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書評「この1年間に出された濱嘉之さんの本」その2

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書評

1.  月初めから、濱さんの出版物のなかでも、どうしても紹介したいと考えておりました「爆裂通貨」(文春文庫)を読み直しておりました。ところが、なんと、今月10日、青山望シリーズの最終巻と銘打って「最恐組織」と言う本が出版されたのです。次々と出版されるエネルギーとその最新情報には驚きです。
 この本がシリーズの最終巻ですから、青山望以下4名のカルテットが、それぞれ次の人生に、どのように踏み出すのかも描いております。長い間、青山望シリーズを読んできた私には、彼ら主役4名が、次にどのような人生を選択するのかという展開に、大いなる興味をそそられました。読後感として感慨深いものがありました。
 もちろん「最恐組織」でも次々と起こる社会事象に対し、その視点の持ち方を示してくれております。特に、北朝鮮という国の在り方や、中国が関与するサイバーテロに対する見方については大変勉強になりました。驚きは、近時、中国関与のサイバーテロが公然と話題になってきたことです。今日この頃、この事件が毎日のように新聞で報道されるようになったのです。濱さんの最新情報には何時も驚きです。
 これで港湾埋め立て地や造船等に関係する利権を巡る犯罪でも起きれば(これも「最恐組織」のテーマです)、濱さんを「預言師」とお呼びしないといけません。

2.  本年410日発刊、同シリーズの「爆裂通貨」に入りましょう。
 前回の書評で、日本人でありながら、戸籍のない人が一万人近く存在するという事実について、衝撃的だと申し上げました。
 私は、高校時代から社会の矛盾を追っかける変な癖がありました。半世紀以上前になりますが、「爆裂通貨」で紹介されていると同じような人たちが生活される区域を見に行ったことがあります。私が見た地域は本当にひどかった。同じ頃、河川敷で生活される方々の地域も訪問しております。こちらで生活される建物の壁は、段ボールが中心で、本当に寝起きするだけの空間でした。濱さんも、「爆裂通貨」の第4章で紹介されている地区を、今回、ご覧になったでしょう。当該地域で生活されている方々への配慮が伝わってくる押さえた描写に、濱さんの思いが感じられます。
 現在の状況は「爆裂通貨」で知るしかありませんが、でも、まだそんな地域があること自体が驚きです。

3.  本論の無戸籍者に戻りましょう。
 自分のことで恐縮ですが、私は弁護士になると同時に人権擁護委員会に入り、すぐに人権救済部会の部会長となって、無戸籍者の方の事件も経験しました。でも、この殆どの方は、お母さんが、子供の出生届をしないというようなものが中心でした。その中でも、民法第772条の嫡出推定規定に反発され、前夫の子供と認定されたくないからという、意識的な事案もありました。嫡出推定に関する本規定は、再婚禁止規定(民法第733条)との期間が異なるなど、その問題点も指摘され、改正の議論もなされております(今回は触れる余裕がありません)。
 しかし成人になられ、通常の生活をされている方で、無戸籍者であることが中心の論点になる私の関与事件は、「○○の国」の国籍取得が最大の事件でした。この事案を多少述べても許されると思いますが、敢えて詳細は省きます。概略だけですが、人権救済部会の先生方と一緒に、訴えの相手方を日本国として、その方の「○○の国」の国籍を認めよという裁判を起こしました。裁判所も検事の方も本当に協力していただきました。無事、「○○の国」の国籍を認めるという判決をいただいたのですが、「○○の国」の裁判所は、日本の裁判は関係ないとして、これを認めてくれませんでした。○○領事館の方とも相談して行ったことでしたが、○○の日本に対する国際感情を肌で知る事件でした。国際感覚がなかったのですから、濱さんに笑われますね。

4.  当時は、日本で生活される外国籍の方の相談や事件は、刑事事件も含めて多数ありました。韓国の方々も戦後の特殊性から、人権救済関係の相談も種々ありました。日本で生活される韓国の方々の、生活保護や年金など、その多くが議論され、結局裁判になった事例もありました。確かに国民の税金で処理される案件ですから、その是非を論じるべき過渡期は当然にあるものだと判断されます。
 私は、弁護士になって数年で、日弁連の人権擁護委員会の委員になっております。東京弁護士会の先生から数年でなるなんて生意気だと非難をされたこともあります。でもこのような活動を通じて、先ず相談をできる場の拡充が必要だと思うようになりました。あらゆる法律問題を相談できる場を設け、そこで吸い上げる必要があるという将来像を言うようになって、人権擁護委員会からの派遣と言う形で、第一東京弁護士会法律相談運営委員会委員になりました。その数年後には委員長になり、東京三弁護士会法律相談協議会の議長にもなりました。このような私事を述べさせていただくのは、人権擁護委員会も法律相談運営委員会も、その在り方が少しずつ変わってきたという現状と、その存続の厳しさを述べたかったのです。つまり、人権救済部会の案件は、刑務所等の拘禁施設における人権侵害事件が中心になり、昔のように種々の事件は少なくなりました。法律相談運営委員会も、無料相談やネット相談の増大で、相談センターの運営費も出ない状況のなかで揺れ動いております。昔のように、皆様の役に立っていると自慢できるのか少々不安です。しかし、これも時間の流れの中では仕方のないことなのでしょうね。次の展開を考えねばならない時期に来ているということだと思います。

 濱さんから勉強して、次を予測しましょう。

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