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「高齢化社会−その2」

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所感

1.   前回のコラム掲載以前から高齢化する社会に関心をもっておりました。特に、近時、高齢者の財産が活用できなくなることをテーマにした報道が増加しております。
 高齢者の判断能力が低下すると、預貯金等の金融資産が凍結されるという状況や不動産の処分が困難になるという状況についても関心を持っておりました。
 昔の友達から
自分一人で住んでいる土地家屋について、どうしたらいいだろうか?子供たちは都会に出てしまい、将来、自分たちで使う予定はない。でも、老後資金の都合で売却も考えているという相談もありました。確かに、相当の広さの土地と立派な家屋でした。当時は信託法(施行平成19930日)が施行されたばかりでしたが、友達の年齢もそれほどではなく、判断能力も十分でした。私は、「もう少し様子を見て、信託するかどうか考えるのがいいと思うよ」と回答しました。

2.   でも近時の新聞等の報道をみておりますと、そろそろ友達も今後の方策を考えるべき時期に来ているように思います。
 先日の新聞で、三井住友信託銀行が公表した「認知症高齢者が保有する資産額」の数字を読んで驚きました。
 2020年時点で、認知症高齢者の金融資産が約175兆円、不動産(住宅と土地)が約80兆円で資産総額は約255兆円だそうですが、2040年には資産総額約349兆円になりそうだというのです。これらの資産所有者は、認知症により判断能力がないとみなされるのですから、当然、凍結され、処分できないことになります。
 私は、これまで高齢者に不動産の処分ができない理由の「調査及びその判断基準」について不思議に思っておりました。今回、この初歩的な疑問も解決したように思います。
 これらの判断能力の有無に関する発見の端緒は、認知症であると診断されることの他に、高齢者の金融機関(銀行)での対応にあるのですね。キャッシュカードの紛失や訳の分からない要求等をきっかけとして、金融機関の担当者により、当該高齢者の判断能力が低下していると考えられると金融資産の処理は「凍結」されるようです。そして、金融機関での取引が「凍結」されることによって、当然不動産取引も判断能力が劣化しているとして停止されることになるのですね。
 金融機関によって、「凍結」の判断が分かれる例もあるとの指摘があり、驚きました。

3.   不動産に関心があるものですから、高齢者の判断能力の低下によって、自宅の売却が困難になるという数字に関係した新聞報道についてもご紹介します。
 昨年8月の新聞報道ですが、以下、引用させていただきます。
 第一生命経済研究所が、住宅・土地統計調査や世帯数将来推計、年齢別などの認知症有病率から試算したものだそうです。認知症の人が所有する住宅は2018年時点で210万戸、2021年時点で221万個、何と2040年には280万個に増えるようです。
 絶望的な数字ですね。老人の経済状況の心配だけでなく、日本経済そのものが心配になります。
 やはり認知症に対する対策を事前に立てておくべきなのです。
 高齢者に認知症等を予測した対策を立てていただくようにお願いすることが第一です。新聞報道でも結論は同じようです。特に、自宅は、最後まで住み続けるだけでなく施設に入所する費用の捻出等にも関係します。高齢者の生前処分ですから、死んでから効力を発揮する遺言書ではまかないきれないのです。
 私的には、昔から受け継いできた山林や農地の処分にも、同時に関心をもっていただきたいと考えております。

4.   では、遺言書以外にどのような処理が適当なのかについて考えましょう。遺言書は本人が亡くなられてからの取り決めですから、今回のように認知症になっても頑張って生きている人には向きません。
 先ず成年後見人制度ですが、法定後見と任意後見との二つを考える必要があります。
 法定後見人制度は、従来より民法に規定があり、私も何度も関係させていただきました。でも先ず後見開始の審判を受け、その後、別の裁判体である家庭裁判所によって、後見人が選任されるという面倒な手続きが必要です。しかも選任された後見人に関して不服申し立てもできないのです。
 次に、任意後見人制度についてみてみましょう。平成12年施行「任意後見契約に関する法律」です。
 第2条「一 任意後見契約 委任者が、受任者に対し、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況における自己の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の全部又は一部を委託し、その委託に係る事務について代理権を付与する委任契約・・」とされています。利用者が種々の方策を検討できることが素晴らしいですね。
 

5.   平成19930日施行の「信託法」も見逃せません。
 この法律は家族信託とも言われ、前回のコラムで、ネット等を点検すると、家族信託に関係した宣伝が相当数挙がっている状況も説明しました。
 高齢者の方の事情もありますが、家族信託の方法も有意義な選択だと信じます。是非、専門家に相談されるのが良いでしょう。

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