新宿の顧問弁護士なら弁護士法人岡本(岡本政明法律事務所)
当事務所では、上場企業(東証プライム)からベンチャー企業まで広範囲、かつ、様々な業種の顧問業務をメインとしつつ、様々な事件に対応しております。
労基署から労災等の連絡が来た場合、弁護士に対応させる必要があります(その1 労務管理)
- カテゴリ :
- 労働事件
一 「労務管理」という言葉は嫌いですか?
(1) 企業経営者の皆様、自分の会社で働いてくれている社員を宝だと思っておられますね。当事務所は、会社側の代理人として対応することが通常ですが、社長の真摯な姿勢に感激する体験を幾度もしてまいりました。
でも会社の健全な成長のためには、愛だけでは不足です。「労務管理」という言葉を聞くと嫌な気持ちになるという経営者の方は、それはそれで立派なのですが、会社の成長なくして、従業員に報いることはできません。その事実は、あなたが一番ご存じのはずです。日々の成長に苦しまれる貴方こそが、「労務管理」の必要性を一番ご存じのはずです。
(2) 幾度か体験した労働災害の実例、今回は、従業員の死亡の場合について紹介しましょう。
私が弁護士になったころと比較しますと、近時、従業員の自殺が労働災害の紛争として激増している印象です。私の経験だけでも自殺事件は10件を超えているのですが、その例として皮肉にも「愛の示し方」の失敗により、泥沼状況になった例をあげてみましょう。
自殺の報を聞いて、一番に駆け付けた営業部長が泣きながら「会社にも非があったと思う」と述べたことから、労働災害による自殺として労基署に申請されました。この案件は、後に双方の感情がエスカレートし、本当に残念な経過をたどりました。また、葬儀に出席された幹部社員のお詫びの言葉によって、会社に強い要求がなされた案件もありました。これらが上場企業の実例だとお話ししたら、あなたは驚かれるのではないでしょうか。
更に、従業員の病死までも含めますと、残業代、パワハラによる損害賠償請求を巡って、共産党系の弁護士と弁護士会館で怒鳴りあいの交渉になった経験も幾度かあります。この方々は、事実により判断するのでなく、感情的に主張される例が本当に多い。何故か、相手の指定する喫茶店での交渉で、下品な罵詈雑言に対し(この方も、残念ながら弁護士)、「事実に基づいて主張しろ!」と怒鳴り返したのは、私が血気盛んな頃の話です。
二 社会保険労務士(以下、「社労士」と言います)の先生
(1) 労務管理はどうされていますかとお聞きしますと、人情味のある経営者幹部の方の多くは、従業員の就業規則や労働保険、更には給与計算まで全面的に、社労士の先生にお任せしているから大丈夫ですとおっしゃる方が多い。
確かに、当事務所で提携しているような優秀な先生を除き、全く大丈夫でない実例をお話ししてみましょう。
(2) 社労士の先生方の未熟な対応により、紛争になった事例は本当に多いのです。かっては社労士の判断ミスによって、懲戒解雇が労働訴訟になった事例はたくさんありました。労働訴訟になれば弁護士の出番であり、社労士では処理できません。訴訟を経験しないで微妙な法的判断をすることが難しいのは誰が考えても分ります。
最近懲戒解雇の正当性を巡る社労士の典型的な失敗事例は減ってきたように感じます。社労士会等の自覚で講演や実習等をされていることも知っておりますが、むしろ経営者の方々の知識が高まり、懲戒事例の場合には早期に弁護士に相談されるからでありましょう。
(3) しかし、労働災害事件は、社労士のミスによる案件が逆に増えている印象があります。
事件の端緒ともなりますが、労災請求に関して労働基準監督署から関係資料の提出依頼が来た場合、会社の対応としては、社労士に相談することはあっても、弁護士には相談されないということが原因ではないでしょうか。
驚いたことに、社労士の先生が、「この案件は、どう考えても労働災害として認定されることは無いでしょう」と言われたため、放置していたら労災が認定されてしまったという事件もありました。更には、社労士の先生が作成された書面や発言が逆に会社にとって不利に扱われてしまったという事件も経験しております。
三 結論=「社労士と弁護士との協同作業が会社を支える」
社労士の先生は、訴訟の専門家ではありません。訴訟の代理人にはなれませんし、代理が可能な民間紛争解決手続きにおいても120万円などという制限もあります。訴訟となった場合、二重経費の計上となる弁護士と社労士の先生双方に依頼することは通常ありません。弁護士は登録さえすれば社会保険労務士としての資格も具備できるのですが、残念ながら、弁護士業務と並行して社労士業務である社会保険の代理申請や給与規定のチェックをする弁護士は知りません。両者の業務システムには大きな違いがあるからです。
当事務所は、社労士業務に関しては優秀な先生にお願いしています。何故なら、日常業務となる社労士の先生との協同こそが大切なのです。優秀な社労士の先生は、訴訟になることまで見込んで、日常の労務手続を進めていただけます。根本的なことは、労務管理においては、弁護士と社労士との双方が協同関係をもって、即ち双方の専門家が何時でも連絡を取り合えることを前提として、日常の労務管理を行うことが要諦なのです。このような「企業活動を支える仕組み」を作りましょう。