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裁判例から見る立退料の相場

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借地借家

一 当事務所が数多くの立退案件を取り扱っていることは、これまで様々なコラムでお話しした通りです。

二 そして、立退料に相場が無いということもお伝えしている通りです。
 このことは、当事務所において、不動産業者などの賃貸人から依頼された際には立退き料0円で解決していることもありますし、賃借人から依頼された際には立退き料として月額賃料の200ヶ月分で解決したこともあること等からご理解頂けると思います。

三 不動産業者などの賃貸人の立場に立って解決する場合であっても、賃借人の立場に立って解決する場合であっても、具体的に近時の裁判例がどのように解決しているのかを知ることが最も重要です。
 裁判所がどのような事案でどのような結論を取っているのかを知り、依頼者にとって有利になるように裁判例を使いこなすことこそが、良い結論を導き出す要因の一つだと言えるからです。
 今回のコラムにおいては、貸主側の主張が認められず、立退きが認められなかった事例や立退料に6億円以上もかかった事例が出てきます。
 貸主とすれば、しっかり準備をしないと大変なことになるということを示していますし、借主からすれば、立ち退きを求められたとしても、しっかりと準備をすれば自らの利益を守ることができるということを示しています。
 いずれにせよ、早めに当事務所にご相談いただくことが肝要だと思います。

立退料

平成28年8月26日東京地裁判決

500万円

 

 

築45年程度が経過しており、耐震性調査の結果、震度6ないし7程度の地震が発生した場合に中破又は大破となる可能性が指摘されていること、補強工事費用は5000万円を超えること、借主は公認会計士・税理士事務所であり、使用の継続が必須ではないこと等を考慮した。貸主の不動産鑑定が立退料相当額を442万円と評価し、借主の鑑定は1244万5000円としているが、借主の鑑定を採用しないこととし、500万円を立退き料と判断した。

立退料

平成28年7月14日東京地裁判決

200万円

貸主は、85歳で介護の必要があり、長男夫婦と同居する必要があるのに対し、借主は、がん治療を継続し、不眠であるため、転居には負担があるものの、代替物件もある。そこで、引越費用相当額と賃料(月7万3000円)の2年分を立退料とした。

立退きが認められず

平成28年7月26日東京地裁判決

正当事由なし

貸主は退職後に飲食店を営むために建物が必要であると主張するが、飲食店経営を準備している等の事情が存在しないこと、それに対して、借主には景品交換所の経営上必要であるという事情から、明け渡しをさせる正当事由がない(貸主の請求は認められない)と判断された。

立退きが認められず

平成28年9月23日東京地裁判決

正当事由なし

貸主が建物を使用する具体的な必要性が乏しいこと、借主がパチンコ店として使用しようとしていること等からすると、貸主が立退料算定のための鑑定申出をしていることを考慮しても、明け渡しをさせる正当事由がない(貸主の請求は認められない)と判断された。

立退きが認められず

平成28年10月28日東京地裁判決

正当事由なし

貸主は、仲間たちと運営する喫茶店を兼ねた大人の趣味のための教室を開く計画を進めているものの、客観的必要性が高いとは言えないこと、他方で、借主は昭和53年から居住し、美容室の経営に携わっていること等から、貸主よりも借主の方が必要性が非常に高いので、明け渡しをさせる正当事由がない(貸主の請求は認められない)と判断した。

立退きが認められず

平成28年12月8日東京地裁判決

正当事由なし

借主が本件建物を唯一の活動拠点としてテナント料(転借料)による収入を収益として事業活動を行っていること、本件建物の建て替えが具体的に計画されているわけではないこと等を理由として、貸主が立退料9727万9920円の提供を申し出ていることを考慮しても、明け渡しをさせる正当事由が認められない(貸主の請求は認められない)と判断された。

立退きが認められず

平成28年12月8日東京地裁判決

正当事由なし

貸主の必要性は、専ら経済的利益であること、借主は店舗を運営しており、代替物件も限定されること、築31年が経過しているというだけでは強度不足による倒壊等の危険性が生じているとまでは言えないこと等からすると、貸主自身の依頼した鑑定評価における借家権価格である9220万円に若干の増額を加えた1億円を立退料として申し出ていることを考慮しても、明け渡しをさせる正当事由が認められない(貸主の請求は認められない)と判断された。

立退きが認められず

平成28年12月20日東京地裁判決

正当事由なし

本件建物は昭和31年12月に建築されており、大地震時に倒壊する可能性が高いものの、高齢の借主はピアノ指導で生計を立ててきており、転居先を探すことが困難であること、貸主の申し出た立退料が170万円にすぎないこと等から、明け渡しをさせる正当事由が認められない(貸主の請求は認められない)と判断された。

立退料

平成29年1月19日東京地裁判決

35万円

築48年を経過した耐震性に問題のある建物であり、その耐震補強を行うには本件アパートの建て替えと同程度の費用を要すること、本件アパートの借主以外の入居者らは既に本件アパートから退去している一方で、生活保護者である借主が引越に要する費用の支払いを受ければ、当該建物を引き続き使用する必要性は低いので、立退料を35万円とした。

立退料

平成29年2月17日東京地裁判決

6億2723万8000円

 

立退料の算定には、①移転補償額としての試算価格及び②貸家控除法による試算価格(3億5000万円)を用いる。本件においては、借家権の取引慣行は無いので、借家権割合法による試算価格は参考程度とする。

①の内訳は、新店舗との差額家賃等の補償額(損失補償基準細則別表第5により、補償期間3年間、3億0901万6000円)、移転費(200万円)、内装工事費(坪30万円、2億1040万円)、営業補償費(青山地区で代替物件を探しにくいこと等から、休業期間を6ヵ月とすると9780万円)、移転事務費(売上の1%で802万2000円)の合計6億2723万8000円が立退料になると判断された。

お電話でのお問い合わせ:03-3341-1591

                                以 上 

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