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相続人の寄与分の主張(相続事件簿 その6)

カテゴリ : 
相続事件

 

一 相続法理と寄与分
1 前回のコラムでは、相続法理での説明が難しい遺留分の制度について紹介しましたが、今回は寄与分の制度について紹介しましょう。
寄与分の制度は、昭和55年の民法改正で設けられた制度であります。寄与分の制度を要約しますと、共同相続人間の実質的な平等を図ろうというものであります。
新たに設けられた民法第904条の2によりますと、相続人の中で、被相続人(父の場合が多い)の事業に関して労務を提供したり、財産上の給付(お金を出すのが一般的)をしたり、或は被相続人の療養看護をしたり、或はその他の方法で被相続人の財産を維持、増加させたりして特別の寄与をした者には寄与分を相続分に付加するというという制度であります。
家庭裁判所では、民法の改正前から、上記のような貢献を寄与分として認めるようになっておりました。
 
2 実例を見てみましょう。
私が弁護士になった頃、バブル景気を経験しました。土地の値上がりも凄まじく、相続される資産が爆発した時代でもありました。
寄与分に関する典型的な相談例の二つをみてみましょう。
その一つは、跡取り息子が、給与も満足に貰わないで父の事業を必死で支えてきたものの、父が死んだ今、その遺産が他の兄弟達に持っていかれてしまう。これでは事業の継続はできないというものです。もう一つは、夫の父や母を20年以上も介護してきたが、義理の父母が亡くなってみると、面倒を見なかった夫の兄弟3人が出てきて、自分たちにも相続権があるといって平等な分割を主張するため、自分の夫には4分の一しか残らない。私の死に物狂いの努力は何だったのでしょうか、というものです。
私は上記相談者に大変共感して、必死で寄与分の主張をしました。しかし、お二方のご苦労の割には、裁判所の認定は低く、自分自身失望したことをお伝えしなければなりません。しかし寄与分の算出方法等経験を積みますと、やむを得ない側面がよく認識できます。
では、次項で寄与分の制度を見ていきましょう。
 
二 寄与分の制度の内容
1 寄与行為の種類
通常、民法の条文「その他の方法」等も考慮し5種類を示します。
家事従事型 
この典型例は私が相談を受けた第一の家業継承の事例です。地方になると「事業」は農業が多いでしょう。田舎で農業に従事する長男を想像してくだされば見当がつきます。
金銭等出資型
お金を出す場合ですが、不動産の購入資金の援助や医療費や施設入所費の負担が典型例という裁判官の著作もあります。
療養看護型
私の事例二つ目で、病気療養中の療養介護です。被相続人の疾病が存在することが前提になっておりますのでご注意ください。
扶養型
扶養によって生活費等の支出を免れ、被相続人の財産が維持されたという場合です。
財産管理型
財産管理によって財産の維持形成に寄与したという場合です。
 
2 寄与と見做される要件とその寄与分とは
家事従事型 
裁判所が認定する要件は厳しい。特別の貢献、無償性、継続性、専従性等を検討します。さらにその算定方法としては、業務に従事した者が通常得られたであろう給付額から生活費を控除し、年月を加算します。賃金センサスを参考にする場合もあります。
想像以上に低くなることは明白ですが、農業従事の場合には、相続財産の形成に貢献したと判断できる比率を計算根拠とする場合もあります。
金銭等出資型
お金を出す場合なのですが、特別な貢献でなければなりません。また金銭ですから具体的な金額は明白ですが、種々の条件を検討し、裁量割合などとして金額を算出します。
療養看護型
この類型でも計算ばかりで驚かれるでしょう。認定要件としては、療養看護の必要性、特別の貢献、無償性、継続性、専従性などが検討されます。介護保険の介護報酬基準を使うなど合理的な計算根拠を求めて決められます。交通事故の損害賠償請求事件を連想してしまいます。
扶養型や?財産管理型も同じように検討できるのですが、本コラムでは長くなるので省きましょう。実際に相談にお出で下さい。
 
三 先に紹介した事例に関する補足
1 私が経験した家事従事型の事例においては、平成20年制定の中小企業経営承継円滑化法の利用をアドバイスしなければなりません。しかし、この制度を利用するには、事前に除外合意或いは固定合意をし、更に経済産業大臣の確認、家庭裁判所の許可等の手続が必要です。
 
2 同じく私の経験した夫の父を療養介護した妻の場合、相続人の夫が自己の寄与分として主張できるという判例があります。

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