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従業員が営業秘密を持ち出した場合に損害賠償請求訴訟等を提起して勝つ方法(その11 不正競争・情報漏洩)

カテゴリ : 
情報管理・不正競争

一.   平成31(2019)年1月23日、経済産業省が営業秘密管理指針を改定しました。
 そして、この営業秘密管理指針の中には、当事務所が勝訴した判決が「参考裁判例」として掲載されています。
 具体的には、経済産業省は、「営業上の必要性を理由に緩やかな管理を許容した例」とタイトルを付け、「顧客情報の写しが上司等に配布されたり、自宅に持ち帰られたり、手帳等で管理 されて成約後も破棄されなかったりしていたとしても、これらは営業上の必要性に基づくものであり、従業員が本件顧客情報を秘密であると容易に認識し得るようにしていたとして、秘密管理性を肯定」と解説しています。
 確かに、当該判決で勝訴を勝ち取るために、当事務所は、一般的な法律事務所では行わないであろうと思われる様々な努力と工夫をしました。通常の訴訟のやり方では敗訴するであろうと思ったからです。その結果がこのように評価されていることは、まさしく当事務所の行ってきたことが依頼者の方々の利益になっていることを裏付けられたものとして、非常に喜ばしく思っております。

二.   さて、経済産業省が改定した営業秘密管理指針の内容に戻りましょう。
 営業秘密管理指針は、まず、秘密として管理されているかどうかという要件(「秘密管理性」と言います)に関し、企業が秘密として管理しようとする対象(情報の範囲)が従業員等に対して明確になること(それによって、従業員等の予見可能性を確保すること)が重要であると述べています。
 さらにいえば、企業の秘密管理意思(特定の情報を秘密として管理しようとする意思)が、具体的状況に応じた秘密管理措置(アクセス制限等)によって、従業員に明確に示され、結果として、従業員が当該秘密管理意思を容易に認識できる状態になっていることが必要であると述べています。

三.   また、企業が、営業秘密以外の一般情報を保有しないとは考えられないため、①情報の性質、②選択された媒体、③機密性の高低、④情報量等に応じて、営業秘密と一般情報とを合理的に区分することが必要であると述べています。要するに、何でもかんでも営業秘密だと言っても、認められないということです。
 媒体に「マル秘」などと表記すること、当該媒体に接触する者を限定すること、営業秘密たる情報の種類・類型をリスト化すること、秘密保持契約(あるいは誓約書)などを締結して守秘義務を明らかにすることにより、従業員に対し、一般情報とは取扱いが異なるべきという規範意識を生じさせることがポイントであるとされています。

四.   具体的な管理措置の方法としては、紙媒体の場合には、①当該文書に「マル秘」など秘密であることを表示すること、②施錠可能なキャビネットや金庫等に保管すること、③紙媒体のコピーやスキャン・撮影を禁止すること、④コピー部数を管理(余部のシュレッダーによる廃棄)すること、⑤配布コピーを回収すること、⑥キャビネットを施錠すること、⑦自宅持ち帰りを禁止することが挙げられています。
 また、電子データの場合には、①ファイル名・フォルダ名・ヘッダーにマル秘を付記すること、②フォルダの閲覧に要するパスワードを設定すること、③人事異動・退職毎にパスワードを変更すること、④メーラーの設定変更による私用メールへの転送を制限すること、⑤物理的にUSBやスマートフォンを接続できないようにすることが挙げられています。
 さらに新製品の試作品など物件に営業秘密が化体している場合には、①立ち入り禁止にすること、②写真撮影禁止の貼り紙をすること、③営業秘密リストとして列挙し、当該リストを営業秘密物件に接触しうる従業員内で閲覧・共有化することなどが挙げられています。
 無形のノウハウについても、リスト化したり、誓約書を取ったりすること等が挙げられています。

五.   秘密管理性の有無は、法人全体で判断されるわけではなく、営業秘密たる情報を管理している独立単位(例えば、支店)ごとに判断されることとされています。
 そのため、A支店の従業員であれば、法人全体ではなく、A支店の中でどのように管理されているかが重要になります。
 また、自社内部での情報の具体的な管理状況は、別法人(子会社も含みます)における秘密管理性には影響しないことが原則です。
 そのため、他社の従業員に対しても秘密であると認識させるためには、営業秘密を特定した秘密保持契約(NDA)の締結により自社の秘密管理意思を明らかにすることなどが必要になります。
 秘密保持契約(NDA)を締結する際に、何ら秘密情報の範囲が具体化されていない抽象的な規定になっているものを見かけることが多々ありますが(むしろそのようなNDAの方が一般的であるとさえ言えますが)、それでは全く意味がないのです。

六.   以上の通り、営業秘密管理指針が改定されました。
 営業秘密管理指針は最低限度の基準ですので、これだけやっておけば訴訟で勝訴できるというものではありません。
 もっとも、会社がしっかりと弁護士と相談して法的な準備さえしておけば、退職した従業員が営業秘密を持ち出した(情報漏洩した)場合に損害賠償請求訴訟を提起して勝つことは可能です。
 そのことは、冒頭に挙げた、当事務所が勝訴した裁判例が物語っています。
 会社の営業秘密や秘密情報をしっかり守っていきたいという方、或いは、営業秘密を不正に利用している者(情報漏洩をしている者)に対して法的請求をしたいという方は、是非一度当事務所にご相談ください。
 御社の利益となるアドバイスをすることができると思います。

以 上

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