新宿の顧問弁護士なら弁護士法人岡本(岡本政明法律事務所)

当事務所では、上場企業(東証プライム)からベンチャー企業まで広範囲、かつ、様々な業種の顧問業務をメインとしつつ、様々な事件に対応しております。

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コラム - 所感カテゴリのエントリ

  1.   農作物や水産物が知的財産権の対象になると言いますと、「どういうこと?」と驚かれる方が、多分、相当数いらっしゃると判断されます。実は、昔の私自身がその一人だったのですから。
     本年41日、農林水産省は、農産物の優良品種が、海外に流出しないようにする目的で「種苗法」を改正しました。同月9日、海外持ち出し禁止の種苗1900種を公表しました。このうちの主な品種を見るだけで、皆様、農産物も知的財産権だねと納得されるでしょう。
    新聞に出ている例をあげましょう。「イチゴのあまおう、ブドウのシャインマスカット、稲のゆめぴりか、リンゴの紅いわて、イチゴのスカイベリー、トウガラシの京都万願寺一号」などです。皆様、「どれもうまいよね」、「これらが日本の特産品であるのは当然だ、何とか保護してもらいたいよね」と納得されるでしょう。そうなのです。我が国独自に開発された懐かしい農水産物も、知的財産権の対象として保護される必要があるのです。
    今回改正された「種苗法」は、特許や著作権と同様、農水産物の品種開発に関し知的財産として評価し、その保護を目的とするものです。我が国固有の農水産物の違法な持ち出しを禁じる法改正なのですが、遅すぎたのではという感想を持つのは私だけでしょうか?
  2.  我が国にて育成された農林水産物に関して「地理的表示制度」が設けられていることについては如何でしょうか。
    「地理的表示法」と言われる法律ですが、平成266月に成立した法律で(本当にごく最近なのです)、正確には「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」と言います。地方(或はその地域)で、長年培われた農林水産物を、表示にて保護する制度です。確かに、農林水産物には、特殊の生産方法を工夫したりすることによって(気候・風土・土壌などの生産地の特性を生かした工夫等)、高い品質や評価を獲得するに至ったものが多々存在します。これらの農林水産物に関し、その地域と結びついた名称を知的財産として保護することを目的とした法制度なのです。この地理的表示保護制度に関し、それを表す英語を略して「GI保護制度」とも言われております。
  3.  私が、農水産物の知的財産としての保護制度、「GI保護制度」による「GIマーク」を知ったきっかけを話さなければなりません。
     2019年発刊の「農林水産関係 知財の法律相談」という本に、我が事務所の副所長が「GI保護制度」について、論文を書いております。私はこの本のお陰で農水産物の知的財産制度に目覚めました。この本は、2019年に発刊されました。上・下巻があり、双方合わせると1000頁に近く、弁護士向けの教科書的な本ですが、この本によって、私も初めて「GIマーク」の存在について知ったのです。
    以下、「GIマーク」に関して、副所長の文章を引用します。

    GIマークは、その産品が日本の地理的表示保護制度の登録を受けているこ  とを示すマークです。マークが日本の地理的表示保護制度のものであることをわかりやすくするため、大きな日輪を背負った富士山と水面をモチーフに、日本国旗の日輪の色である赤や、伝統・格式を感じる金色を使用し、日本らしさを強調したデザインを採用しています。需要者は、このGIマークを確認することで、登録された真正な産品とそれ以外の産品を区別することができます。」

  4.  もっと驚くことがありました。
    なんとGIマークに関して、2番目に登録されたのは「但馬牛」だというではありませんか。
    私は但馬の生まれです。但馬牛と一緒に育ったようなものです。私の生まれ故郷の実家の裏が川になっておりました。そこで、私の小学生の友人が飼育されている牛の体を川の水で洗ってやっているのを見て育ちました。牛に話しかける友人の声も聞こえてきました。
    春になって、牛の売買のための「牛セリ市場」のマイクの声が聞こえてくると悲しくなったものです。
    本コラムで何回か紹介している濱嘉之さんの近刊「紅旗の陰謀」(2021110日発刊)では、神戸牛、但馬牛、壱岐牛の密輸が題材になっております。八重山諸島から牛を積み替えて外国に持ち出す方法も紹介されています。出版された本書の裏側にある紹介文には「国家ぐるみの食の簒奪が明らかになった」と書かれおり、「壱岐牛の精子」の密輸も題材になっております。濱さんの本から引用しましょう。

    「壱岐牛の精子」の密輸は、「家畜伝染病予防法と家畜遺伝資源不正競争防止法、さらに家畜改良増殖法違反です。後の二つはいわゆる和牛の精子の密輸に関するもので、詐欺や窃盗など悪質性の高いやり方で和牛の遺伝資源を取得した場合、個人は最高で十年の懲役、一千万円以下の罰金(法人は三億円)を科すことになっています。厳罰で海外流出を牽制する目的でそれぞれ新設、改正されたんです」

    本コラムでは、牛の財産的価値、即ち、知的財産権として把握する側面から法律論にまで及ぶことを念頭に置いておりました。しかし、濱さんの小説では、牛の精子の密輸まで、鮮やかに法的に結論付けされているのです。
  5.  私の関心事について書かせていただきました。でも、近時の日本における「食の自給率」まで考えますと、今後の農林水産業の行く末に関心を持たざるを得ません。
    次回は、日本の食の自給率等、農業に関係する思いを書いてみたいと考えております。

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1 オウム真理教に関係することを本コラムでご紹介しようとするなら、幾らでもご披露することができます。でもあまりにも生々しくて書きたい題材ではありませんでした。しかし、今回の死刑判決に関係して報道された記事を見ておりますと、猛烈に違和感があります。その最初は、7月6日付朝日新聞を読んでいて、その結論に何が言いたいの?と不満を感じました。その後に続く他の報道機関の対応も似たようなものが多数ありました。
 朝日新聞の署名入り記事の結論は、「集団の暴走を、なぜ私たちは許してしまっていたのか」というように私たちの責任論にしております。確かに私たちは坂本堤弁護士を救えませんでした。でも私たちの責任論にするなら、もっと人間のありように迫るべきです。

2 朝日新聞は、自分達が報道と言う社会的な意義を感じられる業務に埋没していることの自覚が全くありません。恵まれた職業に胡坐をかいていませんかと言いたいのです。そもそも社会のためにありたいという人間の根源的な願望は、人間社会がある限り無くなることなどない自明のことです。オウム真理教事件は、そのような根源的な人間の願望に根差している一面があることに無自覚すぎると私は感じます。
 我々の社会は、これからも常に不平等や不満が渦巻くはずです。そのような社会にあって、みんなのためにと、燃える若者は常に出てくるでしょう。そして皆が幸せになるためなら、その手段を選んでいる余裕はないという若者(否、年配者でもいい)が永遠に出続けるでしょう。その要望を満たすための種々の方法、或いはその手段論を検討するような視点を述べないで「みんなの責任」と言いぱっなしにするのは中途半端ではないでしょうか。
 結局は、民主主義の在り方や、社会のゆがみをどのように糺すのかという方法論にまでさかのぼるでしょう。報道が「みんなの責任」というのなら、先ず報道自身が、今現在有している「心地よい使命」を自らに問い直しして、自らを検証してほしいのです。
 オウム真理教事件を「みんなの責任」で締めくくるのなら、このような視点も示さない限り、今後も発生し続けるであろう似たような事件を終わりにすることなどできないと私は考えております。

3 いづれにしても、私は坂本堤弁護士とお付き合いしてきました。奥さんも一緒に東京クルーズの船でお話ししたことが昨日のように思い出されます。坂本堤弁護士一家虐殺が「みんなの責任」などと言われると本当に腹がたちます。無責任で中途半端な論調は許せません。
 坂本弁護士とは司法研修所の同期で、同じ班で勉強した仲間です。彼は、同期の中でも、社会の役に立ちたいという意欲が分かる珍しい修習生であり、修習後の進路も定まっておりました。そのことを隠そうともしませんでしたが、しかし、人付き合いもよく、バランスの取れた男で、班の人気者でした。
 弁護士になって3年目の冬の夜、飲みにいく道すがら、オウム真理教と信者やその家族との争いで、自分の身に危険が及ぶかもしれないと私に語り掛けてきました。びっくりした私は、心配になって色々聞こうとしましたが、彼は、深入りした話しを避けようとしていることが明白になりました。私も自重して、質問を止めましたが、それが彼と交わした最後の会話になりました。実は、私は、学生時代、社会のためには多少悪いことをしても許されるという思想にかぶれていましたから、どうしてしつこく聞かなかったのかと、当時、自分を責めたものです。

4 彼と彼の家族が行方不明になってから、私たち班の仲間は、彼の行方について何度か話し合いをしました。
 オウム真理教の何らかの行為によることは全員異論がなかったと思います。一人の友人が、彼は、上九一色村の監禁部屋で洗脳されている最中ではないかとの意見を述べたこともありました。私は、機会をとらえて日弁連の偉い先生に次のようなお願いをしました。つまり、弁護士を組織して、上九一色村に大挙して押しかけましょう、坂本弁護士に会わせろと抗議行動をしましょうと迫ったこともあります。でも私は、彼が社会的な意義に燃えてオウム真理教を攻撃しているのですから、自分たちの正義を信じるオウムが監禁して転向させようというような迂遠な方法はとらないとも思っていました。そのせいもあってか、弁護士による上九一色村への集団抗議の提案は立ち消えになりました。
 それよりも検察庁の偉い方に陳情に行こうという、元検察官であった同じ班の仲間の提案にのりました。私は、真実を明らかにするためにも、オウム真理教に対する強制捜査をするしか方法はないと思っておりました。彼と二人で、決定権を有しておられる検察官に会いに行きました。皇居を見下ろす本当に広々とした執務室で、同僚と一緒に上九一色村の強制捜査をお願いしました。でも坂本弁護士が所属する横浜の法律事務所が話題になり、しかも証拠があまりにも不足しているとのことで立ち消えになりました。
 あまりにも残念です。

5 実際に書いた私の原稿に対し、皆様から注意がありました。当コラムが炎上するなどの上品でない話は避けたほうが良いとの提案です。
 残念ですが訂正版を掲載いたします。

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