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情報誌の不動産放棄等に関するインタビュー
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- 所感
- 当事務所が、「不動産放棄」に関係する論点に関し、草分け的な存在であることは事実ですが、今回は、下記情報誌よりインタビューを受けました。
情報誌は、「I・Bまちづくり」と冠された書籍で、経営者向けの建設・不動産専門情報誌(株式会社データ・マックス発行、vol36、令和3年5月31日発行)です。当該情報誌の編集の方から、「不動産放棄」に関係する論点に関してインタビューの申し込みがあり、当事務所所属の田中宏明弁護士が対応致しました。
当該情報誌では、具体的にどのような法律が制定・改正されるのか、どのような内容になるのかについて詳細に紹介されています。法律の制定や改正等がなされることについては、これまで当コラムでも紹介してきました(例えば、2018年6月28日掲載「不動産は放棄できないの法整備」では、今回の改正に関する方向性を記載しています)。しかし、その具体的な内容等については、当時、議論されている時期であり、当然、報告できておりませんでした。
当該情報誌では、具体的な法律の施行内容、及びその施行日等まで記載され、本当に有意義な報告書となっております。是非とも、当該情報誌の内容等について紹介せねばなりません。 - 最大の眼目は、「相続した土地の放棄」、つまり相続した土地の国庫帰属の手続きが新設されたことです。
2015年1月5日、当コラムでは「空き家問題と不動産放棄」と題して、当時週刊エコノミストに掲載された当事務所作成の記事に対する問題意識を書いております。突き詰めれば、自由に不動産放棄を認めるなら、民法239条2項「所有者のない不動産は国庫に帰属する」に基づき、国の責任(経済的な負担以外も含む)となってしまいます。
経済的な負担を含め、それでいいのか?という問題提起です。結論としては、「自己責任のネグレクトになる」という警告が、当該週刊エコノミストでは十分に論じきれなかったという反省です。
今回の法改正では、10年分の土地管理費相当額の負担金及び審査手数料を支払うことを条件にして相続した土地を国庫に帰属させられるようになります(2023年4月までに施行予定)。
確かに、相当多額な金額になる場合もあるでしょう。問題提起される方も当然いらっしゃるでしょうが、自己責任を考えますと、相応の対応であるとも評価できます。次に述べる「放棄の対象となる不動産の範囲」を含めて、今後検証されるべき論点となるでしょう。上記国庫帰属制度は、施行から5年後、運用状況を検証して見直しの予定だそうです。
対象とされる不動産は、次の通りです。
建物がない更地、土壌汚染や埋設物のない更地、崖のない土地、権利関係に争いのない土地、抵当権などの設定がない土地、境界が明白な土地で、結論として、管理や売却に多額の費用や労力の要しないことを要件としています。 - 次に、不動産登記制度の改定、所有者不明土地に対する行政や裁判所等の対応についても種々手当がなされています。
今回は、冒頭にて紹介しました書籍「I・Bまちづくり」に掲載された表「改正のポイント」と題された項目(既に論じました「国庫帰属制度」のみ省きます)を引用させていただきます。
不動産登記制度
土地・建物の相続登記の申請義務化―相続による土地・建物取得の日から
3年以内(10万円以下の過料の罰則あり)
土地・建物所有者の住所及び氏名の変更登記の申請義務化―変更から2年
以内(5万円以下の過料の罰則あり)
所有者不明土地の利用
法定相続人が、自らが法定相続人であることが分かる戸籍を取得し単独で
申告できる「相続人申告」登記制度を新設する
相続開始から10年を過ぎると、法定相続分で遺産分割を行う仕組みを創設
する
相続した共有地は、所在不明の共有者持分の金額支払いで持分集約を可能
になるようにする
所有者不明土地の管理人制度を新設する - 書籍「I・Bまちづくり」に掲載された当事務所所属田中宏明弁護士のインタビュー記事が写真入りで掲載されています。その一部を紹介します。
「今回の法改正により、相続登記の放置がすぐにゼロになることはないと思われる。また、過料の金額が10万円以下と低く、国としてはどれくらい登記されるか「様子見」という面もあるのではないか。登記が増えなければ、制裁を厳しくしたり、制度新設や法改正が行われたりする可能性もある。
都市部の土地についていえば、基本的には価値があると考えられる。そのため、国庫帰属制度を利用したいという希望が出てくるとすれば、境界が分からない土地や、工場跡地で土壌汚染がある土地など、そもそも利用や売却に問題がある土地ではないか。
その場合、国庫帰属制度の要件を満たすため、境界確定訴訟により境界を確定させたり、土壌汚染の除去工事を行ったりするのは、費用面のハードルが高いと思われる。従って、相続後の「放置」が解決しない場合も多いだろう。」