新宿の顧問弁護士なら弁護士法人岡本(岡本政明法律事務所)
当事務所では、上場企業(東証プライム)からベンチャー企業まで広範囲、かつ、様々な業種の顧問業務をメインとしつつ、様々な事件に対応しております。
株主総会における代理人弁護士の出席 (株主総会 その1)
- カテゴリ :
- 株主総会
一 昔の株主総会はきつかった
1 平成初めの株主総会は、法律の整備も不十分なだけでなく、景気の悪さも手伝い大変厳しいものでした。
宇宙開発を業とする会社の株主総会は、毎年、特別に大変でした。日本に帰化された社長は、世界的な頭脳の持ち主でいらっしゃいましたが、二時間以上、受け答えされるとさすがに答弁が困難になりました。社長とは今でも親しくさせていただいておりますが、アジア最大の国の解放軍とのいざこざで、私が破産処理させていただきました。当時の株主の皆様には「毎年必死で議論し、真摯にお付き合いさせて頂きましたのに、大変申し訳ありませんでした」と申し上げます。
その後、上記の国の人工衛星打ち上げニュースを聞くたびに、今でも怒りが沸いてまいります。
2 もちろん、上記宇宙開発の会社も、定款で「株主の代理人は株主に限る」旨の制限規定を設けておりました。しかし、株主の代理人として、株主でない弁護士が来られましても株主総会に出席していただいておりました。弁護士の独占的紛争解決機能(弁護士法第3及び72条等)に敬意を払っていたからだと判断します。
当時既に、最高裁は、代理人資格を制限する各会社の定款規定について有効と認めてはおりましたが、神戸地裁尼崎支部の次のような判例が出る時代的な背景もありました。
「弁護士が代理人になった場合、株主総会を混乱させるおそれがあるとはいえない」として定款規定の解釈運用を誤ったものとする判例(神戸地裁尼崎支部平成12年3月28日)もありました。つまり代理人の制限をすると、上記判例に従い、株主総会決議が取消される可能性もあったのです。株主総会指導弁護士としては窮地に陥ります。
二 違和感のある株主総会指導書
1 ところで最近の株主総会指導解説書等を読みますと、株主に限るとの定款規定を一段と重視する傾向が強くなっております。
例えば、株主でない弁護士の株主総会代理出席を拒否した事例において、東京高等裁判所が、株主でない代理人に関して個別的に判断することは受付を混乱させるとして、形式的に限定することに関し一定の合理性を認めたことから(平成22年11月24日)、巷に氾濫する解説書は一気に強気になりました。
でも長年株主総会指導をしてきた私には非常に不思議です。受付の混乱回避を理由にする上記判例は穴だらけだからです。もちろん判例は事実に即しているだけですから、この判例に責任はありません。
2 つまり、受付が混乱しない方法で弁護士の代理出席の要請があったらどうするのですか?例えば、株主総会の通知発送直後に、株主より当日は代理人として弁護士を出席させると通知してきたらどうするのですか?
時間もたっぷりあります。十分に本人から真意を調査できますし、受付の始まる、はるか前ですから受付に混乱など生じえません。
3 株主総会の指導をされる信託会社等の専門家に聞きますと、弁護士の解説書のような回答はまず返ってきません。先ほどまで自信満々に厳しく社長指導をされていた方が、驚くほど言葉を濁されるのです。そして最後に「難しい問題ですね。結論として会社にご判断いただいております。」つまり訴訟リスクの回避を考えておられるのです。
三 総会屋対策の延長では納得できない
1 私は、20代の終わり頃、総会屋の方から「総会屋にならないか」とリクルートされたことがあります。忘れもしない歌手加藤登紀子さんのお父さんが経営される新宿のロシア料理店でのことでした。
その当時のように総会屋が問題視される時代なら、非株主弁護士の代理出席を認めないのも一理あるとは思います。でもそんな時代は過去のものと言っていいでしょう。もっと柔軟に考えない限り、訴訟リスクはついて回るのではないでしょうか?いやいや、そんなことよりも弁護士の紛争解決機能について、どう考えておられるのか聞いてみたいものです。株主総会は紛争とは無関係という回答は変です。株主代表訴訟もあるのですから。
2 上記疑問を持ち続けていた私は事務所の若い先生に次のようなお題を出してみました。お題は「粉飾決算に揺れる会社で、代理人は株主に限るとの定款規定はあるものの、非株主弁護士の株主総会代理人出席は一律拒否でいいのか?」というものです。ヒントはこれまでの記述で十分だと思いますが、次のような考え方は如何でしょうか?
事前に代理出席を申し出られた株主様には「事前に質問書を出していただきたい。事前に質問書を出していただけるなら、弁護士の代理出席も検討致します」という内容の文書を送るのです。事前の質問であれば、粉飾に揺れる会社でも十分整理して回答することができます。しかも会社にとって重要な説明責任も十分に果たせることになります。先に示しました神戸地裁尼崎支部の事例は、事前に弁護士代理出席の通知があった事例ですから裁判官の悩みが伝わってくるようです。
驚くべき経験もあります。粉飾で揺れていた会社で、弁護士が代理出席されたのですが、非常識且つ繰り返しの質問に会場が紛糾していた際、理路整然とした弁護士の質問がその場の雰囲気を変えたのです。さすがは弁護士という経験ですね。
3 若い弁護士の先生方、現在の株主総会指導書に疑問をお持ちになりませんか?否!あなたの職域を狭めておりませんか?
これは弁護士の在り方を問う問題でもあります。