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新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言で従業員の給料を支払わなくて良いのか(労務管理・新型コロナウイルス)

 新型インフルエンザ等対策特別措置法第32条第1項の規定に基づき、新型コロナウイルス(COVID−19)感染症による緊急事態宣言が出されました。
 緊急事態宣言により、「最低7割、極力8割程度の接触機会の低減を目指す」とされている以上、休業せざるを得なくなっている会社や団体も多いと思います。
 
また、実際に新型コロナウイルス感染者が出てしまった会社も少なくないと思います。このような場合、従業員の給料をどうすれば良いかという相談が多発しております。
 
厚生労働省が出している「新型コロナウイルスに関するQ&A」を参考にしながら、ご説明差し上げます。

2 前提として、労働基準法第26条で、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとされています。
 
どのような場合に「使用者の責めに帰すべき事由」といえるでしょうか。
まず、新型コロナウイルスに感染しており、都道府県知事が行う就業制限により労働者が休業する場合は、一般的には休業手当を支払う必要がないと考えられます。もっとも、概ね、3日を経過した日から、直近12カ月の平均の標準報酬日額の3分の2について、傷病手当金による補償がなされる可能性があります(業務に起因していれば、労災の対象にもなり得ます)。
 
次に、新型コロナウイルスの感染が疑われる場合、「帰国者・接触者相談センター」の相談結果を踏まえ、職務の継続が可能であるにもかかわらず休業させる場合には、休業手当を支払う必要があります。

3 緊急事態宣言や要請・指示を受けて事業を休止する場合はどうでしょうか。
 
まず、不可抗力による休業の場合は、使用者に休業手当の支払義務はありません(大ざっぱに言えば、給料を1円も支払わないということです)。
 
しかし、不可抗力による休業と言えるためには、少なくとも、会社として休業を回避するための具体的努力を最大限尽くしていると言えなければなりません。
 
テレワークが可能かどうか、配転などが可能かどうかについて検討が必要ですし、そのような検討無しで「不可抗力」であると認められることは少ないと思われます。
 
このようなことを考えますと、休業手当を支払わないという結論がやむを得ない場合もあるでしょうが、休業手当を支払った上で、雇用調整助成金を申請する方が得策であることも多いと思います。
 
雇用調整助成金においては、解雇等(雇い止めや派遣労働者の中途解約を含みます)を行わず、雇用を維持する企業に対して、正規雇用・非正規雇用にかかわらず、助成率を中小企業は90%、大企業でも75%に引き上げるといった特例措置も講じられています。

なお、1年間で100日分、1日8330円が上限です。

4 新型コロナウイルスの影響により、タクシー会社が600人を解雇するというニュースが報じられたことは、多くの会社にとって衝撃的だったと思います。
 
当該タクシー会社の具体的状況については不明であり、失業手当の方が従業員にとって有利なため選択したと報じられていますが、一般的には、整理解雇の場合、人員整理の必要性以外に、解雇を回避するための努力を尽くしていること、対象者選定が合理的であること、手続が合理的であることを満たしている必要があり、簡単に認められるものではありません。
 
仮に紛争になってしまえば、厳しい争いが待っているばかりか、解雇をしてしまえば雇用調整助成金の助成率も下がりますから、従業員の大半を解雇するような思い切った方法が正しいかどうかは慎重に検討する必要があります。

 緊急事態宣言がなされるような未曽有の状況において、非常事態に陥っている会社も多いと思います。
 
そのような中、会社にとって最良の選択をするためには、正しい法的知識に基づいた判断をすることが必要です。
 
非常に悩ましい選択だと思いますので、心配な方は当事務所にご相談いただけると幸いです。
 
なお、派遣に関する問題も非常に多く生じていますが、労働者派遣契約書の内容にもよりますので、こちらについてもご相談ください。

       以 上

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