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強制執行費用総論(その5)

カテゴリ : 
強制執行

 

一 「強制執行費用」と当コラム
 
1 昨年末、毎日新聞記者の訪問を受けて、「不動産の放棄」に関する私のコラムが多くの人に読まれていることを始めて知りました。この経緯については、今年の初め15日にコラムとして掲載しております。
その際、コラム欄のアーカイブ一覧(私のコラムの記録保管場所)を見たところ、三年前に書いたコラム「執行費用に関し、実際の事例に即した計算書をご覧ください」という欄が2万回をはるかに超えて読まれていることを知りました。しかも「執行費用」でネット検索しますと、私の上記コラムがヤフーの1ページ目に出てくるのも驚きです。
「不動産の放棄」と違って、「執行費用」は知識の断片にすぎません。皆さんの関心は何なのか?自信がなくなりますね。私がコラムを書こうと思ったきっかけは、私の体験談を書いて、少しでも面白いと思っていただきたいというものでした。
確かに若い弁護士の先生方から「執行費用のコラム、読ませてもらいました」というお礼の言葉は幾度かいただきましたが、それほど人気があるとは想像もしておりませんでした。
強制執行の費用に関する説明は細々としており、しかも単なる実務の説明でしかなく、私の当コラムに対する思い入れに反します。しかしこのような実務を何処まで面白く書けるのか、挑戦してみましょう。
 
  強制執行にかかる費用は様々
強制執行での必要費用を考えますと、大きく区分して、裁判所関係の費用、弁護士の費用と言うようになります。
弁護士費用については、もはや種々いろいろです。強制執行専門を宣伝される法律事務所のコラムなど何の面白味もありませんが、しかし、この弁護士費用は意外と高額なのです。執行を専門にされる法律事務所は、細かく種々の場合に区分され、受任される内容を段階別に分類して、その都度請求できるようにしていらっしゃいます。しかし最後の執行まで見越しますと本当に高いですね。
賃料で生活されている方にとって、賃料の何十倍という高額の費用がかかる明渡強制執行に躊躇されるのは当然のことなのです。
 
二 裁判所で必要な強制執行費用
 
1 強制執行費用
  弁護士費用は別にして、裁判所関係の費用について見ましょう。
強制執行には種々のものがあります。担保に取っている不動産を競売することもありますし、金銭債権を債務名義として強制執行することもあります。そもそも預金や動産等押さえるべき対象物によっても、強制執行の方法は変わります。
思い切って、土地明渡や家屋明渡のように、一般的に皆様がお考えになる明渡強制執行費用に絞って検討しましょう。皆様は不動産執行に関係する「執行補助者の費用」について多大の関心をお持ちだと想像できます。コラムも同様ですが、「執行費用」をご覧になる理由は、相当高額になる執行補助者の費用に行きつくと思われるからです。
 
2 裁判所の費用
裁判所関係の費用と言っても、申立費用が必要なことは前提です。
そもそも「強制執行の申立は書面で行う」と民事執行規則(第1条)にも定められておりますから、申立費用は当然かかります。しかし、皆様の関心を呼ぶほど高額ではありません。
今回は、確実な執行を行うために、強制執行の前提となる明渡に関する債務名義、即ち勝訴判決を取るところから説明します。そもそも土地の明渡や家屋明渡を内容とする判決が必要ですが、債務者が他に転貸したりしている場合、債務者だけの判決では強制執行できません。相手方が異なっている判決では強制執行できないのです。訴訟前、占有者の調査から始める場合もあるとご記憶ください。
確かに私のコラムで判決なくして強制執行をした事例も紹介しております。しかし、このような事例はよほどのことが無い限り困難です。判決なくして行う強制執行を「満足的仮処分・断行の仮処分」と言いますが、よほどの運(?)とそれに見合う弁護士の実力()がないとできることではありません。当然執行費用もかかります。私が行った満足的仮処分では執行費用だけで1000万円、担保としてもそれに近い金額を要しました。
 
3 占有移転禁止の仮処分(民事保全法621項)
通常、訴訟前に行う占有移転禁止の仮処分は、裁判の相手方を誰にするかについて調査することも兼ねております。この仮処分で占有者を特定し、その後、転貸などで占有者が変わったとしても最終執行できるようにする必要があります(当事者恒定効といいます)。
この手続きには、担保と言う保証金が必要になります。通常の居住用マンションなどでは、賃料の3か月分から6か月分、事業用の店舗などですと6か月以上となりますから、この費用を惜しまれる方も多いのです。でも、この手続きを通じて債務者と直接交渉できる余地も生まれます。任意の明渡を促す効果もあるのです。寧ろこのような事前の手続きにより債権者の決意を示し、任意の明渡が可能となる機会作りを検討しましょう。
裁判所関係の費用ということで、担保と言う費用を説明する必要があると思い書いてみましたが、この仮処分でも皆様ご期待の執行官や執行補助者にお世話になります。故に、次回は、執行官や執行補助者について、次々回は執行補助者の費用等、具体的に見てみましょう。

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