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前々回掲載『事故物件』のコラムから考えること →『高齢者の最後について』

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所感

1.  前々回掲載したコラム「入居者の自殺―アパートの事故物件」では、考えさせられることが本当に数多くありました。特に、「高齢者の事故物件」に関しては、現在の課題そのものなのです。
 新聞報道された国土交通省の「事故物件」について、そもそも、国土交通省が懸念するものとして、「入居中の死亡を貸主が不安視するあまり、単身高齢者入居に否定的な家主が多い」と指摘する報道もありました(朝日新聞)。
 日本の人口構成がどんどん高齢化している事実は、誰でも知っていることです。しかも、独居高齢者の生活満足度のほうが同居高齢者の満足度より高いというデータを紹介する医師の調査もあるそうです(辻川覚志著『老後はひとり暮らしが幸せ』)。
しかし高齢化社会における問題点は、これからの課題であると言っていいでしょう。

2.  思い起こしてみますと、高齢者に対する論点が、弁護士の世界で強く認識され始めたのは、相当昔のことです。
 私が東京にある三つの弁護士会の法律相談を統一化して、相談者の皆様の便宜に答えなければならないと問題提起していた頃の話ですから20年以上前でしょうか。当時、成年後見人等の制度が、弁護士の世界で話題になる時代でした。弁護士会で、後見人や保佐人になる方に貢献できることはないかと話題にしたこともあります。
 驚いたことは、友人の弁護士が、私を自分の車で送ってくださったことがあるのですが、その車が身障者の椅子型運転車を乗せられる介護使用になっていたことです。驚いて「何故、このような介護用の車に乗っているのですか」と質問したところ、友人は、後見人として必要だと思ったからだとおっしゃるのです。相当高額な車になったでしょうから本当に驚き、且つ、友人の配慮に感心しました。でも、この話には落ちがあるのです。
 後見人や保佐人には、司法書士の先生がなられることが大変多く、当時、司法書士の先生方の専門領域のような感じをもったことすらあります。私は裁判所からこのような先生方の監督人に任じられたこともありました。
 私は、司法書士の先生に、「私の友人の弁護士が介護の車を買って、老人の後見業務をされている。感心した。」と話をしたところ、その先生は「それは、やりすぎかもしれません」とおっしゃるのです。吃驚して、その理由を聞いたところ、その先生は次のように答えられました。「近所の方にも配慮した普通の車で訪問するべきです。高齢者等の方々は、近所を大変気にされていて、知られることを恐れておられる方が多いのです。そもそも、身の回りの直接的なお世話は、我々の業務ではないのですから。」と教えられました。自分の感覚は、ずれているのかなと不安を覚えました。高齢者や認知症の方、そして彼らをお世話する家族の方々との認識の差に驚いたのでしょうね。
 20年以上前のことですが、このような状況に変化があったでしょうか?現在、高齢者の一人住まいがどんどん増加しているとの統計も出ております。上記のような心配が、不要な時代になっているのか案じております。

3.  最近では、「独居老人の孤独死」という言葉よりも在宅死のおすすめを内容とする本がたくさん出ています。
 例を挙げてみましょう。「最高の死に方」(近藤誠著)、「極上のおひとり死」(松原惇子著)、「在宅医療の真実」(小豆畑丈夫著)等、多数出ているので驚きました。私は早速「在宅ひとり死のススメ」(上野千鶴子著)という本を購入しました。この本は、統計上の数字が根拠として多数引用されているので、購入しました。
 余談ですが、購入直後の915日付朝日新聞朝刊に「老老介護の夫婦 凍えた末」と題され、89歳と80歳のご夫婦が「SOSなく 異変気づかれず」亡くなられ、これからは「孤独死」ではなく「二人の孤独死」であると題して報じているのを読みました。話がどんどん先を行き過ぎる気がしないでもありません。
 でも、前々回掲載のコラムでは、高齢者の孤独死が不動産価値の下落にならないかと心配して、次の論争点を提起しようと考えていた程度の私の認識は相当遅れているのかなとも思いました。

4.  話がそれましたが、「在宅ひとり死のススメ」では、医療機関や高齢者施設等の介護施設で人生の最後を迎えるより、「最後は、自宅でひっそり死ぬ方がいいよ」という内容がテーマです。統計上の数字として、「おひとりさま寂しさ率」、「おひとりさま不安率」、「寂しさ満足率」等種々の統計上の数字が出てきます。
 私は、これまで、「行き着くところ、在宅でのサービスが満足に受けられるかどうかにある」と判断しておりました。上記の本でも結論は同じでした。そして「介護保険が危ない」として30頁ほど論じてあります。高齢者の在宅死から、以上のような論点になること自体、いまだ在宅死が望ましいと言えるのか疑問に感じざるを得ません。
 当該書籍の「在宅ひとり死のススメ」では、訪問介護、訪問看護、訪問医療等が論じられ、介護サービスの詳細がテーマとして挙げられ、これまでの経緯から「介護保険が危ない」と続きます。
 介護保険を解決するべきテーマとする政治家が是非とも登場してほしいなと思いました。

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