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破産法の目的・破産管財人とは何か

カテゴリ : 
破産事件

 

1 破産管財人はタフな業務
 
(1)  破産管財人とは何でしょうか?
詳しいことはお分かりにならないのが普通ですね。そんな単語、聞いたことがないという人も多いはずです。しかし破産の申立をした人は当然にご存知でしょうし、破産に関係する本コラムを読もうとされる方々は知っておかれるべき入門編の知識になります。
 
(2)  破産管財人は破産手続で最も重要な機関です。東京地裁破産部に所属される裁判官による力作「破産・民事再生の実務」をひもときますと、「破産手続の機関の概要」の項目第一行目において「破産管財人は、破産手続開始の決定と同時に裁判所によって選任される、破産手続の中心的役割を担う機関である」と記載されております。破産事件の帰趨は破産管財人の腕で決まると言っても過言ではありません。
私が破産管財人に選任されて管財業務を行ってきた約20年間の詳細をお話しするだけで皆様の興味を呼ぶ何回分ものコラムを書けますし、それは同時に破産手続の中心的役割についての説明にもなってしまいます。破産管財人には緻密な法理論の武装と決断力が問われる世界であり、少数ではありますが、難事件になりますと、「その人(弁護士)のなり」までが問われます。私は、このような事件を多数任され、職業冥利に尽きると思ってやってきました。東京地方裁判所には、充実した日々をおくらせていただき感謝しております。
 
(3)  ところで本コラムはどのような人が読んでくださっているのでしょうか。執行費用のコラム欄が若い弁護士の先生方から大好評です。でもあんな実務の情報など、私には何の意味も見出せません。コラムを書いている者の心情が出てくる訳もなく、ちっとも面白くないからです。
当初は、弁護士としてのいろんな体験をお話しして、弁護士でない方々に「いろんな人がいるなあ、見方もいろいろあるなあ」と思っていただくとか、読む人の趣味程度で読んでいただきたいと思って本コラム欄を作りました。しかし、読まれている方々の評判をお聞きしておりますと、小説のような感じで楽しんでいただいている訳ではなく、事件解決のヒント或いは知識として読まれている場合が通常のようです。或いは本コラムが法律の世界の入り口として読まれていることも聞きました。これらを考えて、コラムの内容も当初とは大分変わってきております。
今回は、破産事件等について関心を持たれている方々のために、面倒でも破産事件の基本理念から説明し、破産管財人の在り方に関するエピソードを紹介しましょう。
 
2 破産法の目的
破産法第1条では
「この法律は、支払不能又は債務超過にある債務者の財産等の清算に関する手続を定めること等により、債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする」と規定されております。
上記条項には破産における目的が書かれております。この目的とされる事項は、?債権者、利害関係人との権利関係の調整、?債務者の財産の適正かつ公平な清算、?債務者の再生の機会の確保と多数にのぼります。破産管財人はこれらの目的を実現する機関であります。破産管財人はこれらの使命を決して忘れてはなりません。
 
3 破産管財人の使命に関係したエピソード
 
(1)  破産管財人が具体的に何をなすのかは次回のコラムに先送りして、私が小説に使いたいと思ったエピソードを紹介しましょう。
 10年以上前のことになるでしょうか、東京にある三つの弁護士会の弁護士同士の間で、破産事件をやっていて自分の悩んでいること等をネットによって相談ができるシステムが開発されました。
 ある時破産管財人をやっている若い先生から、免責の意見に関して、これまで免責不相当の意見を2回も出したと多少「自慢げな感じ」で投稿があったのです。この若い弁護士に対して、わっと多数のメールが入り、この先生を強く非難するメールが溢れました。これを今流に言うなら「ネット炎上」というのでしょうね。私もこの若い先生に対して破産者に対する配慮、即ち破産法の三つ目の理念「債務者の再生の機会」に対する自覚が足りないと強く思いました。でも罵倒のようなメールに接しているうちに間に入らねばならないと焦り始めました。当時私はこの三つの弁護士会で法律相談の協議をする議長でしたから、総責任者として当然にその責務があります。
 
(2)  10日も経たない頃、別の若い先生から、免責について真剣に悩んだ経験とその破産者の内容が書かれたメールが投稿されました。
 最初の先生から「私は泣きながらこのメールを書いております」と「三回」も、「泣きながら」感謝するメールが入りました。本当に苦しまれていたことが分かる内容でした。私は事務所の若い先生に、小説に書く材料としてすごいネタだと何回も言ったものです。
 
4 感想として
  昔は破産法の基本理念を随分議論したと思います。
  最近増えた弁護士同士の種々のメールを見ていても、このような熱いメールは減りまし 
    た。破産法も定着し、破産に対する考え方もそれほどシビアではなくなっております。これはいい傾向でしょうか?

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