新宿の顧問弁護士なら弁護士法人岡本(岡本政明法律事務所)

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コラム - 書評カテゴリのエントリ

1.   「国政上、最近、気になることを挙げてください」と言われると、よく考えることの一つとして、「中国の台湾政策に関し、何らかの動きが出てくるのではないか」ということがあります。
 地図を見てもらえれば、直ぐに分かることですが、日本の西の端は、沖縄の与那国島です。その直ぐ傍に台湾があるのですが、その近いことには驚かされます。
 台湾に何かあれば、その余波が、与那国島に影響しない訳がない近さなのです。つまり、中国が台湾に侵攻し、台湾の抵抗が始まるなら、日本の領海域に中国の軍船が侵入することは必然的と言っていいでしょう。アメリカを巻き込めば、米軍は日本を基地にしているのですから、この紛争に巻き込まれるのは必然です。
 広島サミットも閉幕となりましたが、当然、中国は参加しておりませんし、中国の腹を探るような議論も行われていないようです。ウクライナの支援については、ゼレンスキー大統領の広島入りで、「強い協力体制」が論じられましたが、台湾についても何か議論が欲しかったと、つい思ってしまったのです。
 中国が、台湾を中国の一部であると考えるのは、台湾が成立した経緯からしても必然的ではないかと思います。

2.   今回、読了した「天空の魔手」は、台湾に限らず、世界の情勢について種々教えてくれます。発売されたのが今月(5月)の10日ですから、2週間程しかたっていませんが、でも世界の情勢を見ておりますと、早目に読後感を書くべきであろう思いました。
 著者濱さんの考え方に多くの異論が出るのは当然だと思います(あまりにも刺激的で、寧ろ苦情等が出ないかと心配しております)。私自身、議論を交わしたくなる場面も多いのですが、自分の考え方の整理や知らない知識を導入するについては大変面白い本だと思いました。問題点や気に入らない部分を提起して議論を挑むより、小説と割り切って読めば最高だと思いました。
 それに、何時もの濱さんの本の進行形式である会話形式による体裁から、具体的な場面の展開が多くなっており、小説としても、退屈しない内容に仕上がっています。
 濱さんの問題提起は、軍隊と称されるようなものでない警察段階で、しかも「ドローンという戦争兵器とは言えないものを使って、相手の武力を攻撃し、日本を守る」という具体的な問題提起です。小説の形をとりながら、反論のできない提案・政策提起になっていると考えると、凄い内容だと思わざるをえません。

3.   本の始まりは、ドローンを飛ばす競技会から始まります。
ドローンの運転技術を競う大会ですが、将来、その技術が軍事的に使用される展開に発展していくのですから驚きです。軍事的と書きましたが、軍事力ではなく警察段階で処理することにより、憲法の「戦争の放棄規定」を回避しようという発想も凄い。
 日本国憲法第9条を挙げておきます。
[戦争の放棄、戦力及び交戦権の否認]

日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力の威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
 以前の濱さんの本には、今回のテーマに似た内容のものがありましたが、それほど真剣に受け止めていませんでした。そもそも、ここまで憲法や国民の意識に注意を払われているとは知りませんでした。
 確かに、警察が出るだけなら、単なる治安活動であって、戦争状態とは言えません。警察を、戦力とは確かに言わないでしょうね。
濱さんの奇想天外な着想に基づくものですが、やっと濱さんの意図に近づくことができて驚いております。

4.   「天空の魔手」では、このドローンを使って、どのように攻撃するのかという場面も登場します。当然、ウクライナを舞台とする仮想のものとなりますが、新型テルミット弾を装着したドローンの活躍に驚きました。
 でも、この本を書くために濱さんはソ連のサンクトペテルブルクに滞在してソ連内部の情報収集をされたのでしょうね。なぜなら、サンクトペテルブルクの地下鉄の状況や町の描写が詳細で、相当な滞在期間がなければ得られない情報で満載だからです。思わずサンクトペテルブルクを世界地図で確認してしまいました。
 最近、新作が1年単位になっていて、濱さんの体調等心配したことが悔しいくらいです。
 

5.   最後になりましたが「天空の魔手」という本は、本当に面白い。是非、読んでください。

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1.   濱さんの新しい小説が発刊されるのを、首を長くして待っておりました。最近の「動脈爆破」が出されてから2年間近く経っているのですから、友人として本当に心配しておりました。「コロナにでも感染されたのかな」と考えたりして、「電話しなければ」と、思い始めた頃、4月になれば、新刊が出されると聞き、ほっとしておりました。

2.   今回出版された本は「群狼の海域(警視庁公安部片野坂彰)」と題され、“日本海が戦場になる可能性がある”という現在の世界状況をテーマにしております。中国やロシアが、日本海をどう把握し、考えているのかが直ちに理解できる内容になっております。残念なことは、この小説が、ロシアのウクライナ侵攻の前である今年の2月頃までに書かれたということでしょう。故に、ウクライナの話(ロシアの関心等)は、全く出てきません。しかし、それでも本当に面白いのです。
 今までも、濱さんの本は、世界の状況について深い分析がなされておりました。現在の世界情勢を知るのに最適な小説なのです。ウクライナ侵攻について書かれていなくても、ロシアや中国の在り様が生々しく描かれております。
 これまでの私の書評を読んでいただければお分かりになると思いますが、私は、濱さんが描かれる「病院」の世界を「本当かいな?」と読ませていただいていた頃、何度も入退院を繰り返しており、しみじみ感じ入りました。また「背乗り」と称される地面師の活躍する世界等、随分面白く読ませていただきました。この小説で、地面師と呼ばれる詐欺師が弁護士を騙した題材となる同地域は、私が何度も調査に行った場所でした。その当時の破産事件、且つ、歩き回った目黒川の周辺をありありと思い出しました。
 その他、偶然にも私の関心事と一致する題材が本当に多く、何時も書評を書くのが楽しみでした。

3.   今回の「群狼の海域」でも、面白くて、勉強になる内容が“てんこ盛り”です。
 「群狼の海域」の始まりは、幾つかの市役所等の職員の間で国際結婚が流行しているという事実に対する分析から始まります。結婚相手の多くがロシア人だというのです。これまでの私の経験では、上記のようなデータは本当に事実を基礎にされています(未確認ですが・・)。濱さんは、小説だからと言って“でっち上げ”をしないのです。
 ところで、地方公共団体職員の国際結婚により、我が国(あるいは当該地方)の秘密となるべき情報が相手国に筒抜けになるという危惧感が出てくるのは当然でしょう。ロシアや中国が関心を持つ地域と上記市役所等の地方公共団体との分析の結果から、濱さんの関心も日本海になります。
 この小説のプロローグは、上記分析を後回しにして、能登半島の視察から始まります。視察と言っても、能登の輪島を中心とする「日本の原風景」が鮮やかに描かれているのです。この描写では、能登半島先端にまで行ってみたくなりますね。私は能登半島の入り口である七尾市に行ったことしかありません。法律相談の出張所を作るため随分色々と地方視察をしましたが、能登半島の北端まで行って視察した濱さんが本当にうらやましくなります。
 それだけではないのです。なんと上記分析から、ロシアやロシアマフィア、そして中国の調査のため、中国やロシアをモスクワまで旅するのです。第一の経路は、ロシアのウラジオストクに始まるシベリア鉄道です。世界一に長い鉄道路線なんですよ。しかも日本海に面するウラジオストクは、60万人の人口を抱える港町で、日本史でもよく登場します(行ってみたいですね)。
 第二の調査対象の路線は、中国大連から始まります。原子力潜水艦造船所のある葫芦島市に始まり、北京より内モンゴル自治区経由でモンゴル縦貫鉄道、ウランバートルへ向かい、ロシア連邦ブリヤード共和国ウラン・ウデで、シベリア鉄道に合流するというものです。世界地図を見ながら確認しないと全く分かりません。
 濱さんが、この旅行で実体験をされていたため、今回の新作の登場が遅れたということなら、本当に羨ましい限りです(心配して電話なんかしなくてよかったというのが本音です・・言い過ぎですかね)。
 

4.   濱さんは、ロシアの最大の関心事について、“日本の防衛状況”を知るためにあると書いておられます。でも、本日の日本経済新聞では、自衛隊と米軍の大規模な共同訓練について、「日米、北海道で今秋訓練」、「対ロシア・中国を念頭」と大見出しで報じています(2022424日朝刊5面)。日本の軍備状況など筒抜けですね。でも濱さんの作品のおかげで、このような報道にも関心が出てきました。ウクライナ侵攻などを考えると私の考えが浅いことが明白です。しかも本作の最後の章立てで「日本海海戦」とあり、ロシアや中国の原子力潜水艦との戦いが描かれております。AIを駆使した内容で、水中固定聴音器という地球規模の海洋監視システムが活躍する内容です。先を行き過ぎていて、私には、楽しむというより勉強するという内容でした。
 本書は、最新情報満載ですが、小説としての遊びもあります。
 後半部分になりますが、日本の警視庁公安部3名の調査活動を監視或いは妨害する敵対国集団との戦いが描かれております。その戦い方が奇想天外なのです。相手方に対して毒薬を注射するというもので、活劇でないのが残念でした。
 本当に時期に適した小説です。私にとっては、小説と言っていいのか疑問ですが・・。「教科書」みたいなのです。

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  1.   小説家池井戸潤氏が書かれた「下町ロケット ヤタガラス」(20189月刊)を読んだとき、宇宙を飛ぶ人工衛星が、今後の農業に深く関係していると初めて知り、驚きました。でも2年程前のことで、現実的なこととして実感できておりませんでした。
     ところが最近の新聞報道で、これからの農業には宇宙開発が切り離せないものであることを知り、しかも現実化していることを知って、更に驚いたのです。
     新聞報道ですが、例えば、有機農家「金沢大地」という会社が紹介され、同社が金沢市の郊外において有機農業を展開し、現在では能登半島にまで耕作地を増やしている状況が報道されております。また、イチゴやリンゴ、稲作の工夫や養蜂等、農業に関係する報道も数多く、このような記事が、数多くの人に読まれることにも驚きました。
     今回のコラムを書きたいと思った経緯は、スマート農業に人工衛星が役立つと知ったこともあります。弁護士になった頃、知り合った宇宙開発の会社(残念にも無くなっております。宇宙開発が事業として成立しない頃のことです)の方々に会った際、「役に立ってますね」と、お互いに喜べると思ったからです。
  2.  北海道におけるスマート農業の紹介報道によって、「下町ロケット ヤタガラス」を思い出しました。その中でも、「北海道 十勝 更別村」の報道で、無人トラクターが出てきます。
     現在の日本農業が危機に直面していることは皆さまご存じのことです。農業人口の減少と老齢化は、新聞報道を見るまでもありません。それを防ぐスマート農業に欠かせない課題が無人トラクターだというのです。無人トラクターが何故必要かは新聞報道だけでなく、「下町ロケット ヤタガラス」を読んでください。ページに限界があるのですが、多少紹介しましょう。
     農業人口の減少と老齢化を防ぐには無人トラクターが必要なのです。
     確かに、農業従事者の平均年齢は67歳を過ぎております。畑や田んぼの農耕(開墾、田植え、刈り取り、運搬等)を無人トラクターが人力に代わってやってくれるなら、大助かりです。しかも肥料や殺虫剤等も無人トラクターがやってくれるなら、人力は殆どかからなくなります。大自然の中で、緑に包まれ、鳥の鳴き声を聞きながら、無人トラクターのやってくれた仕事をチェックしていればいいなんて、子供のころ、農業の手伝いをしていた私には「楽しすぎでしょう」などと悪口も言いたくなります。
     このようなスマート農業が定着すれば、泥臭い肉体労働が減少するのですから、若い人も農業に従事してくれるようになるでしょう。
     無人トラクターが、廃れた農業を回復させるのです。
  3.  でも、無人トラクターの業務は大変なのです。
     田や畑は、畝があり、高低差があります。しかも水をやったりして泥まみれの土地もあり、肥料や消毒剤も的確な地点に入れねばなりません。しかも、田や畑の土地は、トラクターの重みで地形が変わり、一度通ると変化するらしいのです。
     トラクターは、このような微妙な土地の状況に合わせて移動し、しかも誤差なく開墾、田植え、刈り取り、肥料散布をしないといけません。そこで人工衛星が登場するのです。人工衛星の指示により数センチ(?)の誤差もなく田植え、耕作、刈り取り、水やりをし、肥料をやるようにするというのです。すごすぎますね!
     私には知識がありませんので、「完全無人のトラクターで社会課題を解決 自動化で変わる日本の農業の姿」と題されたネット記事から引用させていただきます。
      「農林水産省では3段階のレベルを規定しており、自動車メーカー同様に各農機メーカーがそれぞれに試行錯誤しながら研究開発を進めている段階だ。(略)ただ、いまだレベル3の無人運転にはたどり着いていない。われわれはクボタにGPUが搭載された組み込みボードを提供しつつ、どのようなAIを載せるのか、コンサルティングを交えつつ進めており、レベル3の達成はすでに技術的には可能と考えている。クボタでは2030年を実現目標に掲げているが、実際にはもう少し早くできるのでは・・」と記載されています。
  4.   実は、「下町ロケット ヤタガラス」という本の紹介もしたかったのですが、書くことが多すぎます。
     でも、この本を書かれた下敷きとなる知識が、北海道大学教授野口伸先生の研究にあることを紹介したいのです。先生は、北海道大学のビークルロボティックス研究室にて農業ロボットに関する研究開発をされているそうです。先生のお話を紹介します。
     「ICT(情報通信技術)やロボット技術などの先端技術を用いた農業のことは、日本では『スマート農業』という用語で広く知られています。『スマート農業』を導入することで農業の姿は大きく変わります。農家の経験と勘に依存した農業から『データに基づく農業』への転換は、新規就農者の促進にも有効であるため、ICTやロボットを高度に利用した農業のスマート化は日本農業が抱える問題を解決するうえで極めて重要なのです。」
  5.  最後になりましたが「下町ロケット ヤタガラス」という本は、本当に面白いですよ。私には、下町工場の苦闘や農業の抱える問題以上に、現実に帰農した元サラリーマンの出くわす苦闘の場面が本当に面白かった。
     是非、読んでいただきたいと思いました。

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1.  令和31011日、日本加除出版株式会社より、上記題名の本が出版されました。著者は、当事務所の弁護士岡本直也です。
この本を紹介するのは、所長の岡本政明でありますが、弁護士の方だけでなく、経営者の皆様や企業を立ち上げられる一般の方々に、是非とも、読んでいただきたいと思ったからであります。
 そもそもこの本を出版していただいた出版社「日本加除出版株式会社」は、弁護士の方々のために、法律専門書を中心に出版される会社であります。一般の方がこの本をお知りになる機会は先ずないと判断できます。このような状態は、あまりにも勿体ないと思いました。しかも著者の苦労も報われないでしょう。
この本は、実務に即しているというだけではないのです。専門用語も平易に分りやすく説明されているのですが、よく読んでみますと事例形式に即しているからです。経営者や人事を扱われる方々には、日々の体験から直ちにご理解いただける様式になっております。
 経営者の皆様が、会社に蓄積された独自のノウハウを、退職によって持ち出されるのではないかと心配され、一方、退職者は、どこまで次の会社で利用できるのかと心配されるのは当然な話しです。この本は、その具体例だけでなく、それを防止するため、事前に作成される就業規則、或いは誓約書等にまで及びます。
国の多様な対策も紹介されております。令和34月版の「厚生労働省モデル就業規則」が紹介されているのには驚きました。

2.      今回紹介する本が出されるようになった経緯は、当事務所のホームページで掲載されているコラム欄にあると考えております。
コラム欄をみていただけると、岡本直也弁護士が執筆した「情報管理、不正競争」が20項目に上っていることが分かります(コラム欄にあります「カテゴリ」の欄をチェックしてください)。
 損害賠償の具体的な請求額・認容額を掲載したコラム欄も数回に及んで掲載されております。数字で具体例を挙げられると分かった感じが強いですね。
経験した事件も掲載されておりますが、もちろん、当事務所の扱った具体例が分かるようなコラムはありません。私は、思わずニヤリとしましたが・・。
 つい最近のコラムでは、経済産業省が立ち上げた「営業秘密官民フォーラムメールマガジン」に掲載されたものが載っておりました。「営業秘密官民フォーラムメールマガジン」が設けられた経緯は、2015年、経済産業省が営業秘密の漏洩等の対策等、官民で情報交換をするために設けられたものだそうです。

3.      今回出版された本の表紙に付けられた「帯カバー」に書かれた宣伝文を見てみましょう。
「類型別に競業避止、営業秘密侵害等の不正競争防止に関する実務と裁判所の判断のポイントがわかる」とされております。
「企業法務にかかわる実務家が持っておくべき一冊」と大きな字で書かれ、横に「全80問 190の裁判例で解説」と記載があります。
上記宣伝文からしても、弁護士等の専門家向けの書籍として発刊されたことが明らかです。でも私は、「そんな勿体ない、一般の人にも読んでもらいたい」という思いで本コラムを書いております。
 その次に小さめの字で書かれた内容紹介を見てください。これこそ会社経営者や逆に離職して事業を起こそうとしている人向けの内容ではありませんか。
その内容を紹介します。
「兼業を許容する場合、どのような規定を置けばよいか」
「退職後・退任後の競業避止義務に関する合意の有効性を判断するにあたり、裁判所は、『使用者の利益』について、どのように判断しているか」
「秘密情報の管理をするための就業規則の規定はどのようなものが考えられるか」
「フランチャイズ契約における競業避止義務違反に対して、どのような請求をすることができるか」
どうですか?法律家でなくとも十分に理解できる論点ではありませんか?

4.      私は、本書籍にあるコラム欄(「COLUMN」の記載)が気に入りました。当コラム欄は、11項目記載されておりますが、コラムを読んでいると、つい本文が気になり始めます。そこで本文の解説を読み、且つ裁判例を読んで納得したことが印象的でした。
 変わった読み方ですが、お忙しい方は、コラム欄からお読みになることもいいと思います。

書籍は↓からご確認ください。

 https://www.kajo.co.jp/c/book/07/0704/40899000001

 https://www.yodobashi.com/product/100000009003483034/

https://books.rakuten.co.jp/rb/16891270/

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 今回のコロナ騒動では、いろんな本を読みました。今まで読めずにいた大量の買い置き本にも挑戦しました。

  念のため、3月の終わりに新宿の紀伊國屋書店に行ったところ、新宿通りに面する店頭に、うず高くコロナ関係の本が積まれておりました。「ペスト」(カミュ著・新潮文庫)と「首都感染」(高嶋哲夫著・講談社文庫)が中心でしたので、この2冊と、店内に入って「カラスは飼えるか」(松原始著・新潮社発行)、「生きる稽古 死ぬ稽古」(藤田一照 伊東晶美著・日貿出版社)等、数冊を購入しました。

2 大量に読み始めて驚きました。好きな本に対する一体感が、前と違っているのです。

  例えば、私の愛する宮部みゆきさんの買い置き本を読み始めると、作り物めいていて最後まで読めない自分を発見しました。宮部みゆきさんの小説は、見れば直ぐに買ってしまうほどの大ファンでしたので、作品の中に没入できない自分に驚きました。考えてみますと、昨年、体調を壊してから、食べるものに注意する生活をしており、今回のコロナ騒動で相当に精神がまいっていたように思います。自分の経験と違う世界や、作り物めいた世界には、のめり込むだけの柔軟性がなくなり、我慢して読むだけの余裕がなくなったのかなと疑問に思いました。でも「生きる稽古 死ぬ稽古」も最後まで読めません。何回か挑戦しましたが、「まだ早い」とでも感じているのでしょうか? 

  このような精神状態のなかで、買い置き本の一冊「ニッポン泥棒」(大沢在昌著・角川文庫)は、大喜びで読了しました。脇役で登場する「細田」という男が気にいったのです。この脇役は、私の人生と似ている側面があると感じ入りました。買った当時、本の紹介欄をみただけで、読む意欲を失い、長い間放置されていた本ですが、著者の思惑と多分違う場面で楽しみました。後半、この脇役の自分らしさを出す場面が減ったのは不満です。

「ペスト」ですが、実は大昔、一度挑戦して読みづらくて放棄した過去があります。今回も挑戦しましたが、読むのに苦労し、他に読みたい本があるので止めました。翻訳がまずいのか、文章のみが、だらだらと続くという感じで、一気読みできないのです。

同時に購入した「カラスは飼えるか」(松原始著・新潮社発行)は、楽しく読了しました。

読む人への配慮も必要なのですね。

3 今回、書評したいと考えた小説は、濱嘉之さん「警視庁公安部・片野坂彰」新シリーズ第二弾「動脈爆破」です。

現在の世界状況を踏まえた最新の小説で、未知の情報で一杯です。新聞報道でも、シリア内戦、リビア内戦、ロシアとトルコの介入など国際情報がよく掲載されていますが、濱さんの小説はこれを越えていて、つい中東地域の地図を広げてしまいました。本作品は、シリアの北部、トルコとの国境に近いアレッポという町で、日本人3人が行方不明になるという事件から始まります。

現在の電子情報戦に関係するスパイ活動などを超える面白さです。私は、前回の「国境の銃弾」の書評で、文藝春秋の昨年9月号の特集目次を挙げて、濱さんの情報の新規性を示しました。

今回の作品では、物語性も十分に組み込まれています。特に、誘拐された男性が、自ら生き延びるために、シリアの反政府勢力の一員として戦闘に参加するという筋書きは本当に面白い。奇想天外ですが、小説として最高の着眼点だと思いました。

中東の武装組織が、爆破にドローンを使うというのにも驚きました。しかも、それを日本の新幹線の爆破に使うというのですから着想が凄い。否、着想でなくて、実際にイスラム原理主義者によって計画されている事実だとしたら・・。

コロナで危ぶまれていますが、オリンピックの開催等を考えると、本当に計画されているのではと?思わず考えてしまうのですから、本当に怖い小説なのです。小説の枠を超えてる・・と思いました。

ドローンは、私の家でも一台購入しているぐらいですが、実際に、ぞっとする話なのです。

4 「ペスト」と一緒に購入した「首都感染」ですが、10年前に出版された小説とは思えない、現時点における急所を突いた傑作です。

今回のコロナウイルスと同様、致死率の高い、強毒性インフルエンザ・ウイルスに対処する作品です。ものの見事に東京都を封鎖して感染拡大の防止と、ワクチン開発を猛スピードで実行する話なのですが、実際に現在のコロナ騒動と似ております。

上記のような展開を実行するため、この小説の主人公は、WHOで働いていたことのある専門の医師を配置しております。しかも、彼は、時の総理大臣の息子であり、且つ、厚生労働大臣と個人的な関係があるということになっております。これが味噌なのです。つまり、逆に言うなら、首都封鎖とか、緊急のワクチン開発とかのためには、上記のような人間関係がないと実行できないということになりませんか?

今回のコロナに対する政府の対応等を思い出しながら、この小説を楽しんでください。

この本を紹介することは、今回の政府の対応策と比較して諸種の論争を引き起こす可能性が出てきます。このようなことは、本コラムにふさわしくないと思い、上記の程度で終わりにします。

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1.     「国境の銃弾」は、先月(8月)10日、文春文庫より出版されました。

この本は、濱さんの「警視庁公安部・片野坂彰」新シリーズの最初の本ですが、現在の朝鮮半島問題について、公安小説を通して考えることのできる傑作です。
実は、出版された同日に本書を入手し、直ぐに読了しました。
韓国が見える対馬北端の展望台から事件が始まるのですが、一度、行きたいと思っていた対馬に対し、強い郷愁に誘われました。8月6日、7日に開催される対馬の「厳原港」夏祭りや高麗王朝の使節を昔語りとする「朝鮮通信使の行列」をネットの写真でみたりして、事後の余韻を楽しんでおりました。数年前、仏像盗難事件から、日韓関係が悪化し、お祭りの前記「朝鮮通信使の行列」を廃止するという話しがあったことも漠然と覚えておりましたので、最近どうなっているのか、知りたかったのでしょうね。

2.      ところが8月23日、各新聞が一面大見出しで報じました。

韓国による「日韓軍事情報包括保護協定」(GSOMIA)の破棄通告です。北朝鮮のミサイルに対応できるのか、私は不安を感じました。
その後、問題はどんどん拡がり、現在は、両国の輸入関税問題、韓国の日本製品不買運動にまで発展し、世界貿易機関(WTO)をも巻き込んでいるのですから、日韓関係の将来に不安を感じない人はおられないでしょう。
朝鮮半島問題に少しでも関心をもたざるを得ない社会状況に突入してしまったということは、過熱する週刊誌報道やテレビ報道からも顕著で、逆に、最近は、過熱する報道叩きも盛んになりました。

3.      問題点は何か?

論点整理をするなら、文藝春秋9月号の特集目次を挙げるだけで十分でしょう。9月号は、上記の破棄通告前に出版された本ですから、冷静に読むことが可能です。近時問題になっている週刊ポストの記事が大衆迎合主義?と言って騒がれておりますが、現在ならもっと過激化した論文が並んだはずです。
文藝春秋の目次の筆頭では、次のように題しております。
「輸出管理の先にある『日米同盟vs統一朝鮮』」
次に、大きな字で「日韓炎上」と題され、その横に「文在寅政権が敵国になる日」と記載されております。韓国問題に詳しい著名人が、次のような順で、各章を執筆しております。再度、目次を見ましょう。
  日韓基本条約を踏みにじる「歴史の恨」  黒田勝弘
  慰安婦「贖罪」が韓国に利用された  櫻井よしこ
  徴用工判決は「李氏朝鮮」への回帰である  宮家邦彦
  文在寅「ひきこもり大統領」の危ない戦略  牧野愛博
  日米合同演習「脅威国」は韓国  麻生幾
 冷静に考えるなら、論点はこんなところかもしれませんが、「8月初めの出版物」です。紛糾する現在の論点と変わりがないことに、私は驚いております。歴史的な検証からは当然なのでしょうか。 

4.      もちろん、「国境の銃弾」は小説ですから、上記のような論点を飛躍する部分もあります。北朝鮮主席の暗殺計画や北朝鮮の内部に宗教組織が絡んでいるなど、小説だから書けるのでしょうが、本当のことは分からないものの、さもありなんと思ってしまうのです。

でもその背景事実については客観的な論拠を指摘されております。特に、北朝鮮に関係する中国とロシアの利害や国益の分析、或は文在寅大統領の分析など濱さんの小説のほうが面白いし、勉強になると思ってしまうのです。特に、私は、「韓国のり」に一時期はまっており、食しておりました。でも韓国の沿岸汚染からは、注意しなければならないことも大変勉強になりました。
ところで、本小説のもう一つのテーマは、ファインセラミックスの銃弾で、3人の頭部を一発で貫通するという驚くような銃器の使用にあります。ダイヤモンド加工の技術についてアントワープまで探索し、事実を明らかにされていくと世界旅行もしたくなります。この同じ銃器が東京大学構内でも使用され、二人の政治家が暗殺されるという話しの「ぶっ飛び方」には、ちょっとついていけませんでした。大きな二つの筋の話しに勿体なさを感じてしまいました。私は、余程、対馬の現場の話が気に入ったのでしょうね。

5.      濱さんの小説は、話の進行が二人語り形式(会話形式で物語が進行する)で進行することが多いのですが、今回、同じ朝鮮との関係から、昔からの愛読書「徳川家康 全16巻」(著者山岡荘八 講談社文庫出版)を思い出しました。歴史上、「文禄・慶長の役」と言われる豊臣秀吉の朝鮮に対する出征ですが、第14巻「明星瞬くの巻」から第16巻までがこの時期の話になります。対馬から直線距離で僅か50キロしかない距離での戦いであっても、秀吉不利となる歴史小説です。山岡荘八さんの小説は、その登場人物の心理描写が中心になって、歴史に関連付けされて進行します。濱さんの作風と比較し、その違いに驚きます。

豊臣秀吉の話を出しましたが、対馬と朝鮮との接近した隣国関係では、日本からのみの侵犯だけが歴史ではありません。倭寇だけでなく、朝鮮からの海賊行為もありました。
このような歴史は、ご存知の方も多いでしょうが、一方だけを批判している訳ではありません。
今回のコラムでは、濱さんの小説「国境の銃弾」が面白く、楽しませていただきましたという読後感をお知らせ致します。

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1.  月初めから、濱さんの出版物のなかでも、どうしても紹介したいと考えておりました「爆裂通貨」(文春文庫)を読み直しておりました。ところが、なんと、今月10日、青山望シリーズの最終巻と銘打って「最恐組織」と言う本が出版されたのです。次々と出版されるエネルギーとその最新情報には驚きです。
 この本がシリーズの最終巻ですから、青山望以下4名のカルテットが、それぞれ次の人生に、どのように踏み出すのかも描いております。長い間、青山望シリーズを読んできた私には、彼ら主役4名が、次にどのような人生を選択するのかという展開に、大いなる興味をそそられました。読後感として感慨深いものがありました。
 もちろん「最恐組織」でも次々と起こる社会事象に対し、その視点の持ち方を示してくれております。特に、北朝鮮という国の在り方や、中国が関与するサイバーテロに対する見方については大変勉強になりました。驚きは、近時、中国関与のサイバーテロが公然と話題になってきたことです。今日この頃、この事件が毎日のように新聞で報道されるようになったのです。濱さんの最新情報には何時も驚きです。
 これで港湾埋め立て地や造船等に関係する利権を巡る犯罪でも起きれば(これも「最恐組織」のテーマです)、濱さんを「預言師」とお呼びしないといけません。

2.  本年410日発刊、同シリーズの「爆裂通貨」に入りましょう。
 前回の書評で、日本人でありながら、戸籍のない人が一万人近く存在するという事実について、衝撃的だと申し上げました。
 私は、高校時代から社会の矛盾を追っかける変な癖がありました。半世紀以上前になりますが、「爆裂通貨」で紹介されていると同じような人たちが生活される区域を見に行ったことがあります。私が見た地域は本当にひどかった。同じ頃、河川敷で生活される方々の地域も訪問しております。こちらで生活される建物の壁は、段ボールが中心で、本当に寝起きするだけの空間でした。濱さんも、「爆裂通貨」の第4章で紹介されている地区を、今回、ご覧になったでしょう。当該地域で生活されている方々への配慮が伝わってくる押さえた描写に、濱さんの思いが感じられます。
 現在の状況は「爆裂通貨」で知るしかありませんが、でも、まだそんな地域があること自体が驚きです。

3.  本論の無戸籍者に戻りましょう。
 自分のことで恐縮ですが、私は弁護士になると同時に人権擁護委員会に入り、すぐに人権救済部会の部会長となって、無戸籍者の方の事件も経験しました。でも、この殆どの方は、お母さんが、子供の出生届をしないというようなものが中心でした。その中でも、民法第772条の嫡出推定規定に反発され、前夫の子供と認定されたくないからという、意識的な事案もありました。嫡出推定に関する本規定は、再婚禁止規定(民法第733条)との期間が異なるなど、その問題点も指摘され、改正の議論もなされております(今回は触れる余裕がありません)。
 しかし成人になられ、通常の生活をされている方で、無戸籍者であることが中心の論点になる私の関与事件は、「○○の国」の国籍取得が最大の事件でした。この事案を多少述べても許されると思いますが、敢えて詳細は省きます。概略だけですが、人権救済部会の先生方と一緒に、訴えの相手方を日本国として、その方の「○○の国」の国籍を認めよという裁判を起こしました。裁判所も検事の方も本当に協力していただきました。無事、「○○の国」の国籍を認めるという判決をいただいたのですが、「○○の国」の裁判所は、日本の裁判は関係ないとして、これを認めてくれませんでした。○○領事館の方とも相談して行ったことでしたが、○○の日本に対する国際感情を肌で知る事件でした。国際感覚がなかったのですから、濱さんに笑われますね。

4.  当時は、日本で生活される外国籍の方の相談や事件は、刑事事件も含めて多数ありました。韓国の方々も戦後の特殊性から、人権救済関係の相談も種々ありました。日本で生活される韓国の方々の、生活保護や年金など、その多くが議論され、結局裁判になった事例もありました。確かに国民の税金で処理される案件ですから、その是非を論じるべき過渡期は当然にあるものだと判断されます。
 私は、弁護士になって数年で、日弁連の人権擁護委員会の委員になっております。東京弁護士会の先生から数年でなるなんて生意気だと非難をされたこともあります。でもこのような活動を通じて、先ず相談をできる場の拡充が必要だと思うようになりました。あらゆる法律問題を相談できる場を設け、そこで吸い上げる必要があるという将来像を言うようになって、人権擁護委員会からの派遣と言う形で、第一東京弁護士会法律相談運営委員会委員になりました。その数年後には委員長になり、東京三弁護士会法律相談協議会の議長にもなりました。このような私事を述べさせていただくのは、人権擁護委員会も法律相談運営委員会も、その在り方が少しずつ変わってきたという現状と、その存続の厳しさを述べたかったのです。つまり、人権救済部会の案件は、刑務所等の拘禁施設における人権侵害事件が中心になり、昔のように種々の事件は少なくなりました。法律相談運営委員会も、無料相談やネット相談の増大で、相談センターの運営費も出ない状況のなかで揺れ動いております。昔のように、皆様の役に立っていると自慢できるのか少々不安です。しかし、これも時間の流れの中では仕方のないことなのでしょうね。次の展開を考えねばならない時期に来ているということだと思います。

 濱さんから勉強して、次を予測しましょう。

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1 先日、女房が「濱さんがテレビに出ているよ」と教えてくれました。駆けつけて見たテレビでは、濱さんが話題の中心になっていました。濱さんは、テレビ出演した最初の頃、テレビ局で準備された仕出し弁当には手を付けなかったという話です。濱さんは、公安刑事時代から、出された食事には手を付けないという信条の話しをしておられました。そういえば、濱さんをお呼びして、私の事務所の皆さんと食事した時にも、同じ話で盛り上がったものです。
 濱さんとの付き合いは、濱さんが警視庁を辞められて、危機管理の会社を立ち上げられた当時からのお付き合いです。このコラムでも何回も登場していただきました。1年ちょっと前のコラムでも、私が、200万部出版記念会の最初の挨拶をした話を書いております。そんな仲なのに、濱さん出版の本に対する書評がないことに突然気づきました。
 濱さんの小説は独特で、読ませていただく都度、随分勉強させていただいております。濱さんの本の紹介をしていないなんて、許されるはずがありません。

2 ところで、ネットや出版物では、濱さんの作家デビューは2007年「警視庁情報官」とされています。でも私は、2006年8月16日発刊の講談社出版「警視庁少年課事件ファイル」が最初の出版物だと考えております。だって、最初の処女作を書かれた時、私の事務所にある少年事件関係の資料や参考書を大分お貸ししました。この処女作出版記念会の司会は私が仰せつかっております。参加者には警察関係の方が多く、多分公安関係の方も多数参加されていたのか、雰囲気がちょっと違って大変面白い経験をさせていただきました。
 著者名は駒田史朗になっているため、デビュー作品とされていないのでしょうが、実に勿体ないと思います。
 この本では、少年事件の洗いざらいが書いてあります。少年事件の実情が手に取るように分かります。また、当時のネットの発達状況に、ついていけない刑事さんが登場したりして、今読み返しますと、思わず笑ってしまうのです。著者名等の関係で、訳がおありなのかもしれませんが、敢えて紹介させていただきました。

3 濱さんの出版物紹介に際して、最初にお話ししたい内容は、先ず、びっくりするような最新情報が書かれているということです。
ここ1年間でも、毎回勉強させていただいております。
先ず、紹介する1年間の出版物をあげておきましょう。
①昨年2017年12月発刊、警視庁公安部青山望シリーズの「一網打尽」(文春文庫の出版)
この作品は、随分利用させていただきました。
本書では、地面師の詐欺事件について紹介し、このような手口を「背乗り(はいのり)」と言うそうです。拉致事件でも使われた手法らしく、北朝鮮スパイが良く使う手法と紹介されています。
②本年4月10日発刊、同シリーズの「爆裂通貨」(文春文庫の出版)
北朝鮮のサイバーテロ、仮想通貨が題材ですが、衝撃は日本人でありながら、戸籍のない人が一万人近く存在するという事実です。弁護士として衝撃的でした。私は韓国の方の類似の事件を扱ったことがありましたので、本当に新鮮でした。
③本年7月19日発刊、院内刑事シリーズの「ブラック・メディスン」(講談社α文庫の出版)
この作品は、病院での危機管理が中心です。目新しいトピック作品で、「弁護士の活動領域も広がるのではないか」と新鮮な印象を受けました。

4 では「一網打尽」です。
 今年年頭、ある一部上場企業の新年会に呼ばれ、1000名程度が集まっている会場で新年会の祝辞を述べる役を仰せつかりました。私は、今後のビジネスで注意するべきことの一つとして、「成りすまし」事件について、この小説に書かれている内容を紹介しました。この時、「一網打尽」を掲げて実際に紹介しております。
 ところが驚きました。その直後、「成りすまし」による不動産詐欺事件が爆発したのです。そうです。積水ハウスが、東京五反田にある老舗旅館「海喜館」の土地売買に際して、おかみさんの「成りすまし」による詐欺にあったのです。その損害が63億円というのですから驚きです。近時、毎日のように主犯格逮捕というように報道されております。真相解明は、まだ先ですね。
 そもそも「一網打尽」が書かれた時期には、全くそのような話題はありませんでした。しかし、私は、「判例時報」という判例情報誌を愛読しております。同誌にて(「一網打尽」が出される直前です)、弁護士が「成りすまし」を見抜けず多額の損害を出したことに関する東京地方裁判所の判決が掲載されました。弁護士は、本人確認義務を怠ったとして損害賠償請求をされ、「1億6044万4218円を支払え」との判決が出されたのです。私はこの判決にショックを受けました。弁護士に損害賠償が認められるのは初めての事例で、これまでは司法書士等の先生方の判例ばかりでした。それらを読んで、「やっぱり弁護士でないとね」と当然のように思っていたことが裏切られたのです。

5 弁護士が、本人確認義務を懈怠した東京地方裁判所の判例について紹介したかったのですが、ページが無くなりました。でも当該弁護士の仕事ぶりには、同業者として腹立たしいものがあります。裁判所も、誠実に事件に向きあっているなら、本件の成りすましも見破れたと認定したのでしょう。

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  1.     毎日、AI(人工知能)に関する報道が絶えません。自動運転などを目指す次世代の車に関し、トヨタ自動車とソフトバンクが新会社を創設し、豊田社長と孫さんの握手する写真が新聞の一面を飾ったのは、つい5日前(30105日)のことでした。
     AI(人工知能)の将来については、話がどんどん広がっております。更に、加速度がついてきていると思いませんか。
    今回、紹介する上記の3出版物(朝日新聞GLOVEは新聞です。)は、AI(人工知能)の進展に伴い、近い将来でも食べられない職業が増え始め、更にその先は、AI(人工知能)が人間の仕事を肩代わりすることによって、人間不要の社会になってしまうというような、近時の話題となるものの総括的な紹介の意味も含んでいるとお考えください。

  2.  最初に紹介する「ホモ・デウス」は、副題にある通り、AI(人工知能)によるテクノロジーと人類の将来を正面から論じる本です。2年程前、本書を出版した著者の前作品「サピエンス全史 上・下」を、本コラムにて書評として書きましたところ、驚くほど多くの人が読んでくださいました(閲覧履歴で分かるのです。これもAIの初歩的な段階ですね)。その続き物である「ホモ・デウス」のコラムも書かねばならないという義務感のようなものを持っておりました。
      でも、現在の人類の築いた人間社会が喪失してしまうという最終段階まで発展する本書は、衝撃的ですが、愉快ではありません。著者は、人間至上主義がデータ至上主義に移行する結果、そのような結論になると述べております。AI(人工知能)の進展によって、人間が不要のものになるということですからね。しかも生き残ることができるのは、一部の大金持ちだけのようです。医療の大躍進により、保険がきかない医療によって、永続する生命を獲得する人類が出るというのです。現在の保険制度では受診できない治療があることに疑問のお持ちの方は、納得されるのでしょうか?もちろん、人類の複雑な脳の構造やデータ至上主義におけるAI(人工知能)の検証も十分になされている訳ではありません。AI(人工知能)を含めた科学と医療の進歩も将来のことですから、このような極端な結論は急ぎすぎのようにも思います。
      また、仕事をなくした人類についても、ベーシックインカム論の立場から異なる結論を引き出す可能性も残ります。最近、政治家でも主張する方が出てきましたが、ベーシックインカムとは、「政府が、全ての人に必要最低限の生活を保障する収入を無条件に支給する」というものです。私がお付き合いさせていただいている富豪の方が、ベーシックインカムしかないでしょうねと話されたのには驚きました。だって、その方の税金は、爆発的に増えるからです(最近読んだ本ですが、「AI時代の新・ベーシックインカム論」(井上智洋著)が分かり易いです)。
      本書にはこのような具体的な話はでてきません。知識なく読むと、嫌になるだけですから、それが本書を強く推薦しない理由です。
     
  3.   5年程前、「10年後に食える仕事、食えない仕事」(渡邉正祐著)を読んだ頃はそれ程感じなかったのですが、弁護士業界がAI(人工知能)に影響されるという事実は、当事務所でも既定の路線です。フォレンジックによる証拠検証についても、先々週、当事務所の田中先生とそれを話題にしました。でも近時の報道は、それどころではないですね。
      弁護士業は無くなるそうです。「あと20年でなくなる50の仕事」(水野燥著)という本によると、弁護士業もその一つに入るそうです。この種類の本は現在どんどん出てきております(読みたくありません)。

      過熱する報道の一つに、農業分野におけるAI(人工知能)の話もあります(英語のアグリカルチャーにかけて「アグリテック」と言われています)。知的労働がAI(人工知能)にとって代わられてしまうというのは分かります。農業も労働人口に著しい影響がでると聞かされると「そうだろうね」と一応納得しておりました。しかし、古来から連綿と続いてきた農業ですら、AIによるロボットによって人力が省力化されてしまうというのは信じられません。弁護士の将来など議論不要です。

  4.  朝日新聞GLOVEの「テクノロジーの世紀」は、これまで述べてきたことの総纏めとして、或いはデータ至上主義に至る前段階、即ち現在の社会状況(「民主主義」や「自由か格差か」)との関係についても論じてあります。次の8つのテーマが1頁毎に記載されているので、今までの議論の状況を急いで知るには最適と言えるでしょう。

    項目をあげておきます。

      フエイスブックは民主主義を壊すのか

      新時代のフリーランスがもたらすのは自由か格差か

      人はロボットを愛せるか

      中国はデータで世界を征するのか

      GAFA」の支配は続くのか

      不老不死は実現するか

      人工知能は人類を滅ぼすのか

      まとめ インタビュー「人間がデータ化される時代に」
     
      何と、もう頁がありません。詳細は何時か書くこともあるでしょう。 
     
  5.  最後の「オリジン」と言う本の紹介が十分にできません。
      でもこの本は、小説として楽しんでいただければ十分です。前項の③「人はロボットを愛せるか」の裏返しとして「ロボットは人を愛せるか」をテーマとして、お読みください。斬新ですよ。

 

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1 今回の書評は、この本の面白さを宣伝するためのものではありません。著者の「あとがき」最後の2行に新鮮な驚きを感じた事を伝えたかったのです。徳田虎雄とは、徳洲会を率いて、医療の世界に巨大な変革をなしとげた人物ですが、この本は、その人物を巡る波乱の人生を描いたノンフィクションです。では著者による最後の2行を紹介しましょう。
 「徳田氏と、氏に伴走して旧態依然たる医療をあらため、無人の荒野に病院の砦を築いてきた人たちにとって、徳洲会とは・・・、かなり長めの「青春」そのものだった。」
 前回のコラムで、オウム事件を巡る朝日新聞の対応に疑問を呈しましたが、この本は、法律に抵触することなど厭わず、社会的な運動に身をかけた人たちについて「かなり長めの青春そのものだった」と言える著者の姿勢に驚いたからです。オウム事件との区別も、その線引きも必要ではないかと感じます。

2 先ず、この本を通じて知った徳田虎雄さんを紹介しましょう(まだご存命なので徳田さんと言います)。
 徳田さんは、選挙では公職選挙法違反になることなど全く意に介さず、周囲を巻き込んで、違法な「どぶ板選挙」に邁進し、マネー戦争でも、多分税法や特別背任罪などの法的考慮も一切されなかったのでしょう、徳洲会のため必要な金を獲得することだけを目的にして、あらゆる手段を行使されたのですね。
 でも金で買う一票は(一票などと言うレベルではないが・・)、民主主義の根幹に反します。私は許せません。また金儲けだけを考えて行われるマネーゲームも、読むに値するものでしょうか。
 そもそも私は弁護士ですから、法に抵触する方々ともお付き合いをすることが前提です。また弁護士と言う以前に、自分の若かりし頃を思い出し、どこまでの違法が「青春」と言う美名?の上で許容されるのか、常々考え続けてきました。
 つまり、どこまでの確信犯が、小説として読むに耐え、共感に値する範囲と言えるのでしょうか。

3 昔、私は、カンボジアの共産主義革命に絶望しました。でも常に関心を持っておりました。当時、カンボジアを描いた面白い本はなかったのですが、昨年夏、発刊された「ゲームの王国」上・下(著者小川哲 早川書房)というSF小説は、当時のカンボジアを題材としているため、直ぐに購入して読みました。
 やはり衝撃的でした。この本も紹介したくなります。でも下巻は、脳波でコントロールするゲームの開発と言うように、近未来のSF小説になってしまうのです(私は上巻だけで充分です)。故に、カンボジアの歴史としてその要約を紹介します。
 カンボジアの指導者となったポルポトは、毛沢東に憧れていることもあったのでしょうか、原始共産主義を目指したクメールルージュを組織しました。彼は、階級や格差のない原始共産時代の状態に戻すというスローガンの下に、邪魔になる富裕層や知識人を対象として100万人以上を殺害したとされています。共産主義であっても私有財産制度は廃止されないのですが、農本政治を行う限り、全ての私有財産が消滅してしまうのだということも、この本で十分に理解できます。マルクスの言う経済学はやはり理想論であって、特に農業を主産業とする発展途上国では学問的な理念など通用しないのですね。
 しかし、何を理想にしようと、革命のためだと言って、人を殺害することなど許される訳がありません。オウムも、坂本弁護士一家虐殺は、オウムの唱える理想国家創造のためだというでしょう。こんな単純で明らかな事実・犯罪を「オウム事件の闇」などと呼ばないでほしいのです。オウム事件が「みんなの責任」だとする朝日新聞の論調がおかしいと思う私の認識もこれに尽きます。如何なる説明をしようとも、人を殺めることが理想実現の手段として許される訳がありません。「みんなの責任」などである訳がない。
 朝日新聞の論調は、逆にオウム関係者を甘やかすことになりませんか?と言うのが私の結論なのです。

4 「神になりたかった男」は、聞取り風のルポルタージュになっておりますが、読み飽きません。そもそも医療は、私たちの生命に直結しています。徳田さんは「命は平等」を唱え、先ず休日・夜間の救急患者の受け入れから始めます。そして医療空白地域に病院の進出を図ります。当初は、病院建設費用等の金策、そして進出地域を管轄する旧態依然たる医師会との闘い、その後は、医療行政の是正など、拍手喝采を送りたくなります。病院通いが絶えない私自身の関心事なのですから、「命は平等」なるスローガンには泣けますね。
 この本を読んで、医療に対して違った側面から見られるようになったと思います。近時の新聞報道でも、不足する医師・看護師の実態、医療機関の休廃止・破綻の増加、或いは医薬分業制度や医療保険制度等枚挙にいとまがない程です。
 結論ですが、徳田さんやその周りにいる人たちにとって、徳田さんの戦いは、やはり「かなり長めの青春」なのでしょう。
 公職選挙法違反位で目くじらはたてられないか?
 皆さん、読んでご判断ください。

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