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強制執行(その3 銀行預金或いは車の強制執行)

カテゴリ : 
強制執行

 

一 請求権実現の方法は強制執行
 
1 請求権には種々のものがあります。今回はお金を請求する事件、金銭債権に限定してどのような方法で回収するのかについて考えてみましょう。実際には任意に払ってもらうために話し合いをするのでしょうね。そもそも任意に支払ってもらえないことが予想される場合には、契約時に、強制執行認諾文言付きの公正証書を作ったり、何か価値のある物を担保に取ることもします。しかし事前にどのような方法を講じようとも、相手が任意に支払ってくれない限り、強制執行をするしか方法がありません。強制執行とは、国家機関の関与によって、相手方、つまり債務者の意思に反して、債務者に義務を履行させることをいいます。
故に、強制執行できる「お墨付き」をどのように取得するかが事件解決のコツになります。「お墨付き」のことを債務名義と言いますが、確定判決、仮執行宣言付判決と挙げればきりがありません。先に述べました公正証書もそうです。でも強制執行認諾文言付きの公正証書と言いましても建物明渡請求事件のような特定物の給付を目的とする場合には債務名義になりません。注意が必要です。
 
2 確定判決をとるには相当な時間がかかります。その間に相手が無一文にならないとも限りません。従って債務名義をとる前に、仮に執行するという保全処分も検討しないといけないのです。
不動産については、時間のかかる裁判をしている間に、相手方が意図的に譲渡したり、新たに担保をつけたりする場合、巨額の損失が発生します。このように相手方の対応をにらんで、仮差押えである保全処分を検討することになります。
では銀行預金に対する保全処分はどうでしょうか。
銀行預金が確実にあると分かっていればいいのですが、預金の所在もその額も分からないのが普通です。ここで注意が必要です。銀行預金に仮差押えをする場合、債務名義がないのですから相当な担保をたてる必要があります。銀行が「預金はありません」という回答をした場合でも、相手方の損害が考えられ、担保の簡易な取戻手続ができないのです。担保は仮差押えされた債務者の損害を補填するためのものですから、相手方の同意か、担保取消決定をもらうという面倒な手続が残ります。従って預金は確定判決を得て執行するのが通常です。
 
  強制執行のエピソード
 
  多くの事件は、相手方がどの銀行に預けているのか、或いはどの銀行に多額の預金があるのか分からないことが普通です。でも当事務所は諦めません。銀行預金の所在調査がポイントになります。こじれる案件は、相手方も差押えを予想して取引銀行を隠しております。そこで先ず、過去当方に振込みをしてきた銀行の支店、次に会社ですとネットに載っているかどうかの調査、支店等についても調査をします。帝国ホテルの内装業者との紛争事件のとき、会社支店先である立川支店でヒットしたことがあります。ちょうど給料日前に差押えしました。巨大法律事務所の弁護士が大金の回収の噂を誰から聞いたのか、銀行名を教えてほしいと厚かましく電話をしてきたこともあります。
個人の場合には、自宅から駅に出るまでの銀行数か所を差押えしてヒットしたこともあります。昔は、給料が第一勧業銀行に振り込まれることが多かったため、相手の勤め人になった当時の勤務先に近い第一勧銀支店を差押えの対象としたこともあります。数か所の差押えで、僅かな金額のヒットはよくあることですが、その粘りに負けて和解を申し出られたこともあります。
若い弁護士の先生方には勉強になる話だと思いますが・・。
 
2 顧問会社の裁判で面倒な方と争った時、相手方の社長が超高級車で裁判所裏口に出てきました。偶然、鉢合わせをしたのですが、顧問会社社員は無謀にも走る高級車の前面に立ちはだかり「この車を押さえてください」と絶叫しました。
ここまでされたら押さえない訳にはいきません。このエピソードは10年以上前のことですが、その場で判明した車の番号から直ちに陸運局に行って調査をし、社長の車か会社の車か割り出し仮差押えの準備を始めました。この案件は、この社員の無謀な行動に驚いたのか、すぐに相手方が分割支払のお願いに来て和解になりました。ところで副所長から、近時、陸運局では個人情報保護法の関係で調査に応じてくれない、弁護士照会で調査をするのだと聞いて驚いております。
 
三 江戸時代の裁判
 
1 前のコラムで紹介した経済小説家高任和夫さんは、最近「江戸時代もの」を書いておられるということをネットで知りました。早速「星雲の梯(老中と狂歌師)」(講談社)と「貨幣の鬼(勘定奉行萩原重秀)」(講談社文庫)を買ってきました。今、私は経済小説ではなく江戸時代の裁判官であった川路聖謨(「かわじとしあきら」と読みます)の膨大な本を読んでおりますので、余計高任さんに親近感を抱いたのかもしれません。
和解を「内済」というなど勉強しておりますが、当初は執行をどのようにしていたのかについて関心があり、あれこれ読んでおります。
 
2 江戸時代に関係する本を読む楽しみを考え、「大江戸今昔マップ」まで買いました。江戸時代の街並み(江戸切絵図)と現代マップが重ね地図になっていて、現在楽しんでおります。
余計なことも書きたくなりますが、強制執行のコラムはまだ続きます。次回のテーマは「財産開示手続」にします。

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