることも少なくありません。
その例ですが、残業代請求事件において、使用者側の抗弁により、東京高裁で認められた金額と東京地裁で認められた金額に合計1000万円以上の差があったという裁判例を紹介します(東和システム事件 判例タイムズ1367号49頁)。
結論として、ポイントを押さえた主張・立証活動と、しかも粘り強い丁寧な反論が必要であるということです。
『経営者のための
経営者が取組む「残業代請求対策」知恵袋(その1)
- カテゴリ :
- 残業代請求
パート1 〜 事前予防
⇒ 裁判で争うべきか
和解で収めるべきか
労働働基準監督署からの是正勧告や指導を受けた場合にどう対処するか
労働審判を起こされされたらどう対処するか
⇒ 人手・時間・費用等のロス
風評被害の恐れ等のリスク
類似トラブル・損失拡大防止対策等
さまざまな見地からの検討が必要です
詳しくは「残業代請求されないための法的手段」をご覧ください。