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正当事由と立退き料の事例紹介

カテゴリ : 
借地借家

賃貸借契約の期間満了時、更新せずに契約を終了させたいと希望される方。

賃貸に出していたが自分で使いたいという事情のある方。

「正当事由」の裁判例を見てどのように判断されるのか勉強しましょう。

事例を紹介します。

その前に復習です(ホームページ「借地借家の秘訣(時系列に沿った事例紹介)」もあわせてご覧ください)。

「正当事由」とは、旧借地法、借家法上においても「自ら使用することを必要とする場合その他正当の事由ある場合」と規定があり、新借地借家法でも双方の事情を比較考量するほか、「財産上の給付」も評価の対象としております。土地所有者の事情ばかりでなく、借主の事情として投下資本の回収、借主の積極損失(移転費用、営業損失等)或いは公益、社会上の諸般の事情をも含めて総合判断するのです。

最高裁判例も従来より「立退料の提供は正当事由の有力な事情」とし、その判断要素としておりますから裁判事例をあたってみることは必要です。

1 自己使用に関する裁判例

立退き料 0 マンションに住む貸主が、家族と住むには手狭になった。借主側は、借地上の居宅を既に使用していなかった。更に借主は明け渡しの約束を何度かしていた。立退き料なしで認定した(借地)。
立退き料 200万 貸主が賃貸から10数年後転勤から戻ってアパート暮らし。

借主には転居する経済的能力あり。借主の移転先を探す仲介料や敷金、引っ越し代などの立退料で正当事由が補完されると認定した(借家)。

立退き料 750万 マンションに住む貸主は家族と住むには手狭になった。借主側は借地上の居宅を既に使用していなかった。(借地)
正当事由なし   貸主には別に居住の場あり。貸地の返還を受けて長女夫婦と同居するための新居を建てる必要ありと主張。借主は家族とともに同居していたことや店舗を営んで生計を立てていたことから正当事由はないと認定された(借地)。
正当事由なし   貸主は身体障害者の子の居宅を建築する必要があるとして立退き料300万を提供する旨申し出たが、借主は多数の家族の居住場所にしていたため正当事由を認めず(借地)。

2 自己使用が「営業目的」に関する裁判例

立退き料 6450万 新聞販売店を営んでいた貸主は、従業員宿舎のビルを建築する必要があるとして賃借人に土地の返還を申し出た。

立退料6450万円で正当事由ありと認定された(借地)。

立退き料 8億 貸主は本社社屋の建築に必要と主張。借主は20年以上パチンコ店を経営しており、明渡せば廃業となる。裁判所は、借地権価格、借主の営業利益、権利金なし等を総合考慮して立退き料の提供により正当事由を認めた(借地)。
正当事由なし   貸主は隣接地に居住。本件土地に養子を居住させて老後の面倒をみさせるため借地権買取価格での立退き料2504万円を提供する旨申し出たが、賃借人は倉庫、資材置き場として使用する必要があるとして異議申出する。正当事由の補完を認めないと認定した、(借地)。

3 居住と営業がセットになっている裁判例

立退き料等 650万 貸主は、自己の子が居住し自動車整備事業を経営するため本件土地が必要であるとし、借主に対して使用継続に異議を述べ、立退き料及び利害調整金として計650万円の提供により、明け渡しが認められた(借地)。
正当事由なし   貸主は隣接地で理髪業を経営。理髪業及び居住に手狭として明渡し要求。借主は商品の保管場所に必要として争う。

貸主は信頼関係の破壊も合わせて主張したが認められず(借地)。

4 再開発事業・有効利用・高度利用に関する裁判例

立退き料 6500万 貸主は、都市の再開発事業を手掛ける不動産業者。再開発事業を効率的に進めるため立ち退き交渉を行い、立退料の提供により、正当事由が具備されると認定された(借家)。
正当事由なし   ホームページ「借地借家の秘訣」に掲載した事例をあわせてご覧ください。

5 建物の老朽化に関する裁判例

立退き料 8億 建物が老朽化して耐震性で危険。補強にも高額の費用が要する状況にあるが、場所が銀座で、土地の高度利用、有効活用が望ましいとして高額の立退き料を補完事由として正当事由を認めた(借家)
正当事由なし   賃貸人は、現行家賃の4年以上の家賃に相当する金額の立退き料を支払うと申し出たが、老朽化については貸主のせいであるとして正当事由は認められないと認定した(借家)。

判決が面白いので説明を加える。

判決;「賃貸人は老朽化に至るまでに恒常的な修繕」などをしていない。故に、建築後30年以上を経過しているものの、建物が老朽化したとはいえず、今後数年の使用に耐えうるものと認定した。

老朽化による裁判例には、建物の建て替えが必要であるとして、隣接ビルとの併合の事例、修繕に過大費用がかかることを理由とする事例など、立退料の提供を補完事由として正当事由が認められた事例は多数あります。

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