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かっぱ寿司・はま寿司事件とソフトバンク・楽天モバイル事件に見る営業秘密漏洩のリスクと営業秘密の管理方法(その18  不正競争)

カテゴリ : 
情報管理・不正競争

1.  2022年は、営業秘密漏洩に関して大きな事件が報道された年でした。一つは、かっぱ寿司・はま寿司事件で、もう一つは、ソフトバンク・楽天モバイル事件です。

2.  かっぱ寿司・はま寿司事件については、はま寿司の運営会社(ゼンショーホールディングス)の元取締役であった人物が2020年11月にかっぱ寿司の運営会社(カッパ・クリエイト)に転職し、2020年12月に副社長、2021年2月から社長に就任しました。
 この時に、はま寿司の商品原価情報や食材の使用量などの営業秘密のデータを不正に取得して分析していたというものです。
 近年、かっぱ寿司は業界での地位が下がっており、他社との提携を行おうとしていたものの上手くいかず、社長が何度も交代する中で起きた事件のようです。
 本件は、上場企業の社長が極めて典型的な営業秘密侵害行為を行って逮捕されてしまったというショッキングな事案であるばかりか、両罰規定により、かっぱ寿司の運営会社も起訴されてしまったという点で非常に重要な前例になりました。
 かっぱ寿司の元社長は初公判で起訴内容を認めたようですが、まだ判決は下されていません。このような営業秘密侵害行為を行うことで、会社までもが起訴されてしまい、刑事事件に巻き込まれてしまうということに注意が必要です。

3.  ソフトバンク・楽天モバイル事件については、2004年7月にソフトバンクに入社して基地局の設計・運営等の業務に従事していた正社員が、サーバーに接続し、メールで送信する等して基地局情報等の営業秘密を漏洩させたというものです。当該従業員は、ソフトバンクの最終出社日に大量にデータファイルを圧縮して保存した後、2020年1月に楽天モバイルに入社し、その際に「機密情報を持ち逃げしたのでがっつりやりましょう」等とLINEを送っていたと報道されています。東京地方裁判所では、懲役2年、執行猶予4年、罰金100万円の有罪判決が下されたようですが、当該従業員は争っており、控訴しています。
 この件では、ソフトバンクが、楽天モバイル及び当該従業員に対し、約1000億円の損害賠償請求権の一部として10億円の支払いや不正競争により建設された基地局の使用差止等を求める民事訴訟を提起していることにも注目が集まっています。
 楽天モバイルは、会社としての関与を否定していますから、楽天モバイルからすれば、他社から転職してきた一従業員の不始末によって1000億円という途方もない金額の損害賠償請求訴訟に巻き込まれることになってしまったことになります。
 転職者が増加する近年、転職者が違法に持ち込む営業秘密に対して適切な対策をしないと非常に面倒なことになってしまうという重要な前例にもなりました。

4.  このような事件を受けて、営業秘密の侵害を行ってしまった側であるかっぱ寿司では、弁護士による営業秘密に特化した研修やコンプライアンス講義をすること、営業秘密誓約書を取得すること、パソコンにUSB接続制限をすること、営業秘密資料に「confidential」等を表示すること、パスワード設定すること、アクセス制限を徹底すること等のほか、研修やコンプライアンス講義などの教育を更に拡充し、誓約書についても、入社時だけではなく、退社時などにも取得するようにし、内部通報に関する相談窓口についても強化したようです。

5.  他方で、営業秘密を侵害されてしまった側であるソフトバンクでは、秘密保持契約の締結やセキュリティー研修のほか、アクセス権限を見直す等して情報管理を厳格化したり、退職予定者の業務用情報端末についてアクセス権限の停止をしたり利用の制限を強化したり、セキュリティー研修を受講しない従業員には重要な情報資産へのアクセスを不可とする等の再発防止施策を公表しています。

6.  雇用が流動化し、転職者が増加する一方の現代社会において、営業秘密の漏洩に関しては極めて重大なリスクをはらむ法的問題です。
 加害者側になれば刑事事件になってしまいますし、被害者側になっても莫大な損害を被ります。
 そうならないためにも、日頃から営業秘密漏洩のリスクを認識し、営業秘密を適切に管理することが重要です。
 当事務所では、両事件についても日本経済新聞の取材を受けるなどしており、営業秘密に関する法的な問題に様々な知見を有しておりますので、是非とも気軽にご相談いただけますと幸いです。

 

以 上

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